【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。

侯爵の誤算

「くそ、くそっ。」

マルト侯爵は、執務机を苛立ちのまま蹴飛ばし、足を痛めてのたうち回った。


「いたい！あ、あ～もうっ、痛い、くそおっ！」


国内の商会を束ね、口利きの利権で手広くやってきた。

仕事をしたがるアホな第一王子に優しくして、融通を利かせて。


しかし、ここにきて、自分の口利きや根回しが通らなくなってきた。


婚約者が変わったせいだろうか。



そうでなくても、街灯を整備し、街道を整備し、商売をしやすくしてくれる第一王子の婚約者候補に、商人の気持ちは傾いてきていた。


侯爵が口を利こうが利かまいが、第一王子や文官たちは、平等に公平に取引を決めた。


ならば、侯爵はもはや不要なのだ。


傅くものが減り、袖の下も入らない。



邪魔な人間を排除しようとしたが、それは、やってはいけないラインを超えた。

縁戚のガトーは、私を恨んでいる。　

実行犯になった娘は、廃嫡せざるを得なかった。

しかも、それなりに美しかったのに、呪詛返しで無惨な姿になり。





「こんなはずじゃ、こんなはずじゃなかった。」




刺客を送っても送っても、殺されるか再起不能で帰ってくる。

目的が達成される見込みは皆無。



ばれないうちに、身分を捨て、逃亡するしかない。

だが、その勇気もなく、騎士団がドアを開けて乗り込む日を、いつ来るかと怯えながら、ただ、待っている。