落ちこぼれ魔族の少女はやがて聖女になる

竜鳴躍

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閑話

4人の美しい騎士と王子さまと聖なる月夜のお姫様

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人間界に帰る前にせっかくだからと、フレイム領でパーティが開かれることになった。

周辺領地から、貴族が招かれている。

金髪で華やかな見た目のブリジット。
ブルネットのストレートロングが清楚なフローラ。

私の学園時代のクラスメイトも、来ている。


初めて知ったけど、兄は昔、軍部にいて、アルファさんと同僚だったらしい。
せっかく兄がいるのだからと、もう二人、兄のかつての同僚も呼ばれていて、
それが、4人が4人とも軍服の正装をした美形(全員独身で婚約者なし←ここ重要!)なものだから、
ブリジットもフローラも、会場の女性陣はみな、キャアキャア秋波を送っていた。

白い軍服に青と銀の飾りの、兄。
穏やかでいて、どこか野性味もある、赤い軍服に金糸の飾りのアルファさん。
それに、黒い軍服に緑色のマントを翻した、しっとりした黒髪の細身の長身の人がベータ=ユリウス=ウインドさん。
ふわふわした桃色の髪で菫色の瞳の、やや小柄な人が、シーナ=スプリング=ドリアードさん。
久しぶりに4人そろったらしく、周囲の女性たちには視線もくれず、壁の方で談話している。
一応ホスト側なので、まずいとは思っているらしく、アルファさんは時々会場をまわってはいるが。


そして、舞台のそでで、アンジェラさんと一緒に私は控えていた。
アンジェラさんは、アルファさんに似せるために、眉毛を太くしたり、胸をつぶして肩幅を広く見せる服を着ていたけれど、今は、本来の姿をしている。
短くしてしまった髪はどうにもならないけれど、右側の髪を耳にかけて、真っ赤な薔薇を飾り、豪奢な深紅のドレスにルージュを引いて、艶やかな美女になっていた。

「緊張している?」

「…はい。こういう場にはいい思い出がなくて。」

「大丈夫。私がついているよ。さぁ、行こう、レディ?」

女性の姿になっても、紳士のように振る舞うアンジェラさんは、私の王子様のようだ。

アンジェラさんにエスコートされて、舞台のそでの重厚な赤いカーテンの奥から、前へ進む。



◆◆◆



「アンジェラさまと一緒に出てきた、あの子は誰?」

「どこのご令嬢かしら?素敵ね。」

初めて感じる視線。

信じられない反応に、どきどきして、顔をあげる。

「エキゾチックできれいな子!しなやかでするりとした長い手足!まるで聖なる月夜の猫のよう!」

ほんと?ほんとうに私綺麗なの?

隣のアンジェラに目をやると、当然でしょう?と言わんばかりに微笑んでいる。


今の私は、同じ世代の子が身に着けるより、少しお姉さんの装いをしている。
大体は、ふわふわとした、淡いパステルカラーの、フリルとレースがふんだんに使われたドレスを身に着けるが、今日のドレスは、アンジェラさんが選んで用意してくれたものだった。

「私が見立てたのだから、当たり前でしょう?あなただってあのお兄様の妹なのだから、元々魅力的なのよ。」

ふふ、私は可愛い子が大好きなの。思ったように魅力を引き出せて満足だわ!


首元くらいの茶色のくせっ毛は、アロマの香りのする整髪剤で撫でつけて、しっとりつややかに。
ドレスは、ふわふわではなく、マーメイドラインで片側だけ切り込みがあり、歩くたびに流れる。
色も、淡色ではなく、ロイヤルブルー。
はっきりした眉も、形を整えて。くりっとした大きな目を強調すれば。
やや濃い肌の色も、健康的で、エキゾチックな美少女。


なれないことにもじもじしていると、アンジェラさんが、前に一歩出た。



「今夜は、皆様にお集まりいただき、ありがとうございます。みな様ご存じの通り、先日、父が仕事中の事故で還らぬ人となってしまいました。湿っぽいのは嫌いでお祭り好きだった父のために、今日はぜひ、楽しんで、父をしのんでくだされば幸いです。」


アンジェラさんの隣に、スッとアルファさんが立つ。

「それと、この場で、新しい領主の宣言を行う。新しい領主には、ここにいる、我が妹が着任することになった。」

アンジェラさんは、一瞬、目を丸くし。あきらめたように笑う。

アルファさんは、ほほ笑むと、今度は私の肩に手をおき。


「そして、ここにいる、私の親友の妹でもある ルウ=シータ=ユプシロン公爵令嬢。」

会場がどよめく。

すごい勢いでブリジットたちの首が回って、こっちを向く。

こわ!

「彼女は、300年ぶりに生まれた聖魔。封印の力を持つ、聖女である!」



えええええええええええええええええ!!!!!!



と、会場が揺れた。





お兄ちゃんが壁の方でニヤニヤしている。

何が面白いのだろう。

ブリジットたちは、はしたなく口を大きく開けて目を見開いていた。
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