犬猿の仲の他国の将軍は敵国王を娶りたい

竜鳴躍

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消えたブルック

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「ブルック、ブルックー?」
「おとうさま?」


「シン様、キィ様。どうされたのですか?」

「ブルック見なかったか?今日は家族で水遊びをしようかと思ったんだが。」

「ああ、今日は暑うございますからね。」

侍従頭は続けた。

「そういえば、エン将軍が飲みに行こうと外へ誘ってました。歩み寄ろうとしているのでしょう。いい傾向ではないですか。」

「そうか…。」


だが、なんか釈然としない。

それが本当なら、いいのだが。





「エン将軍?どういうつもりだ。」

外の飲み屋に誘われて、気がついたら地下室に誘導されていた。


「あなたには少しここに居てもらいます。」

エン将軍は、冷たく言い放つ。
底冷えのする地下室に、声が低く響く。


瞳は複雑な色をして、揺れている。


憎い男なのに悪いやつではない。
そして恩人の孫だった。
私だってシン様が好きなのに。
居場所を掻っ攫われたようで、もやもやする。
少しだけ閉じ込めて意地悪するくらい、許してほしい。

今日だけ、前のようにシン様たちと家族のようにいさせてほしい。


彼はそう、思っていた。
ただそれだけを。

「それでは、宰相様。暫く宜しくお願いします。」

シルバーウルフの宰相に声をかける。

心の整理をしたいと考えていたら、協力してくれた。


「……任せてください。」


ガチャン。


「!?」

エン将軍ごと、そこへ閉じ込める鍵がかけられた。

「宰相殿!?」


ニヤリと口元が歪む。

「フハハハ!! 愚か者め! 誇り高き獣人がいつまでも人間に従うと思うてか!!」


「シリウスが、リーダーになったのか!?」

ブルックが叫ぶ。


「そうよ。ブルック、貴様、この裏切り者の混ざり者め!!お前はクロス王国の王孫だったそうだな!!クロス王国と内通し、シン王を手引して、敗戦に誘導したのだろう!」

「なっ……!!」

「シリウス様こそ我らのリーダー。シン王はシリウス様がもらい受け、この国は我らの手に再び落ちる。あと10分でここは爆破される。貴様らはあの世で仲良く喧嘩すると良い!」


フハハハハと宰相の高笑いが響き、遠くなる。


「クッ……!シンが、キィが危ない!!」


出入り口を閉ざされた地下室で吠える。


「ぁあ、シン様!私はなんてことを!!」


パン!

エン将軍の頬をはたく。

「しっかりしろ! 俺たちは戻るぞ!!考えろ!知恵が働く人間よ!」
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