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殿下の漢気
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「はははっ、なんだこんなことか!」
殿下は突然笑い出し、私の腰を抱いた。
「そこに映っている客とやらは私だ、リーフ公爵令嬢。令嬢はよほどペコー家が憎いらしい。」
え、とあたりが騒然とする。
「そうだ、私が愛するのは、私の近衛騎士であるオランジェ=ペコーただ1人!つい先日、ようやく長年の想いを彼が受け入れてくれてね。」
「な、なにを仰っているのですか?殿下!そんな発言をすれば、殿下の妃になろうという令嬢など…。」
「いずれにしても妃になれば知ることだ。私とオランジェの関係を知り、なお国母になってもよいという令嬢とならば私は結婚できるかもしれない。私だって随分悩んだ。王太子として世継ぎを産むのも使命だから。愛しあう夫婦にはなれないが、大切にすると誓うし、友だちのような家族にはなれるだろう。それなら初めから私達のことをオープンにするべきだ。」
「殿下はお優しいから庇ってらっしゃるのですよね、そうでしょう!?どうであれ、あんな店!ふしだらですわ!殿下のお相手としてふさわしいと思えません!」
「この店は、もう一人の側近のジェームズの店だ。私はプレイで雄っぱぶごっこをしていただけだ。だから、彼の体は私だけのものだ。証明が必要なら、きちんと聖職者も立ち会っているよ。そう、私は恋人に雄っぱぶプレイを望むような性癖なんだ。皆には軽蔑されたかな?私がこのような変態だなんて。」
「いえ、殿下がそれほどまで苦しんでいたということでしょう。」
兄上が礼をする。
それに倣って、貴族たちが礼をした。
「むしろ、殿下の誠実さを感じました。」
「衆道本が好きな令嬢や弁えている令嬢であれば、殿下のお相手になり得ましょう。」
「な、なによ!皆様、おかしくないの?借金返済のためにあいつは男娼になったって言っているでしょう!」
「それはセイとの共同事業だろう。王家の指示による損失だから王家が補填している。(私が店に通って)」
ビクッとセイ殿下の体が揺れる。
殿下が睨んだ?
そうか、ファーメントとセイ殿下がうちを破滅させるために。
仕組まれた投資だったのか……。
「オランジェ。」
抱きしめる腕が温かい。
声が甘い。
「愛している。」
「はい。私も…。」
「王太子殿下、オランジェを頼みます。」
兄上。
「オランジェ=ペコー。ダージの妃として認めよう。」
陛下の声が静寂を打つ。
「そ。そんな…………っ!嘘でしょうっ?!」
ファーメントが叫ぶ声など誰も気にしない。
性別を乗り越えて育まれた愛に、近衛騎士である男が妃になったことに、国中が沸いた。
あと、ごく一部で殿下のファンが増えたという。
(殿下は男色。ということは、もしかしたら私にもチャンスが!? ダメッ、私はもうオジサンだし妻と子が!)
(うちには娘がいないから諦めていたが、うちの息子にもチャンスはないだろうか……。出来が悪いが愛嬌はあるんだ。)
(殿下……ちゅき♡抱かれたい♡)
「はあ。なんで釣書が増えるんだ。しかも男が7割なんだが。」
「殿下が男色ってバレたからでは。」
「オランジェしかいらないって言ったつもりだったのだが。」
「子を産んでくれる女性の正妃は一人でも、男は余地があるかもって思うんじゃないすか。」
「もっと上手い言い方があったのだろうか。」
「私は嬉しかったですよ。ありがとうございます、殿下。」
溢れ出る感情に、私は笑みを浮かべる。
「オランジェ、引っ越しはもう済んだのか?」
そう、式はまだあげていないけれど、電撃結婚した私たちは城の中で一緒の生活が始まった。
私は正妃じゃないから、式なんていらないと思うけど。
「はい。あまり荷物はないんです。社交は大体隊服で済ませていたので。」
「ふむ、では衣装を整えよう。業者を呼んで「予算の無駄遣いはやめてください。」」
結局、それほど勤務しなかったけど、みんな元気かなあ。
キウイさんも心配だし。
思いがけず来た幸せ。
だが、まだ邪悪な公爵令嬢は諦めてはいない。
殿下は突然笑い出し、私の腰を抱いた。
「そこに映っている客とやらは私だ、リーフ公爵令嬢。令嬢はよほどペコー家が憎いらしい。」
え、とあたりが騒然とする。
「そうだ、私が愛するのは、私の近衛騎士であるオランジェ=ペコーただ1人!つい先日、ようやく長年の想いを彼が受け入れてくれてね。」
「な、なにを仰っているのですか?殿下!そんな発言をすれば、殿下の妃になろうという令嬢など…。」
「いずれにしても妃になれば知ることだ。私とオランジェの関係を知り、なお国母になってもよいという令嬢とならば私は結婚できるかもしれない。私だって随分悩んだ。王太子として世継ぎを産むのも使命だから。愛しあう夫婦にはなれないが、大切にすると誓うし、友だちのような家族にはなれるだろう。それなら初めから私達のことをオープンにするべきだ。」
「殿下はお優しいから庇ってらっしゃるのですよね、そうでしょう!?どうであれ、あんな店!ふしだらですわ!殿下のお相手としてふさわしいと思えません!」
「この店は、もう一人の側近のジェームズの店だ。私はプレイで雄っぱぶごっこをしていただけだ。だから、彼の体は私だけのものだ。証明が必要なら、きちんと聖職者も立ち会っているよ。そう、私は恋人に雄っぱぶプレイを望むような性癖なんだ。皆には軽蔑されたかな?私がこのような変態だなんて。」
「いえ、殿下がそれほどまで苦しんでいたということでしょう。」
兄上が礼をする。
それに倣って、貴族たちが礼をした。
「むしろ、殿下の誠実さを感じました。」
「衆道本が好きな令嬢や弁えている令嬢であれば、殿下のお相手になり得ましょう。」
「な、なによ!皆様、おかしくないの?借金返済のためにあいつは男娼になったって言っているでしょう!」
「それはセイとの共同事業だろう。王家の指示による損失だから王家が補填している。(私が店に通って)」
ビクッとセイ殿下の体が揺れる。
殿下が睨んだ?
そうか、ファーメントとセイ殿下がうちを破滅させるために。
仕組まれた投資だったのか……。
「オランジェ。」
抱きしめる腕が温かい。
声が甘い。
「愛している。」
「はい。私も…。」
「王太子殿下、オランジェを頼みます。」
兄上。
「オランジェ=ペコー。ダージの妃として認めよう。」
陛下の声が静寂を打つ。
「そ。そんな…………っ!嘘でしょうっ?!」
ファーメントが叫ぶ声など誰も気にしない。
性別を乗り越えて育まれた愛に、近衛騎士である男が妃になったことに、国中が沸いた。
あと、ごく一部で殿下のファンが増えたという。
(殿下は男色。ということは、もしかしたら私にもチャンスが!? ダメッ、私はもうオジサンだし妻と子が!)
(うちには娘がいないから諦めていたが、うちの息子にもチャンスはないだろうか……。出来が悪いが愛嬌はあるんだ。)
(殿下……ちゅき♡抱かれたい♡)
「はあ。なんで釣書が増えるんだ。しかも男が7割なんだが。」
「殿下が男色ってバレたからでは。」
「オランジェしかいらないって言ったつもりだったのだが。」
「子を産んでくれる女性の正妃は一人でも、男は余地があるかもって思うんじゃないすか。」
「もっと上手い言い方があったのだろうか。」
「私は嬉しかったですよ。ありがとうございます、殿下。」
溢れ出る感情に、私は笑みを浮かべる。
「オランジェ、引っ越しはもう済んだのか?」
そう、式はまだあげていないけれど、電撃結婚した私たちは城の中で一緒の生活が始まった。
私は正妃じゃないから、式なんていらないと思うけど。
「はい。あまり荷物はないんです。社交は大体隊服で済ませていたので。」
「ふむ、では衣装を整えよう。業者を呼んで「予算の無駄遣いはやめてください。」」
結局、それほど勤務しなかったけど、みんな元気かなあ。
キウイさんも心配だし。
思いがけず来た幸せ。
だが、まだ邪悪な公爵令嬢は諦めてはいない。
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