落ちこぼれ魔族の少女はやがて聖女になる

竜鳴躍

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英雄の学園長から呼び出しくらいました

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私はルウ。
ルウ=シータ=ユプシロン。11歳。
母は魔界の元王女で、王族と何回か縁組がある家系。血統は優秀も優秀の公爵令嬢。
全員が魔力を持ち、どれだけ魔力があるか、どんなすごい魔法が使えるかがステータスのこの世界で、私は生きづらかった。
なぜなら、貴い血ほど魔力が高いものなのに、私は、公爵家でありながら魔力が



だったから。

それで、とうとう家族ともども、学園長に呼び出しをされてしまった。

魔界全土から集められた子どもを一貫して養育するための学園は、広大な敷地にあり、
国が直接管理運営している。
だから、その学園長もそれなりの重鎮なわけで…。

両親を教室で待っていた私は、時間通りに来た学園長の第二秘書さんにいざなわれ、
両親とともに学園長室にやってきた。

どうなるんだろう、何があるんだろう…。

秘書さんが重厚な扉をノックして、声をかける。
「ユプシロン家がお見えになりました。」

「どうぞ。」
中から声。兄の声だ。
そう、私には両親のほかに、少し年の離れた兄がいる。
兄は飛び級で学び舎を卒業し、社会に出た。だから、まだ年齢的には16歳だ。
一時期家を出て外で仕事をしていたが、何をしていたかは聞いていない。今は、学園長の第一秘書をしていた。

「ご足労かけたね。どうぞ椅子にかけて楽にしてくれ。」
ソファを案内され、両親と席に着く。
学園長と兄も向かいの席についた。

学園長は、魔界の平定に貢献した英雄で、私の父親くらいの年齢だったはずだけど、鍛えているせいか若く見える。
何もなければ、かっこいいなぁって見惚れてるんだけどなあ…。
金髪を少し流して、緑色の目が生命力にあふれている。確か光属性の人だったよなぁ。キラキラだぁ。

「話というのは、この子の将来のことですね。」
父が話しかけると、学園長はうなずいた。

「彼女にはなぜか生まれつき魔力が全くない。突然変異かもしれない。このまま学園にいても卒業は難しいし、将来を考えると、この世界で生きるのは厳しいと思っている。」

「それは…。」

「そこで、考えたのだよ。こことは違う異世界、人間界では魔力は関係ない。そこでいずれ生活していければいいのではないかと。そこでなら、気の合う友人もできるかもしれない。魔力至上主義のここでは難しくても、人生の伴侶もいずれ見つかることだろう。彼女を人間界に移住させてはどうかと。」

「移住、ですか…」

「かの地と魔界はたびたび空間がつながることがあり、昔から多少の人流はある。移住に困らないように必要な手配はすべて行おう。移住しても問題はないと思う。」

兄は学園長の隣でだまって聞いている。
父は、少し目が泳いでいた。

「お願いします!」

父をしり目に、私は学園長の目をまっすぐ見て返事をした。

魔力もないし、血統だけよくて、そして私ときたら見た目も残念。
肌は地黒だし、眉毛も濃くて、こげ茶の髪と目。男の子みたいで異性からの人気なんてない。
小さいころから周りから陰でいろいろ言われてきたんだから!
たぶん、学園長はそれも全部わかってる。
家族が一生私を守ることはできない。
家が無理に夫を探してきたとしても、私は幸せにはなれない。

だからきっと、これが一番いいのだ。

「よく言った。さすが俺の可愛い妹」
兄がにこっと秘書モードの真面目な顔を崩した。
銀髪に白い肌、切れ長のアイスブルーの瞳に長いまつげが麗しい。
鼻もスッとしてるし、色白だから唇とか赤く見えるし、どこからどこまで見ても美少女にしか見えない。
性格は男らしいけど。うらやましい!何度交換してほしいと思ったか。
なんか、先祖返りのせいで両親とも似てないから、兄は兄で私の見た目のほうがこのましいらしいけど。
ほんとうに人生ってうまくいかない。

「実はね、移住に伴ってお兄さんには君についてってもらおうと思ってるんだ。」
「俺は人間界でリモートワークね。メフィストは俺がいないとすぐサボるから。そばにいない間は第二秘書のマリアちゃんにお願いしてるから。」
「ぐ…」

お兄様、その人は英雄でお兄様の上司のはずですよね…。

「まぁ俺は何でもできるから。初めての人間界でも心配ないからね。お父さま、お母さま、寂しくさせてしまいますが、世界をたがえるといっても、自由に行き来は可能です。ルウの幸せのため、承諾願います」

兄がそういうと、両親はうなずいた。
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