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デビュタント
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「お兄様、どうかしら?」
「素敵だよ、レンジュ。」
ふわりとした桃色の髪に白に近い薄ピンクのドレスが似合う。
オーガンジーを上に重ねたそこには、小さな白い花が舞っている。
緑色の瞳はキラキラとして、きっと令息の心を奪うだろう。
「それじゃあ、城でレンジュが入ってくるのを待っているよ。」
私は、近衛騎士の制服に身を包み、屋敷を後にした。
「おはようございます、殿下。」
「おはよう…。」
殿下と秘密の恋人になって数日。
店での逢瀬が続いている。
なんだか恥ずかしいし、服を着ているのに目のやり場に困る。
自分を幾度となく貫いたソコや、甘い唇を思い出すと、はしたなくも欲しくなってしまって、罪悪感に苛まれる。
「かわいいなあ、オランジェは~。意識しちゃって。」
「ジェームズ!」
「今日はデビュタントの日だ。私を着飾らせてくれる?オランジェ。」
「は、はい…っ。」
「あっま。いいですけど、その雰囲気、外では封印してくださいね。」
王家が見守る中、デビュタントを迎える年若い貴族たちが現れる。
レンジュが兄上にエスコートされて入場すれば、ハッと息をのむ声が聞こえるようだった。
(そうだろう、そうだろう。レンジュはどこに出しても恥ずかしくない美人さんだ。)
「ほほほほ!なんでこんなところに男娼の妹が紛れているのかしら!」
ファーメント。
毒女が高笑いして入ってくる。
誰がこの女を入れたんだ!
公爵令嬢かもしれないが、トラブルしか起こさないのに、何故毎度現れるのか疑問だ。
衛兵は何をやっている!
「男娼とはどういうことだ、リーフ公爵令嬢。この場に相応しくない騒動を起こして、私は許せないぞ。」
陛下の問いに、ファーメントはにたりと笑って、私を見た。
「そこの殿下の側近。うちの分家のオランジェ=ペコーは父親が負った借金返済のために夜は男娼をしているのですわ。貴族として、殿下の側近としてどうなんでしょうねぇ?」
「オランジェ!?」
「お兄様!」
その言葉に、兄上とレンジュがショックを受けて、身を固める。
「これが証拠ですわ!」
写真がばらまかれる。
大事な部分は映っていないが、自分が殿下に抱かれている姿―――――――。
「このお店は、雄っぱぶというものらしいですわね。気持ち悪い。男が男の乳を求めるなど。」
おしまいだ。
「オランジェ、どういうことなの?」
「いくらなんでも、男娼など。」
陛下たちに問われて、頭が真っ白になる。
もう、これで終わり。
私は近衛騎士であるまじきことをした。
殿下の側近も終わり。
家名に泥を塗って、兄上やレンジュに恥をかかせて。
殿下とも、もう――――――――。
もう、おしまい。
近衛騎士を、辞める。そう、言うしか。
涙が少しだけ、滲む。
「素敵だよ、レンジュ。」
ふわりとした桃色の髪に白に近い薄ピンクのドレスが似合う。
オーガンジーを上に重ねたそこには、小さな白い花が舞っている。
緑色の瞳はキラキラとして、きっと令息の心を奪うだろう。
「それじゃあ、城でレンジュが入ってくるのを待っているよ。」
私は、近衛騎士の制服に身を包み、屋敷を後にした。
「おはようございます、殿下。」
「おはよう…。」
殿下と秘密の恋人になって数日。
店での逢瀬が続いている。
なんだか恥ずかしいし、服を着ているのに目のやり場に困る。
自分を幾度となく貫いたソコや、甘い唇を思い出すと、はしたなくも欲しくなってしまって、罪悪感に苛まれる。
「かわいいなあ、オランジェは~。意識しちゃって。」
「ジェームズ!」
「今日はデビュタントの日だ。私を着飾らせてくれる?オランジェ。」
「は、はい…っ。」
「あっま。いいですけど、その雰囲気、外では封印してくださいね。」
王家が見守る中、デビュタントを迎える年若い貴族たちが現れる。
レンジュが兄上にエスコートされて入場すれば、ハッと息をのむ声が聞こえるようだった。
(そうだろう、そうだろう。レンジュはどこに出しても恥ずかしくない美人さんだ。)
「ほほほほ!なんでこんなところに男娼の妹が紛れているのかしら!」
ファーメント。
毒女が高笑いして入ってくる。
誰がこの女を入れたんだ!
公爵令嬢かもしれないが、トラブルしか起こさないのに、何故毎度現れるのか疑問だ。
衛兵は何をやっている!
「男娼とはどういうことだ、リーフ公爵令嬢。この場に相応しくない騒動を起こして、私は許せないぞ。」
陛下の問いに、ファーメントはにたりと笑って、私を見た。
「そこの殿下の側近。うちの分家のオランジェ=ペコーは父親が負った借金返済のために夜は男娼をしているのですわ。貴族として、殿下の側近としてどうなんでしょうねぇ?」
「オランジェ!?」
「お兄様!」
その言葉に、兄上とレンジュがショックを受けて、身を固める。
「これが証拠ですわ!」
写真がばらまかれる。
大事な部分は映っていないが、自分が殿下に抱かれている姿―――――――。
「このお店は、雄っぱぶというものらしいですわね。気持ち悪い。男が男の乳を求めるなど。」
おしまいだ。
「オランジェ、どういうことなの?」
「いくらなんでも、男娼など。」
陛下たちに問われて、頭が真っ白になる。
もう、これで終わり。
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家名に泥を塗って、兄上やレンジュに恥をかかせて。
殿下とも、もう――――――――。
もう、おしまい。
近衛騎士を、辞める。そう、言うしか。
涙が少しだけ、滲む。
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