落ちこぼれ魔族の少女はやがて聖女になる

竜鳴躍

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覚醒の気配

真夜中の訪問者

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人間界にやってきて、はや1か月。

今日も妹の同級生は放課後に妹とやってきて、魔法の使い方を練習しにきた。
魔力の流れ方、魔力の感じ方使い方など、基礎を教えたらあっという間に帯電ができるようになり
もう少しすれば、初級の攻撃魔法くらいは使えるようになるだろう。
とはいえ、人間界で攻撃魔法を使う必要はない。

彼もあくまでマジシャンになりたいのだから。

使えるようになったら、制御の仕方や転用方法を教える必要があった。

彼は本当にいい子だ。ルウも、彼に好意を持っている。彼もまた、妹を好いてくれているようだ。
まだ幼い感情は、恋とも愛ともいえないかもしれない。
しかし、このまま時を重ねれば、いつかはそうなるに違いない。そう思わせる雰囲気はあった。
彼になら妹を託してもいいかもしれない。

そして、彼の姉ー加賀美優香。
買い物に行くときは、気が付けば、彼女のバイト先のスーパーへ行ってしまう。
彼女のふんわりとした笑顔がみたいからかもしれない。


考え事をしながらも、夜の静寂の中で電卓とパソコンのタイプを打つ。
空中に映像を投影しながら、俺は冷たい笑顔を画面の先の英雄に向けた。


「なんでこんなにため込んでるんですか。」

「・・・うぅ、ごめん。もう年だからかなぁ、最近文字を読むと目がちかちかって」

「世の大人はそれでもちゃんと頑張ってるんです。」

なんで1か月でこんなにため込むんだ。

「俺だってリモートでもちゃんとやるって言ってるでしょ、こんなになる前にこっちに回してくださいよ。」

「…すみません」

「はい、フォルダ分けて分類しました。あなたが絶対みて判断しないといけないやつはフォルダA。書類に書かれている内容の要点メモもつけましたから、長文読みたくなければこれだけでも読んでとりあえず判断してください。フォルダBはこっちでOKできたもの。Cは却下すべきもの。BとCも要点メモはつけましたけど、Cには却下理由も追記してます。でも、あとで必ず自分で確認してください。責任者はあなたなんですから。読むのがつらければ、マリアに読んでもらいなさい」

「いえす、マム・・・」

「それで?仕事が回らなかった本当の理由は?」


「実は、軍部の総統職の方が忙しくなって…。」

だから言ったのに。戦争を平定した英雄は、死んだ同僚の遺志を継いで次代の子どもたちの学び舎の整備と学園長に継いだが、もともとは軍部の最高責任者だ。
二足のわらじができるようなもんじゃない。

とはいえ、最近は落ち着いてきたから大丈夫かと思ったが。


「また、戦争が起きそうですか。」


「うーん…。まだ確実ではないけど。なんか、あちこちできな臭さは感じるんだよね。妙な事件も最近起きてるみたいでさ。といっても、あっちこっちで喧嘩みたいな小競り合いが起きてる程度なんだけど。」

「小競り合いくらいであなたが駆られるんですか?」

「小競り合いを始めた者をとらえると、つきものがとれたようにおとなしくなるんだ。広い地域で似たようなことが起きているのに、なんかおかしい。」

「精神感応系のなんかですかね。」

精神感応系であれば、少しは浄化の作用があるメフィストの光魔法が有効なのだろう。
光はレアだから、最高責任者とはいえ、自ら出向かないと仕方ない。

「敵方がよく使ってた属性だなと思ってね。----そういえば、君の親友のアルファ君の実家周りでも妙なことが起きてるらしい。」

「アルファのところというと、旧フレイム国ですか。」

「そう、我々白魔界と黒魔界と呼ばれる悪しき異次元の世界の境目を封じた古い結界のある国だよ。もともと魔界が統一される前の初代国王の聖地を譲渡されているところ、そんなところでね。領主が失踪した、その息子が狂って命を奪った。そんな噂が飛び交っている。」

すっと息をのんだ。

領主はアルファの父。その息子とはアルファのことだった。

「アルファはまだ軍部でしょう。あなたの下で南の将軍職にあるはずだ。」

「それが、ちょうど実家に里帰りして長期休暇中。で、連絡はとれない。」


まさか…。

柔らかな赤毛で、太陽のようにあたたかな笑顔の親友の姿が浮かんで、信じられない。
何があったんだ。


「フレイム領につないでもらちが明かないんだ。情報統制されている気がする。何もないといいんだけど、悪いけど君のルートからも探ってもらえると助かる。」

わかった、と通信を切った。





ーーーーーーーーーーと そこで


庭の、魔界と人間界をつなぐゲートが無理やりこじ開けられたのを感じた。
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