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閑話 息子の愛する人
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ある日、オランジュ=ペコーが私のところにやってきて、はにかみながら告げた。
「お、王妃殿下…っ。王太子殿下の、婚約者、候補なのですけど…。」
もじもじと時折伏せられる瞼とほのかに染まった頬がなんて可愛らしい子かしら。
前髪もおろせばいいのに。
「ある程度筋肉質で、胸は男みたいな貧乳な方が殿下の好みのようなのですっ。」
「ひんにゅう?」
「ええ。乳というよりは胸筋?」
「オランジェ、それはあなた――――。」
「どうか、殿下に好みの方を探してあげてください!」
ぱーっと消えてしまうオランジェ。
「どういうことなのかしら。女騎士から探せばいいのかしら。それとも南の戦闘民族!?むしろ、王太子の妃は君だ☆王太子妃選抜武道会でも開催すればいいの!?ああ、私、そんなムキムキのお嫁さんとうまくやっていけるかしら…。どうしましょう、好きな食べ物はプロテイン、趣味は筋肉を鍛えること、だなんていわれたら私、会話が続かないわ!」
ぽん、と私の肩に手。
夫であるアッサ=ム=ティーポット陛下だ。
「オランジェは可愛らしいなぁ。オランジェが令嬢だったなら私たちの悩みはなかったのだがな…。」
「あなた、それはもしかして…。」
「ダージが好きなのは、オランジェだよ。」
「まぁ!」
「だがなぁ、セイがあれじゃあなぁ…。セイが王太子になれれば、ダージがオランジェと結婚しても問題はなかったのだが…。よしんば二人が想いを遂げたとして、ダージには王位を継いでもらわなければならない。嫌でも世継ぎを産める女性と結婚してもらわなければ。」
「それって二人の関係は秘密裏のものになるということですの?」
「妃が世継ぎを産んだ後なら、側妃くらいにならしてやれるとは思うが…。」
「まあ、それって妃になってくれる令嬢に失礼じゃありません事?」
「そうなのよなぁ。ころっと女性に恋をしてもらえんもんかなぁ。」
「私、ムキムキのお嫁さんよりは可愛いオランジェがお嫁さんになってくれた方が嬉しいわ。」
「でもほら、子どもが…。」
「子ども子どもっていいますけど、なんとかなりませんの?」
「なんとかって言われてもなぁ…。」
私も君ももう50代なんだし…。親戚の公爵がアレだからなあ。
オリエントから外交がわりに条件で押し付けられた悪女を、どうしても自分の妻にしたくなくて、公爵に押し付けちゃった自分が悪いと言えば悪いのだけど。
その結果、生まれたのが悪女と悪女の手先だからなあ。
血筋で言えば王位をあげても問題ないのだし、本来、ダージの妃として相応しいのだが。
アレのせいで嫡男は男色に走ったって言うし、ダージも似たようなものだよなあ。
親の悩みは尽きない。
「お、王妃殿下…っ。王太子殿下の、婚約者、候補なのですけど…。」
もじもじと時折伏せられる瞼とほのかに染まった頬がなんて可愛らしい子かしら。
前髪もおろせばいいのに。
「ある程度筋肉質で、胸は男みたいな貧乳な方が殿下の好みのようなのですっ。」
「ひんにゅう?」
「ええ。乳というよりは胸筋?」
「オランジェ、それはあなた――――。」
「どうか、殿下に好みの方を探してあげてください!」
ぱーっと消えてしまうオランジェ。
「どういうことなのかしら。女騎士から探せばいいのかしら。それとも南の戦闘民族!?むしろ、王太子の妃は君だ☆王太子妃選抜武道会でも開催すればいいの!?ああ、私、そんなムキムキのお嫁さんとうまくやっていけるかしら…。どうしましょう、好きな食べ物はプロテイン、趣味は筋肉を鍛えること、だなんていわれたら私、会話が続かないわ!」
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「妃が世継ぎを産んだ後なら、側妃くらいにならしてやれるとは思うが…。」
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「そうなのよなぁ。ころっと女性に恋をしてもらえんもんかなぁ。」
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