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ソルト出産

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「アニス殿下!ソルト妃が産気づきました!」


「わかった!急ぐ!」


執務をスパークリングに任せて、ソルトの待つ病院へ急ぐ。

病院につくと、一足先に出産しているもう一人のソルトが、赤ちゃんを抱いてカモミール団長の側にいる。


「さっき分娩室に入っていったんだよ。ここでみんなお祈りしよ。大丈夫だよ、同じ僕が大丈夫だったんだから。」


抱いている赤ちゃんは、ソルトというよりカモミールに似ている男の子だ。



ソルトの両親も、ブラックとミリーもやってきた。
ミリーの腕にも、ミリーによく似た可愛い娘がすやすやと寝ている。


ホワイトは、安定期に入ったポアプルを連れてきた。

どうしても行くと聞かず、体調が悪ければすぐに言うんだよ、と約束して連れてきた。
いざとなれば転移で帰るつもりだ。




「ああ、ソルト。ソルト…っ!!!!!」






「おぎゃあああ!おぎゃああああ!!!!!」




廊下まで響く元気な産声。




「あああっ!ソルト!!ソルト!!」


ガラッと分娩室の扉が開き、医者が、おめでとうございます、元気な男の子ですよ、と言った。




やっと会える我が子。

ソルトをねぎらいたい。
我が子を抱きたい。

父親になれた。いや、これからなっていくんだ。


息子に尊敬され、慕われる父親になりたい。

そして、いつまでもソルトに愛されるよき夫でいたい。



フッと、以前会いに行ったオラクル様が目の前に現れた。






「おめでとう。二人のソルトがともに子を成した。祝福する。私はいつまでもあの山にいる。お前たちの子孫に祝福を。」



ああ。


たまには、オラクルに土産を持って会いに行こう。

オラクルがいてくれたから、助かったピンチもあった。
オラクルがいてくれたから、自分もカモミールもソルトを手に入れられた。


あのまま、一人だったなら、ソルトはどっちも選べず、結果、どっちも選ばなかったかもしれない。


自分たちの幸せは、今、ここにいる。



カモミールもそう思っていたのか、目が合うと、頷いた。




出産を終えたソルトはくったりしていて、隣で寝ている赤ちゃんは小さくて、ソルトに似ていた。


「ありがとう、ソルト。はじめまして、私たちの天使。」

「アニス。僕、アニスの赤ちゃんを無事に産めて幸せだよ。」


「もっともっと幸せになろう。」


「これは、ソルトに似て別嬪さんになるな。うちの子には、遺伝子的には兄弟だからって言いくるめとかないとな。」

カモミールが苦笑する。


そうか。二人のソルトは同一人物だから、遺伝子的には向こうの子とは父親違いの子なのか。


なんか複雑だが、それも必要なことだろう。


同一人物が分裂したなんて奇跡、子どもはびっくりするだろうけど。
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