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殿下の気持ち

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「………っ、あ、あ………んぅ。」

自分の手で指で唇で。

慣らされた体。

初心な体が少しずつ自分に染まって、蕾が花開くように、開発されていく。


昨日よりも明らかに反応がよくなった体を抱きしめ、簡単に開くシャツの前をはだけさせて、堪能する。


桜色に染まった体。

ぴくぴくと震える体。

自らの唾液でてらてらと光る胸の果実は、ほのかに紅く、先がピンと立ち、主張している。

触れるたびに感じ入り、早くも胸だけでイケるようになった体。


清楚な心とは裏腹に、ずいぶん感じやすい体のようだ。

仮面越しでも羞恥に閉じられた睫毛が震えているのが分かる。


ああ、オランジェ…。



側近候補として引き合わされたあの日。

私は君に三度心を奪われた。








「おらんじぇ、ぺこーです。でんかにおかれましてはごきげんうるわしく……。」

ハラハラと少し離れて見守る両親を後目に、オランジェは、あれぇ?なんだったっけ…と目をくりんとさせて、うーん?と考えていて。


「だいじょうぶだよ、おらんじぇ。まだわたしたちはおさない子どもなのだから。すこしくらいまちがっててもいいんだ。」


集められた子どもたちの中では、一番おっとりして、小さくて、可愛らしいオランジェ。
この子を守ってあげたい…。

安心させたくて手を握ってあげたら、花がさいたような笑顔で。


「ありがとうございます、でんか。でんかはとてもおやさしいのですね。きっとりっぱなおうさまになりますね。わたしたちはしあわせです。」

きゅうぅううううううううううん!


なんだ、この、胸の感じは…。


思えば、私はこの時からオランジェが好きだったのだと思う。



「殿下、他にもお友達がたくさんおりますよ。」


リーフ公爵に声を掛けられて、オランジェから離れた。

王家の御茶会には、側近候補の令息の他に婚約者候補のご令嬢も来ていて、リーフ公爵家のご令嬢もその中にいたけれど、私はどのご令嬢も気に入らなかった。



「でんか、わたくしはファーメント=リーフと申します。ご令嬢の中でいちばんかわいくて、しゃくいが高くてつりあうのはわたくしでしょう?わたし、よい王妃になりますわ。」

気取ったカーテンシーに、傲慢な性格。
私が一番嫌いなタイプだ。

「妃候補を決めるのは王家だ。わたしたちはまだ5歳なのだから、今はゆるそう。だが、自分で自分が妃になれるなど言わないことだ。」



そうすると、この令嬢は、かぁっとポットが沸いたみたいな顔をして、ドレスの裾をまくり、がに股でずんずんと後ろに行く。
そして、あろうことか黒髪の友人と歓談していたオランジェを突き飛ばしたのだ。

「ちょっと!何をするんだ。」

「むしゃくしゃしてるのよ!分家の子の分際でっ。たかが伯爵家なのにっ!ここにいられるのは、私が『女』だったからよ?釣り合う年の男の子がウチにいなかったから、分家だけどうちの代表として来られたの。つまり、わたしのおかげでしょ?だからいいのよ!」

令嬢は持っていた扇子でオランジェを殴りつけた。


「やめろっ!」

「スプーン侯爵家の次男ね。侯爵家とは名ばかりの貧乏人め。私に逆らうの?お家がどうなってもいいのかしらぁ?」

「……っ、お前本当に俺らと同い年かよっ。」

「あたりまえでしょう?私は王妃になるのだから。あなたたちがオムツを履いてミルクを飲んでいるころから、私は将来の王妃になるために勉強してたんだから。」

「なんだよ、それっ!」

「いいんだよ、ジェームズっ。僕を打ち据えて気が済むのであれば、お好きにどうぞ。」

いけない!


私が諫めようとしたその時――――――――



「皆さま、お逃げください!みなよ、殿下らとお客様をお守りするのだ!」

まだ当時は近衛騎士の下っ端だった現・隊長のクローバー=ハピネス侯爵令息が、声を張り上げた。

「皆を混乱させてどうする!ハピネス、何があったのだ!」

当時の隊長がしかりつけ、ハピネスの指し示すものを見て、驚愕した。

それは、先日王都に出現し、討伐したはずの―――――――牛の魔獣。



「どういうこと!ゴルデン隊長!討伐したはずではなかったの!」

私の母が声を張り上げる。
侍女の一人は急ぎ父に連絡を入れに行ったようだ。


「もっ、申し訳ございませんっ……!う、牛の魔獣はたいへん希少で…!」

牛の魔獣は狂暴だが、その肉はたいへん美味で希少。
隊長が欲を出したか…!


ハピネス隊員が颯爽と牛の魔獣を仕留める。
が、けたたましい雄たけびとともに絶命したその腹から3匹の子牛…ーといっても立派な魔物が飛び出した。

「しまっ


「だいじょうぶです。殿下はぼくが守りますっ。」

わたしより小さな体で。
どうしてあんなに強いんだろう。

咄嗟に、誰よりも早く、オランジェは我が身で私を隠して、騎士が落とした剣を持ち、子牛を見据えた。
そのきりっとした笑顔に勇気づけられ、私は二度目の恋に落ちた。

オランジェに引っ張られるように、ジェームズ=スプーンも私を守る。


産まれたばかりの魔物だったからか、二人は協力して騎士が来るまで私を守り抜いた。

大人用の剣なんて、その頃の二人にはまだとても重たかっただろうに。

火事場の力、だったのだろう。


事がすめば、二人は剣を落として、がくっと座り込んだ。


ちなみにその時、は自分だけ真っ先に城の中に逃げていた。
尿臭かったから、失禁もしていたと思う。





そして三度目―――――――。

「魔物といえど、命を奪うのは辛いですね。共存が出来たらいいのですが。もしかしたらあの母親の魔物は、子を産むための食糧を探して街に降りてしまったのかも…。こうなった以上は、倒すしかないですけど。」

その思慮深さと優しさに。


「でんか、ぼく、大きくなったらでんかの騎士になります!」

その勇敢な志に。




私は惚れたのだ。



「あっ、あっ…。だめっ……。」

桜色に染まるオランジェ。



きっちりとした服に常に身を包み、学生時代もずっと私の騎士としてそばにいたな。

その制服を脱がせて、乱れさせたいという欲望を何度抱いては抑え込んでいたか。


「何がダメなんだ?」


「いっ、……いっちゃうぅ…っ。」


「イケばいい。」




ああ、私は君が欲しいのに。





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