落ちこぼれ魔族の少女はやがて聖女になる

竜鳴躍

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エピローグ

エピローグ1:彼の遺志(アルファ)

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アルファ、ベータ、シイナの後日談で終わります。

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とんとん。

病室のドアが開くことも構わず、アルファの左目は空を見ていた。


体や頭には包帯がまかれ、右半身がほとんど覆われている。



入ってきたのはメフィストだった。


「屋敷を再生してきたよ。リュウらしいというか、家には仕事の始末だとか、マリアあてのお茶のレシピだとか俺のあしらい方のメモとかーーーーーー。あとは、みんなあての手紙も出てきた。」

これはお前宛だ。そういって、手紙を目の前で開いて、左手に持たせてくれた。


そこには、ただ、

ありがとう。

と書かれていた。


何回か書き直した跡が残されていた。



「お前、これからどうするつもりだ。」

「…どうしようかな。今更領地に戻るつもりもないし…。学園で雇ってもらうかな。弓師が隻眼隻腕になんて、俺はもう戦えないだろうし。」


リュウを失って、生気を失ったアルファに、檄をとばす。

「軍の総括をお前にやってほしい。」

「…は?」

「今回のことで痛感したね、平和だろうとある程度の危機管理は大事だと。二足の草鞋なんて限界。だから、俺は学園の管理と後進の育成に全力を尽くす。ルウと、二人で戦後の後処理もしないといけないしな。」

「メフィスト、だから俺はもう…」

「あの子はもう自分が長くないこともわかってたし、だからこそ命の使い方を自分で決めて、思うように生きさせてくれたお前に感謝して逝った。あの子が遺したこの世界を守るのは、お前しかいないだろう。」

それに、お前ならやれると信じてるよ。

そういって、メフィストは出て行ったーーーー。


バタン。


静寂に、扉が閉まる音だけが響く。




「お前のいない世界を、俺が守れと。そういうのか…。」

任せたよ、とリュウなら笑ってくれるような気がした。


彼を庇って、でも、最後まで、最期をみとったのは俺。
腕の中でずっとずっと抱いていた。

冷えていた心に、炎がともる。

残された左目に光がともった。




右目に眼帯をし、右腕には義手を付けた。
弓は持てないから、鞭で矢打ちをすることにした。
軍の最高指揮官の制服をつけ、髪をまとめ、俺は軍部に戻った。


彼を守り温めるように、ゆらゆらと燃えていた「太陽」と称されていた俺はもういない。



俺は、お前の分まで、世界を守り続ける。

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