上 下
78 / 133

お城で噂

しおりを挟む
「まさか、ポアプルが近衛騎士になるなんて思っても見なかったわ。こうしてみると、あなたも男の子だったのねぇ。」

ロゼ伯爵家では、お母さまが俺の白い騎士服を見て、感激している。


「でも、いずれは公爵家に嫁ぐんだろう?」

お父様の後を継いで領地経営している上の兄は、かわいいと思っていた下の弟が騎士になって、しかも近衛騎士だなんて、ちょっと複雑な心境らしい。

すねて、たまにお母さまに甘えているのを知っている。

因みに下の兄は学者で、既に独立していて、俺がどうなろうが我関せず、あまり変わらなかった。


あの兄は聡いから、うすうす気づいていたのかもしれない。



「俺が仕事に慣れた頃に式を挙げようかって言ってくれてる。子どもはまだ先でいいからって。」

「赤ちゃんができたらどうなるのかしら…。」


「俺、クミン様付きらしいんだ。いっぱいいる護衛の一人なんだけど、赤ちゃんができたら仕事はお休み。だけど、クミン様も小さい子がいるから、気が早いけど、クミン様の御子様とご学友になるかもって言われた。」


「へぇえ。そうよねぇ。旦那様はゆくゆく魔法師団長になられるだろうし、公爵家の次期当主ですものね。ご学友の条件は満たしているわ。私の孫が王太子の御子様のご学友になるなんて…。お母さま緊張しちゃう。」


「だから、気が早いって。」





城に出仕すると、見知った顔に出会う。

会釈をして、奥に進む。





「………からさ。元は同じ人間を妻にしているのに、同じ時期に結婚した団長には子ができて、アニスさまにはまだだろう?『不能』なんじゃないかって噂だぞ。」

「いやあ、俺は『種無し』なんだって聞いた。あれだけ何もかも優れて恵まれている人でも、やっぱり何か一つは足りないところがあるんだなぁ。そう考えると、クミン様で正解だったのかもな!」



下世話な噂話。



きっと、本人たちの耳にも入ってはいるんだろう。


柱の影で咳ばらいをすれば、噂話の好きな若い侍従たちは慌てて持ち場へ戻った。






クミン様の部屋は、渡り廊下を通って奥の方だ。

廊下を歩いていると、反対側の廊下からホワイトが歩いてくるのが見えた。

なんだかちょっと元気がないみたい。


どうしたんだろ。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された婚活オメガの憂鬱な日々

月歌(ツキウタ)
BL
運命の番と巡り合う確率はとても低い。なのに、俺の婚約者のアルファが運命の番と巡り合ってしまった。運命の番が出逢った場合、二人が結ばれる措置として婚約破棄や離婚することが認められている。これは国の法律で、婚約破棄または離婚された人物には一生一人で生きていけるだけの年金が支給される。ただし、運命の番となった二人に関わることは一生禁じられ、破れば投獄されることも。 俺は年金をもらい実家暮らししている。だが、一人で暮らすのは辛いので婚活を始めることにした。

嫌われ変異番の俺が幸せになるまで

深凪雪花
BL
 候爵令息フィルリート・ザエノスは、王太子から婚約破棄されたことをきっかけに前世(お花屋で働いていた椿山香介)としての記憶を思い出す。そしてそれが原因なのか、義兄ユージスの『運命の番』に変異してしまった。  即結婚することになるが、記憶を取り戻す前のフィルリートはユージスのことを散々見下していたため、ユージスからの好感度はマイナススタート。冷たくされるが、子どもが欲しいだけのフィルリートは気にせず自由気ままに過ごす。  しかし人格の代わったフィルリートをユージスは次第に溺愛するようになり……? ※★は性描写ありです。

【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。

cyan
BL
留学中に実家が潰れて家族を失くし、婚約者にも捨てられ、どこにも行く宛てがなく彷徨っていた僕を助けてくれたのは隣国の宰相だった。 家が潰れた僕は平民。彼は宰相様、それなのに僕は恐れ多くも彼に恋をした。

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

左遷先は、後宮でした。

猫宮乾
BL
 外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...