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一線

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私のスペースに誘うと、意外にもその客は私の手をとってエスコートをした。
夜会によばれない貴族だから下位貴族だと思っていたが、もしかしたら上位貴族なのかもしれない。

「エスコート……、ありがとうございます。」

「フン。私は今でこそ子爵令息だが、元々は侯爵だったのだぞ!誰が相手だろうと、エスコートくらい身に染みている。」



少し、酒の匂いがする。


「君、いい体してるな。鍛えられた体だ。騎士だったのか?」

「……どうでしょう?」

「俺の父も騎士だった。公爵夫人のお願いなんて無視していれば…更迭なんかされず、俺だって今頃は…。」

「お客様…。」

公爵夫人のお願いをきいたせいで、彼の父親は更迭され、降爵となったのか。
その時に騎士という職も取り上げられたのだろう。


「君も、なんかやらかしたのか?それで騎士だったのにこんなとこにいるんだろう?」

「………ノーコメントです。」


「まあ、いいか。酒を呑もうぜ。何が良い?」

「私はあまりのめないので、軽いものなら…。」

「OK、ママ、マティーニとカルアミルクを。」


胸舐めなくていいのかな…?

このお客様は紳士なのだな。
話相手が欲しかっただけなのかもしれない。


渡されたカルアミルクに口をつける。


「カクテルを呑んだことがないだろう?君、夜遊びしなかったクチだな。」

体がかあっと熱くなる。


「カルアミルクは甘くて飲みやすいが、度数は高いんだ。それに―――――――。」

男の指が私の顎にかかる。


「おきゃく、さま?」

「モスキート=ゴルデン。モスキーって呼んで欲しいなぁ。」

ぞわり。

舌が首を這う。

その感触に背筋が凍る。


どうして。

殿下のことは受け入れられたのに。


モスキートは私の首筋から下へ。そして胸の方へ舌を這わせた。

知らない男の指が、舌が、気持ち悪い。


「ッ。はぁ…ッ。」


なのに、体が、熱い。


「君は酒も回りやすい様だが、薬も効きやすい体質みたいだな。」

「な、…っ。」


「媚薬だよ~。おっと。パラライズ!」

くっ…、体が動かない。声も…。


「これでも元魔法騎士志望だったからね。やらかした男の息子は門前払いだったけど。ふ、君。嬢になったばかりだろう。睨むなんて。お客さんにそんな態度はないんじゃないかなぁ。」


い、いやだっ。


頭の中の鈴が壊れる。


そうだ。私は殿下が好きだから。

信愛じゃない。

殿下になら何をされてもいい。

殿下以外にはいやなんだ。


「合意があれば、最後までやってもいいんだろ?」


私の服が脱がされていく。

ズボンを脱がされると、男が喉を鳴らした。

「こんな煽情的な下着をつけておいて。覚悟していないとは言わせない。」



い、いやだっ。









「その子は私の専属だ。その手を離してもらおうか。」


でんか。


涙で滲んだ視界に、殿下が映る。


頭の遠くで、モスキートとジェームズが何か話している。


そして、私に殿下が触れる。


「私のオランジェ。かわいそうに。消毒してあげよう。」


殿下の唇が、指が、舌が。

はむっと胸の尖りを吸われて、甘い刺激が走った。


(いま、わたしのこと……おらんじぇって。でんか、しって…?)


「うっ、」


「イったね、オランジェ。反応が早い。何か飲まされた?」

「び、びやく…を。」


パラライズの効果は切れているけど、媚薬のせいで体が動かしにくい。


「そうか。たくさんイくといい…。」

下穿きに殿下の指が触れる。

露になった私の花芯を殿下が扱いた。


「あぁ、あぁつ。」


目の前の殿下は欲情した獣のようで。ぱんぱんにはりつめたそこは。

それなのに、殿下は…。


「い、いいんですっ。私はっ、殿下のことが……すき、どうか殿下も私で気持ちよくなって…。」


「だめだっ。私だってオランジェのことを愛している。愛している人がこんな痴態を見せていて、抱きたくないわけなんかないだろう!?でも…っ。」


「わたし、わたしも、殿下がほしい…っ。」

「媚薬にのまれているだけだ。」

「本心です!媚薬の力がなければ本心も言えない、私は臆病です…。ずっと、ずっと愛していた。なんで、自分の気持ちを忘れていたのでしょう…。子は孕めません、結婚はできない。だけど、恋人にはしてくださいますか…?騎士としてお側にいさせてください…。あなたと、いつかあなたが迎えるお妃さまと、お子様を…お守りしたい。」

「ああ、オランジェ。これは夢じゃないだろうか。」

「いいえ、夢じゃありません…っ。」






初めてのその時は。

思っていたより痛くて、でも幸せで。


「……っ、あぁっ、あっ。」

「愛してる…っ、」

殿下が腰を動かすたびに、奥へ沈む快感と、愛される喜びに浮かれて。


殿下に抱かれて仮面が落ちていることも。

その隙間から誰かがその様子を見ていたことも。



その時は気づかなかった。



私と殿下の王太子と側近としての一線は、崩れて、曖昧で。
これからの未来がどうなっていくのか、不安でも。

それでもどうしようもなくて。

甘く、切ない―――――――。
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