紫の魔女とたたかう赤い瞳は金の瞳の騎士にあう

竜鳴躍

文字の大きさ
上 下
2 / 14

なんでこんなことになった

しおりを挟む
なんでこんなことになった。


茶色の髪を無造作に流して、カラーコンタクトで瞳の色を茶色にしている男は、路地裏に面している自分のオフィス兼住居で独り言ちた。


気味の悪い金色の目を見られ、怯えられると思いきや、少年になつかれてしまい、オフィスまでついてこられた。



そして、この少年ーーーーエルは、一向に帰ろうとしない!



安物のソファーに座っている彼に、コーヒーを出してやり、自分もコーヒーを飲みながら、考える。


ここは、こんな子どもがいていい場所でもないし、どちからといえば物騒な界隈だ。

気が進まないが、知り合いを呼んで、保護してもらおう、うん、それがいい。


「お兄さん、いい体してるね。」

ぶっとコーヒーを吹き出す。

「おまえ、まさか…そっちか?」

少年の花売りなら、まあこの界隈なら分からんではない…。

「そっち?」

「…いや、違うならいいんだけど。どういう意味だよ。」

「どっかの騎士みたいだなぁって、身長も高いし、筋肉も締まってるし。」

「…ここ、探偵事務所なんだよ。仕事柄、荒っぽいこともあるからな。でも、身長とか体格は生まれつきだな。ガキの頃からでかかったし。」

騎士、ねえ。

そんなたいそうな柄じゃないけど。


「クルセイド家って聞いたことない?」

「しらん。お前の家か?」

「そっか…。」

なんなんだ、こいつ。意味不明。

「まあ、いい。サツの知り合い呼んだから、それ飲んだら引き渡すぞ。」

「やめて!」

エルの顔が蒼白になる。

そして、俺を指さした。

「ガーネットの名において命ずる、汝、クルセイド。私の騎士として契約する!!」

「うっ…!?」

エルの赤い目が光ったような気がして、刹那、脳が一瞬焼かれるような、痛みを感じた。

目の奥が痛い。



「ジョン=クルーズ、その子か?」

コートを羽織った無精ひげの中年の男が、ノックをせずに入口から入ってきた。

俺の知り合い。職業柄つながりがある。そして、できれば会いたくない男。
マルク警部補だ。


「…あ、ああ…。」


両目を抑えながら、応える。

「坊や、この町は危険だ。この男もな。だからおいで?おじさんと行こう。」

エルはふるふると落ち着いた様子で首を横に振った。

「僕、ジョン兄さんに会いに来たの。兄さんたらひどいよ、僕を追い返そうとしてお巡りさん呼ぶなんて。」


おま、だれがお前の兄さんだよ?

ーーーーーそう思っているのに、口が勝手に動く。

「ああ、すまん…。と、いうわけだ。わざわざ非番中呼んだのに申し訳ない。」


くそっ、俺はお前にもう逆らえないってことか!? そうなのか??


「兄? お前孤児院出身で身寄りがないんじゃなかったか?」

「孤児院時代の…弟同然ってやつだよ。」

また口が勝手に…。

くそ、くそっ。


こうして、マルクも帰ってしまい。

俺はこいつと一緒に暮らすことになった。





「大体、なんで騎士なんだよ。お前、俺のこと優しい親切な人とでも勘違いしてないか?」

「優しいでしょ?」

「ーーーーーー言っとくけど、俺、元結婚詐欺師だから。あいつにつかまって、足洗ったけど。お前がおもってるより、俺は狡いし、汚いし。初対面の俺にそんな信頼を寄せるな、お坊ちゃん。」

言い捨てると、


エルは驚いたような顔をして、焦りと、なにか感情が入り混じったような複雑な表情をした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

令和欲張りギャグコメディ「しまづの県」

郭隗の馬の骨
ファンタジー
現代っぽい日の本でお菓子製造を営む株式会社しまづの面々と全国の戦国時代にどこかで聞いたような人々があれこれするお話。 随所にアニメや漫画などのパロディーを散りばめて、戦国島津を全く知らない人にも楽しんでもらいつつ、島津の魅力を味わってもらおう、ついでにアニメ化やゲーム化やいろんなタイアップを欲張りに求めていくスタイル! 登場人物は戦国島津、戦国武将、島津ゆかりの風味(ここ大事!)で舞台は現代っぽい感じ。(これも大事!!) このお話はギャグパロディ小説であり実在の人物や組織、団体などとは一切関係ありません。(ということにしておいてください、お願いします)

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ

青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人 世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。 デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女 小国は栄え、大国は滅びる。

満月に吼える狼

パピコ吉田
ファンタジー
ギア子はメガ男と結婚したばかり。 普通の新婚生活を送るはずがトラブルに巻き込まれる。 そんな中で隣に引っ越して来た女性がある財団に家族を奪われたと聞くとギア子は財団から家族を助けるべく立ち上がる。 そして太陽が地球に近づき始めると同時に怪しい企業が動き出していた。 運命に翻弄されながら待っている未来は・・・。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...