落ちこぼれ魔族の少女はやがて聖女になる

竜鳴躍

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覚醒の気配

フレイム領の主

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正気になったイフリートは俺たちに平謝りで。
それで、なぜ自分がマスターであるアルファ=キル=フレイムと離れ、こちらへ来たのか。よく覚えていないということだった。

『リュウさまをマスターのために、マスターのところへ連れて行かねば、ということしか…覚えていなくて』

精霊だが人間味あふれる彼は、しょんぼりしていた。

そうそう、湖はごめんなさいの状態になってしまったので、メフィストが魔界から人を呼んで、急ピッチで復元してくれました。


「お兄ちゃん、アルファさんどうかしたの?」

「どうしたのかがよくわからないんだよ。」

「リュウ、ルウ。いっそ二人でフレイム領に直接行ってみてはどうだ。今回みたいなことが起きるかもしれないし、いっそ自分たちから早めに向かってしまった方がすっきりするかもしれない。」

「うーん、確かにルウを一人にするのも。人間界を巻き込むのもな…。」

じゃあ行くか。

イフリートもお供をしてくれることになったし、何かあったらすぐにメフィストも駆けつけてくれる。
俺たちは、砂漠の土地。フレイム領へ向かった。



◆◆◆


砂漠の国。

暑さで大気は揺らぎ、人々は風をよく含む、ゆったりした長袖を好んで来ている。

赤の混じった白い壁に、青い玉ねぎのような形の屋根が独特で、
異国情緒がある。

そして、
フレイム領は、何もないかのように、いつものように、交易が盛んで。

人々は活気に満ちていた。


妹を連れて、適当なレストランへ入る。


「あっら~、きれいなお兄さん!ご旅行?」

「妹と家族旅行をね。こちらは久しぶりなんだけど、領主さまってまだお元気なのかな。」

「領主さまねぇ~。なーんか、こないだねぇ、南の遺跡が崩落したとかで、ちょうど里帰りしてたアルファ様と視察にいったきり、まーだ調査中らしいわ。アルファ様は戻ってこられたんだけどねー。政務を押し付けられているみたいだから、研究に没頭してるんじゃないかねえ。」

「ははは、領主さまは確か遺跡ハンターでしたからねー。」

「…一時期ねぇ、アルファ様が狂ったとかそういううわさがあったんだけどね。普通に毎日立派に政務をされてるし、デマだったわねぇ」

「どこの国にも面白おかしくいう人がいますからね」

「まったくよお!」

おしゃべりな給仕から話を聞きだし、王宮へ向かう。

お目通りを願ったら、あっさりと通された。



「久しぶりだね、元気そうでうれしいよ、リュウ。それにルウも。」


宮殿の玉座の上から、にこやかにほほ笑む。

その人はーーーーーーーーーーーーーー。







「お前、アルじゃないだろう。」






「えっ!」
隣で妹が素っ頓狂な声を上げた。


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