犬猿の仲の他国の将軍は敵国王を娶りたい

竜鳴躍

文字の大きさ
上 下
10 / 19

面白くない

しおりを挟む
エン将軍は面白くない。

思いの外、馴染んでるこの男。

夫、父親というよりペットだが。 


「おとうさま!いきますよ!」

「ボール!ボール!」

「ははは、キャッチボールが別の競技に見える。」


「……全く絆されて。」

「まあ、言うな。あれは素直だし賢いし従順で可愛い犬じゃないか。」

「その犬に噛まれたんですよ?」

「マーキングらしい。そもそも彼の番にならなければ、他の兵士たちに輪姦されてたのだから、もう責めないでやってほしい。」

「ですけどね。」

子どもの頃からあなたをお慕いしていたんですよ、私も。
そう簡単に割り切れるものではない。


「それはそうと、シルバーウルフ側に不審な動きはないか?」

「……今のところは。」

「彼の兄弟、親族はどうしてる?」

「元々、王は独裁的で後継者として決めた者以外には碌な扱いはしていなかったようです。無論、親族にも。むしろ、爵位と役割を与えられ、シン王に感謝していますよ。」

自分の息子にカース(呪い)と名付け、妻とした人間を殺してしまうような男なら、そうなのかもな。

「ならば、その後継者や母親はどうしてる?」

「大人しくしてますよ。今のところは。」

「そうか。監視は続けてほしい。」






シルバーウルフの宰相として、新しい国でも獣人側の宰相になった男は、気に入らない。


確かに、思ったよりシン王は、獣人に配慮してくれている。

だが、上位に立ちたいという獣の本能が苛立たせていた。

ブルックのペットのような姿も腹立たしい。

我々は犬ではない、誇り高き獣人なのに。




ふと、かつての王の後継者が、ぼやいた疑問が耳に入る。

『シン王とブルックとの間に産まれた子の耳は、何故人間のそれなのだろうか。

他の混血児で尻尾だけ、とか耳だけ獣人の外見を引き継いだ者はいないのに。』


確か、ブルックの母親には身寄りがなく、軍部に突然現れた。

あれは今思えば、獣人だったのだろうか。


もしかしたら、自分たちは初めから仕組まれていたのでは無いだろうか。

疑念が胸に渦巻く。

後継者だった王子、シリウスが影でニヤリと笑った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】何一つ僕のお願いを聞いてくれない彼に、別れてほしいとお願いした結果。

N2O
BL
好きすぎて一部倫理観に反することをしたα × 好きすぎて馬鹿なことしちゃったΩ ※オメガバース設定をお借りしています。 ※素人作品です。温かな目でご覧ください。 表紙絵 ⇨ 深浦裕 様 X(@yumiura221018)

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

未必の恋

ほそあき
BL
倉光修には、幼い頃に離別した腹違いの兄がいる。倉光は愛人の子だ。だから、兄に嫌われているに違いない。二度と会うこともないと思っていたのに、親の都合で編入した全寮制の高校で、生徒会長を務める兄と再会する。親の結婚で名前が変わり、変装もしたことで弟だと気づかれないように編入した、はずなのに、なぜか頻繁に兄に会う。さらに、ある事件をきっかけに兄に抱かれるようになって……。

愛人は嫌だったので別れることにしました。

伊吹咲夜
BL
会社の先輩である健二と達哉は、先輩・後輩の間柄であり、身体の関係も持っていた。そんな健二のことを達哉は自分を愛してくれている恋人だとずっと思っていた。 しかし健二との関係は身体だけで、それ以上のことはない。疑問に思っていた日、健二が結婚したと朝礼で報告が。健二は達哉のことを愛してはいなかったのか?

勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました

BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」 え?勇者って誰のこと? 突如勇者として召喚された俺。 いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう? 俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

好きな人に迷惑をかけないために、店で初体験を終えた

和泉奏
BL
これで、きっと全部うまくいくはずなんだ。そうだろ?

処理中です...