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本当の次期皇帝

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東の島国「トウホウ」は、スパイス王国の友好国だ。

上陸して、スパイス王国の保証書を提示する。

国が身元を保証していることを役人に見せ、市場に向かった。



「漢方は市場に売られているらしい。」


細長いごぼうみたいなニンジン。

植物の根っこ。


これが本当に効くのか。


不思議だなぁ。


あとで成分を分析したいから、サンプルに購入する。

使える素材なら、後からでも輸入できるみたい。


本屋さんで、この国の独自の医学書も入手した。



この国は、魔法や外科手術はないんだね。

その代わり、王様だけが神様の代行者として、精霊?を従えることができるんだって。

王様=神様なんだね。


文化の違いも面白い。




突然、入り組んだ市場の奥から夥しい物音がして、叫び声が聞こえた。




職業柄、よその国だけど気になる。


ブラックと顔を見合わせて、物音の方へ向かった。





市場の人が心配そうに輪になって集まっていた。


その中心に、ものすごく出血した人が倒れている。

壮年の男が、おいおいと縋っている。

「清聖様!清聖様!!!ああああ…、なんてことだ…っ。」


俺はブラックに上着を預け、その人のところへ行った。


「俺はスパイス王国の医師です。この人を診ます。」


回復魔法をかけ、傷口を繋いでいく。

失った血は戻らないけど、さっきやられたばかりなのか、体の外にはまだそれほど流れてはいない。

一緒にいた人が止血を試みてくれていたおかげだと思う。

貧血にはなるかもしれないけど。




「………ん。」

綺麗な長い黒髪。

彫りは浅めだけど、整った顔をしている。

その人が意識を取り戻した。



「ああああ!ようございましたぁあああ!」

「浅伸。ありがとう。心配かけたな…。 しかし、この方たちは。」


浅伸と呼ばれた男は、ミリーを紹介した。


「この方が、清聖様を救ってくださったのです。美しい回復魔法、まさに女神のようでした。」


「そんな、女神だなんて。普通のことをしただけですよ。俺は医師ですからね。」


ニッコリほほ笑んだミリーに清聖と呼ばれた男は、ぽーっと、ただ見つめている。

ブラックは嫌な予感がして、自己紹介をした。



「俺は彼の夫だ。俺たちは新婚旅行でこの国に来たのだ。」


「…そうでしたか。これも何かのご縁。お礼に食事をごちそうさせてください。」



礼と言われれば、断るわけにはいかない。










目を覚ましたときに、私を見つめる優しい眼差し。

美しい人。

一目見て恋に落ちたのに、その人は他の人の妻だった。


彼との縁を結びたい。


どうにかつながりを断ちたくなくて、食事に誘った。


個室で、人もいない。


狡いと思うが、私の身分を明かそう。




「私は、大清聖。トウホウの次期皇帝、のはずでした。」


「お家問題か。俺もスパイス王国では騎士団の副団長をしている。察しはつく。」


「先日、父が崩御し、以前より後継は私が内定していたのですが、側妃の一人が産んだ弟が、反乱を起こしました。正確には、父の従弟になる男、弟の母親の実家ですがね。」

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