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最終章前夜:悪役令嬢は永遠に2
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「ん…。」
私が目を覚ますと、そこは、暗いどこかの室内のようでした。
後ろ手に縛られていて、古いソファーの上に私は座らされています。
周りは誰もいません。
着衣の乱れもなく、乱暴された形跡がないことに、ひとまず安堵し、私はゆっくりと体を起こしました。
薄暗い中をよく見ると、物置のようですが、中にあるものは古いけれど、いい品ばかりです。
ただ、値がはるだけではありません。
伝統美を感じられますし、品の良さを感じます。
ということは、私を攫った犯人は、高位貴族なのかもしれません。
考えてみたら、一男爵が、国家を転覆しようなど、一人で考えるでしょうか。
まだ、事件は終わっていなかったのではないでしょうか。
男爵という駒を失い、本丸が動いたのかもしれません…。
何とかして、ここを脱出するか、若しくはマクシミリアン様達に伝える手段はないかしら。
きっと、今頃、ミレニア様もリチャード様も一緒に私を探してくれているでしょう。
ふと見ると、換気のためか窓がわずかに開いていました。
これ以上開かないように細工がされていて、縛られている腕ではここから脱出することも、窓をもっと開けて助けを呼ぶことはできそうにありません。
それでも、私は窓に身を寄せて、頭をこすりつけるようにしながら、髪飾りの百合の花を窓の隙間に差し込むことに成功しました。
あとは…ーーーーーーーーーー。
◆◆◆
王宮のパーティは中止となり、会場の参加者は皆帰らせた。
リチャードが今、私の命を受けて、マリーの捜索にあたってくれている。
私は、頭の中でぐるぐると考えていた。
そんな私を逆なでするかのようなタイミングで、クレイソン公爵が近寄ってくる。
まるで親身になっているような顔をして。
「王太子殿下、大変なことになりましたな…。こうなっては、もう、残念ですが…。」
何が言いたい。
ああ、わかっているとも?
「…そうだな、攫われたとなると、何もなかったとしても、それだけで傷物になってしまう。王太子である私の妃には相応しくないと、そういわれてしまうだろうな。」
ーーーーそうだな、そうなったらミレニアを妃にすることになるかもしれないな。
私は、あえて、そういってみた。
ミレニアは不服そうな表情をしている。
「すまない、少し落ち着きたい。下がってくれないか。」
そういうと、申し訳なさそうな顔をして、公爵は去っていった。
◆◆◆
ーーーーーーーーやはり、あの娘もどうにかすべきか。
去りながら、公爵は独り言ちる。
クレイソン公爵は、自分の今の立場が不満だった。
先代の王の甥として生まれた。
先代の王には、長いこと男子が生まれず、このままうまくいけば、自分が今の王の立場だった。
王太子教育も受けていたし、自分は優秀だとの自負があった。
それがどうだ。
結局、王位は継げず、王の右腕にすらなれない。
宰相に顎でこき使われて。
愚かな男爵を焚きつけて、国政が混乱したら自分がおさめ、王位を攫うつもりだった。
もちろん、男爵は切るつもりで。
いつも偉そうにしているメロディア公爵も、めちゃくちゃにしてやりたかった。
くそっ!くそっ!!くそっ!!!
忌々しいあのミレニアも攫ってやろう。
ミレニアとあの婚約者は仲が良いらしい。
仲良くあの世に旅立ってもらうことにしよう。
娘の亡骸を見るメロディア公爵の顔が早く見たいものだ…。
私が目を覚ますと、そこは、暗いどこかの室内のようでした。
後ろ手に縛られていて、古いソファーの上に私は座らされています。
周りは誰もいません。
着衣の乱れもなく、乱暴された形跡がないことに、ひとまず安堵し、私はゆっくりと体を起こしました。
薄暗い中をよく見ると、物置のようですが、中にあるものは古いけれど、いい品ばかりです。
ただ、値がはるだけではありません。
伝統美を感じられますし、品の良さを感じます。
ということは、私を攫った犯人は、高位貴族なのかもしれません。
考えてみたら、一男爵が、国家を転覆しようなど、一人で考えるでしょうか。
まだ、事件は終わっていなかったのではないでしょうか。
男爵という駒を失い、本丸が動いたのかもしれません…。
何とかして、ここを脱出するか、若しくはマクシミリアン様達に伝える手段はないかしら。
きっと、今頃、ミレニア様もリチャード様も一緒に私を探してくれているでしょう。
ふと見ると、換気のためか窓がわずかに開いていました。
これ以上開かないように細工がされていて、縛られている腕ではここから脱出することも、窓をもっと開けて助けを呼ぶことはできそうにありません。
それでも、私は窓に身を寄せて、頭をこすりつけるようにしながら、髪飾りの百合の花を窓の隙間に差し込むことに成功しました。
あとは…ーーーーーーーーーー。
◆◆◆
王宮のパーティは中止となり、会場の参加者は皆帰らせた。
リチャードが今、私の命を受けて、マリーの捜索にあたってくれている。
私は、頭の中でぐるぐると考えていた。
そんな私を逆なでするかのようなタイミングで、クレイソン公爵が近寄ってくる。
まるで親身になっているような顔をして。
「王太子殿下、大変なことになりましたな…。こうなっては、もう、残念ですが…。」
何が言いたい。
ああ、わかっているとも?
「…そうだな、攫われたとなると、何もなかったとしても、それだけで傷物になってしまう。王太子である私の妃には相応しくないと、そういわれてしまうだろうな。」
ーーーーそうだな、そうなったらミレニアを妃にすることになるかもしれないな。
私は、あえて、そういってみた。
ミレニアは不服そうな表情をしている。
「すまない、少し落ち着きたい。下がってくれないか。」
そういうと、申し訳なさそうな顔をして、公爵は去っていった。
◆◆◆
ーーーーーーーーやはり、あの娘もどうにかすべきか。
去りながら、公爵は独り言ちる。
クレイソン公爵は、自分の今の立場が不満だった。
先代の王の甥として生まれた。
先代の王には、長いこと男子が生まれず、このままうまくいけば、自分が今の王の立場だった。
王太子教育も受けていたし、自分は優秀だとの自負があった。
それがどうだ。
結局、王位は継げず、王の右腕にすらなれない。
宰相に顎でこき使われて。
愚かな男爵を焚きつけて、国政が混乱したら自分がおさめ、王位を攫うつもりだった。
もちろん、男爵は切るつもりで。
いつも偉そうにしているメロディア公爵も、めちゃくちゃにしてやりたかった。
くそっ!くそっ!!くそっ!!!
忌々しいあのミレニアも攫ってやろう。
ミレニアとあの婚約者は仲が良いらしい。
仲良くあの世に旅立ってもらうことにしよう。
娘の亡骸を見るメロディア公爵の顔が早く見たいものだ…。
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