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初めてのあの人以外
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(今日はいらっしゃらないかもな…殿下。今日は会議の後、他国の貴人を招いてのパーティがあった。)
近衛騎士隊副隊長でありながら、そんな重要な場よりもお金を優先して、夜の仕事をしている自分に自嘲する。
自分がいなくても、ジェームズがしっかりやってくれる。
でも、今日は重要な場だったから、初めは店に休みの連絡を入れようとしていた。
だけど、ジェームズが借金返済のためにもお店に行った方がいいと言ってくれて。
殿下は何か言いたそうだったけれど、ジェームズが背中を押して送り出してくれた。
近衛の月給は40万ティー。
『秘密の薔薇』では、毎週末に歩合制でお金がもらえるからありがたい。
1千万ティーあった借金は、この3週間で940万ティーになった。
月給からも少しずつ補填していくとして、このままいけば半年くらいでは返せるだろうけれど、利息もあるから早く返せるに越したことはない。
それに、なるべく早くこの二重生活を解消しなくては。
「今日はみかんちゃんのお客さんこないわねぇ~。」
オーナーが入口を見てため息をつく。
「あの…。あの方じゃなくても、私は…。」
この仕事をしようって決めたときから、覚悟はしてるから。
「でもまあ、今日はお客さん少ないわねー。」
「今夜は天気も悪いですしね。」
外は雨だ。
独特の湿った匂いと天井を打つ水の音。
こういう時は、奇襲に気をつけなければならないのだ。
雨が多少の物音を消し、街から人気が減る。
だから、盗賊や暗殺者など、裏稼業の者たちが暗躍しやすい。
そして、血が流れてもその匂いが消されるだろう。
「あぁ…っ、あ、あっ…もう、俺…っ。」
衣擦れの音と、マンゴーさんの喘ぎ声。
今日はイチゴさんはお休み。
キウイさんと私がお客さん待機中だ。
カランと音がして、お客さんが入って来た。
物腰、身に着けているものからすれば貴族だろうか。
だが、今夜の夜会に参加していないということは下級貴族かな。
私も知らない顔だし…。
「ここに元貴族の男娼がいるって聞いたんだけど。」
隣に座るキウイさんの体が僅かにこわばるのを感じる。
あの男もキウイさんを嬲りにきたのか?
「元貴族の男娼というのは、私のことでしょうか?」
キウイさんを隠すように立ち上がって、男の前に出た。
私より少し年上くらいか。
男はまじまじと私を舐めるように見て、のどをならした。
「……お前、じゃないが。いいか。なるほどな、噂は噂だしな。じゃ、お前を指名しよう。名前は?」
「みかんと申します。」
「みかんちゃん、あなた…!」
「大丈夫ですよ、今夜は私の客は来ないと思いますので。」
「お客様、この子はとある貴人の専属でして……」
「じゃあそこの緑頭でもいいんだけど。」
「オーナー、キウイさんは体調がすぐれないようですから。大丈夫ですよ。」
自分の半個室へ客を引き込む。
近衛騎士隊副隊長でありながら、そんな重要な場よりもお金を優先して、夜の仕事をしている自分に自嘲する。
自分がいなくても、ジェームズがしっかりやってくれる。
でも、今日は重要な場だったから、初めは店に休みの連絡を入れようとしていた。
だけど、ジェームズが借金返済のためにもお店に行った方がいいと言ってくれて。
殿下は何か言いたそうだったけれど、ジェームズが背中を押して送り出してくれた。
近衛の月給は40万ティー。
『秘密の薔薇』では、毎週末に歩合制でお金がもらえるからありがたい。
1千万ティーあった借金は、この3週間で940万ティーになった。
月給からも少しずつ補填していくとして、このままいけば半年くらいでは返せるだろうけれど、利息もあるから早く返せるに越したことはない。
それに、なるべく早くこの二重生活を解消しなくては。
「今日はみかんちゃんのお客さんこないわねぇ~。」
オーナーが入口を見てため息をつく。
「あの…。あの方じゃなくても、私は…。」
この仕事をしようって決めたときから、覚悟はしてるから。
「でもまあ、今日はお客さん少ないわねー。」
「今夜は天気も悪いですしね。」
外は雨だ。
独特の湿った匂いと天井を打つ水の音。
こういう時は、奇襲に気をつけなければならないのだ。
雨が多少の物音を消し、街から人気が減る。
だから、盗賊や暗殺者など、裏稼業の者たちが暗躍しやすい。
そして、血が流れてもその匂いが消されるだろう。
「あぁ…っ、あ、あっ…もう、俺…っ。」
衣擦れの音と、マンゴーさんの喘ぎ声。
今日はイチゴさんはお休み。
キウイさんと私がお客さん待機中だ。
カランと音がして、お客さんが入って来た。
物腰、身に着けているものからすれば貴族だろうか。
だが、今夜の夜会に参加していないということは下級貴族かな。
私も知らない顔だし…。
「ここに元貴族の男娼がいるって聞いたんだけど。」
隣に座るキウイさんの体が僅かにこわばるのを感じる。
あの男もキウイさんを嬲りにきたのか?
「元貴族の男娼というのは、私のことでしょうか?」
キウイさんを隠すように立ち上がって、男の前に出た。
私より少し年上くらいか。
男はまじまじと私を舐めるように見て、のどをならした。
「……お前、じゃないが。いいか。なるほどな、噂は噂だしな。じゃ、お前を指名しよう。名前は?」
「みかんと申します。」
「みかんちゃん、あなた…!」
「大丈夫ですよ、今夜は私の客は来ないと思いますので。」
「お客様、この子はとある貴人の専属でして……」
「じゃあそこの緑頭でもいいんだけど。」
「オーナー、キウイさんは体調がすぐれないようですから。大丈夫ですよ。」
自分の半個室へ客を引き込む。
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