落ちこぼれ魔族の少女はやがて聖女になる

竜鳴躍

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最終章

やるべきこと

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総司令室で敵が攻撃を受けた瞬間の映像を拡大、分析した。

攻撃を受けた瞬間、あの獣の体は黒い霧状になり、攻撃は体をすり抜けてしまっていた。

おそらく、あの体のベースは、人間界でアルファとともに対峙し、
取り逃がした魔族。

霧は水分。水分ならば凍らせてしまえばーーーーーーーーー。



世界中を映す画面の中で、世界の惨状をみた。

結界で上空からの攻撃や戦いの余波は防いでいるとはいえ、

突然現れた別の世界、見知らぬ種族。

混乱のさなか、地下から無尽蔵に突き出し、暴れる根や触手が、

街を破壊し、

建物を破壊し

彼らの日常を壊していく。

世界中が粉々になっていく。

今までの常識も、価値観も。

戸惑いの中で、ただ、生だけを求めて、今はそれしか考えられない様子で。

それはそうだ。

彼らにはすべてが突然過ぎたのだから。


「ベータとシイナはあの女性をなんとかしてくれ。俺が、あいつの動きをとめて、隙を作る。ルウは?」

リュウはそういうと、メフィストの耳元で、『頼むよ。』とささやいた。

「メフィスト、ルウについてやってくれ。できれば、怨嗟の連鎖は打ち止めにしたい。可能ならば…。」

「お前のことは、俺が守るからな。思い切りやれよ」

そういったアルファの表情は見えない。

「では、作戦開始!」

リュウの合図で、メフィストが何か呪文を唱え、彼の魔力が極限まで跳ね上がる。



「お話はもうおしまいかしら!?私、飽きてきたわ!!!」
余裕の様子でこちらを女が見る。

「さぁ、ドレイン様、もう片付けてしまいましょう!!!」

女の合図で、根と触手が活発化する。


うねりをもって、四方八方から太い根と、魔物の鋭い爪が縦横無尽に襲い掛かる。


「フレイム・アロー!」

弓から繰り出された炎の矢が、襲い掛かる根を次々と焼き払い、

「永久凍土…!」
リュウの足元から広がるように、魔物の体が、末端から急速に凍てついていく。
世界中に張る根や触手ーーー地上を突き出たそれーーーーも、街の破壊をやめ、凍り付き、活動を停止する。

グウウウウウウ…


気温が急速に下がり、白い息を出して、魔物が苦しんでいる。


「やった…!」


が、ため込んだ闇の魔力、吸収した同胞により膨らんだ力は、それに抗う。


ウウウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオオ…

苦しみながら、表皮につく氷を破り、苦しみながら、次々と新しい根を生やして襲い掛かる。

「封印を行使しやすい場所まで行くぞ!」

ルウを抱えて、メフィストが飛ぶ。
迫る触手は、光の槍で薙ぎ払う。


魔物が氷を突き破り、さらなる触手をはやすのと。
次々と凍らせ続けることの我慢比べをしている一方で、シイナとベータはベータの作る上昇気流に乗って、魔物の上まで駆け上がっていた。

「!」

魔物の肩に乗る女の背後に回り、シイナが蔦で拘束しようとする。

「ふ、捕まらないわよ!」

女が第3の目を見開くと、魔物の背から分離した蝙蝠や3つ首の獣が彼らに向かう。


そして、同時期に、リュウと魔物の凍結と再生の我慢比べは、徐々に再生が上回ってきていた。


つーと、リュウの唇の端から、赤いものが流れる。


息が上がり、それでも、力の行使を続ける。
もう立つことができない体を支え、アルファは片手で弓を持ち、口で矢を引きながら、彼の邪魔をするものをただの矢で打ち払い続ける。




上では、シイナとベータが女を拘束していた。



もう少し、もう少し…!


攻撃を避けながら、ルウは封印のための祈りを行っていた。
確実に封印する。
そして、できれば救う。

「きゃああ!」


最後の抵抗のように、今まで一番大きな根が、無数に湧き出し、襲い掛かる。


リュウは凍結の速度を上げ、
アルファはリュウを守って、一撃を受けた。

「お願い…!!!!!!!!!」




ルウの光が、今までで一番強く輝いた。

あたり一面、そしてどんどん光は広がり、


世界中があたたかい光に包まれた。




そして、傍らのメフィストは微笑み。





光の中でまた、星の輝きのような煌めきを瞬かせた。








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