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再起不能

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「騎士団と魔法師団の合格者もいるんだろう。私が一人で相手をしてあげるから、皆でかかっておいで。」

ポアブルをブラックに任せ、転がっているバジルという男は適当に端に寄せる。

演習場所の外側にはバリアをはった。



「言っとくが、やらなければお前たちは腰抜けで、内定取消だ。」

やっても徹底的に恥をかかせてやるから、内定取消だけどな。


「ひッ。」


「たった一人の人間を閉じ込めて、5人で寄ってたかって拘束して、カメラまで回して何をする気だったのかな?そんなことを現行犯でしでかした君たちだけど、内定を取り消されたくないのなら、それでも自分が有用だということを陛下の前で証明したまえ?」

無理だろうけれど。




ざわ…ざわ…。


騎士と魔法師が中央の学生5人を見つめる。


壇上から眺める陛下のまなざしも厳しい。



ふふふ。入団前に膿が分かってよかったよ。

君たちに『力』があるのは危険だからね。徹底的に『力』を削いであげる。


ブラックに預けたポアプルを見た。

「ポアプル。君の参考にもなるはずだから、よく見ておいてね。君の婚約者のカッコイイところを。」




「こっ、こ……!ちきしょう、やるしかねえ!」


ポアプルを襲った時のように、5人は連携してホワイトを襲おうとした。








「あああ、かわいそ。」

ブラックが笑う。

「かわいそう?」

「ああ。かわいそうだよ。ホワイトが言ったように、よく見とくといいよ。彼の戦い方を。」


ポアプルの胸はどきどきと高鳴った。





戦い始めの陛下の合図とともに、閃光の速さでホワイトが走る。

「パラライズ・ミスト!」「ミックス、サイレント!」

「………!!!!」


リーダーの男と、魔法師団の男が口をパクパクさせている。



「戦いの定石は最初に回復や補助役を潰すことだ。そして、魔術師がソロで戦う時は自分の強化が先だ。戦いの前に前もってやっておくのもいい。もしも魔法が使えない騎士の場合なら、魔道具やスクロールで補ってもいいな。」


「……くっ、このっ!」
騎士団に内定していた大男が剣を振りかぶって向かってくる。


「あはは。当たらないねぇ。回復役や補助役がいなければこの程度。ポアプルの方がよっぽど強い気がするなぁ。」

ホワイトはロッドを手に、剣をいなし、叩きおった。


一方的な蹂躙。


「この程度なの?チンピラに毛が生えた程度じゃないか。つまらないから、状態異常を解いてやろう。」

パチンと指をはじき、5人の動きに切れが戻る。

リーダーと魔法師も、魔法が使えるようになったようだ。



「陛下。この者たちは更生を期待しておいておくほど価値はありませんし、万が一、鍛えてそれを悪事に利用されたら国益を損ないます。ここで、牙を抜いてもいいですよね?」


「ああ。許す。」




「うあぁあああああああああああああああああああ!!」

身体能力をあげた4人が突っ込み、魔法師が火球を放った。



「遅い。」

ホワイトの魔力から、夥しい水が勢いよく火を消し、逆に劫火が放たれ、その次に竜巻、雷撃が所狭しとバリアの中で暴れ狂った。



「「「「「ギャアアアアアアアアアアアアアア!」」」」



黒こげになって気を失った彼らの下へホワイトは歩むと、ニッコリほほ笑んで記憶を操作した。




「えげつないのう。さすが副団長。」


陛下も、背筋を震わせる。


「さあ、これでこいつらはもうおしまい。あとはその寝っ転がってるやつだけど、これは後で私がなんとかしよう。ポアプル、君はもう安全だし、逆恨みされることもないからね。」


ポアプルは、ブラックを見上げる。


「………あいつ、何をやったの?今。」



「ん?たぶんだけど、『卒業前の旅行で羽目を外して山でキャンプをして、山火事と雷の直撃にあった』と記憶を改ざんして、回復と魔導士の魔力回路と騎士団のやつとあと二人の右手や右足の神経を焼き切ったんだと思うけど。腕のいい医者なら治せるけど、これは罰だから、裏から手を回して治せない体にするんだと思う。」


「あいつ、やばくない?」


「普段はあんなじゃないよ。よっぽど君のことが好きなんじゃないか?」





ふうん。


そか。


………あれ?なんでこんなにうれしいんだろう。


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