5 / 19
俺の番
しおりを挟む
犬獣人は、群れる。
群れの頭さえ潰せば、俺たちは従順だ。
弱者は強者に従う、それが遺伝子に刻まれている。
てっきり捕虜としてとらえられ、牢に入れられるのかと思いきや、俺たちは城に集められた。
そして、俺は兵士の最前列で膝間づき、新しい王の登場を待つ。
一体、シン王は何を俺たちに伝えるつもりなのか。
しばらくして、仮面の男がエン将軍を伴って現れた。
そして、その後ろには、どうみても獣人の尾をもった幼子が。
ああ、いい匂い。
まさか。
そして、その幼子は。
もし、あのとき。出来ていたとしたら、ちょうどこの位ーーーーーーー。
「俺は、かつての申国の過ちは繰り返さない。そして、シルバーウルフ王国の過ちもなぞらない。種族の違いはあれど、それぞれ足りぬところもあれば素晴らしいところがある。それは個性であって、どの種が優れているとかの優劣ではない。そして、不幸や怨嗟の連鎖もここで断ち切りたい。だから、俺は、シンの民もシルバーウルフの民も平等に扱うし、前王の子や孫や家族親族を皆殺しになどはしない。」
仮面の男は、澄んだ水が響くような声で、俺たちにそう宣言し、仮面を外した。
黒曜石のような眼。知性と気品にあふれた、強い眼差し。
俺の番ーーーーーーーーー。
俺の部下たちがざわつく。
そうだ、キャンプにいたあの子だ。
彼は、俺たちに姿を知られていたから仮面をつけていたのだ。
「この子は俺の子だが、半分は君たちと同じ血を引いている。馬鹿らしいと思わないか?こうして混血児がちゃんと生まれてくる、それこそが俺たちが共存できる証ではないか。」
「シン王!!!!!!!!」
俺は、思わず王のそばへ走った。
「会いたかった、あなたは俺の番。約束したことを覚えていますか!?」
抱きしめようとして、襟に隠れたうなじに俺の噛み痕を見た。
間違いない。
「--------お前は。」
「…おかあさま?」
「子どもの前だ、お前とは後で話そう。」
いなそうとした俺を、子どもの声で気づいてやめ、続ける。
「それでは、各自、これまでどおり国のため働いてくれ。
まずは、奴隷を開放し、保護してきてほしい。混血児が生まれていたら、その子も。
ただし、夫となる獣人と良好な関係を築いているなら、引き裂く必要はない。」
ああ、やっと。やっとまた会えた。
群れの頭さえ潰せば、俺たちは従順だ。
弱者は強者に従う、それが遺伝子に刻まれている。
てっきり捕虜としてとらえられ、牢に入れられるのかと思いきや、俺たちは城に集められた。
そして、俺は兵士の最前列で膝間づき、新しい王の登場を待つ。
一体、シン王は何を俺たちに伝えるつもりなのか。
しばらくして、仮面の男がエン将軍を伴って現れた。
そして、その後ろには、どうみても獣人の尾をもった幼子が。
ああ、いい匂い。
まさか。
そして、その幼子は。
もし、あのとき。出来ていたとしたら、ちょうどこの位ーーーーーーー。
「俺は、かつての申国の過ちは繰り返さない。そして、シルバーウルフ王国の過ちもなぞらない。種族の違いはあれど、それぞれ足りぬところもあれば素晴らしいところがある。それは個性であって、どの種が優れているとかの優劣ではない。そして、不幸や怨嗟の連鎖もここで断ち切りたい。だから、俺は、シンの民もシルバーウルフの民も平等に扱うし、前王の子や孫や家族親族を皆殺しになどはしない。」
仮面の男は、澄んだ水が響くような声で、俺たちにそう宣言し、仮面を外した。
黒曜石のような眼。知性と気品にあふれた、強い眼差し。
俺の番ーーーーーーーーー。
俺の部下たちがざわつく。
そうだ、キャンプにいたあの子だ。
彼は、俺たちに姿を知られていたから仮面をつけていたのだ。
「この子は俺の子だが、半分は君たちと同じ血を引いている。馬鹿らしいと思わないか?こうして混血児がちゃんと生まれてくる、それこそが俺たちが共存できる証ではないか。」
「シン王!!!!!!!!」
俺は、思わず王のそばへ走った。
「会いたかった、あなたは俺の番。約束したことを覚えていますか!?」
抱きしめようとして、襟に隠れたうなじに俺の噛み痕を見た。
間違いない。
「--------お前は。」
「…おかあさま?」
「子どもの前だ、お前とは後で話そう。」
いなそうとした俺を、子どもの声で気づいてやめ、続ける。
「それでは、各自、これまでどおり国のため働いてくれ。
まずは、奴隷を開放し、保護してきてほしい。混血児が生まれていたら、その子も。
ただし、夫となる獣人と良好な関係を築いているなら、引き裂く必要はない。」
ああ、やっと。やっとまた会えた。
1
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説
【完結】何一つ僕のお願いを聞いてくれない彼に、別れてほしいとお願いした結果。
N2O
BL
好きすぎて一部倫理観に反することをしたα × 好きすぎて馬鹿なことしちゃったΩ
※オメガバース設定をお借りしています。
※素人作品です。温かな目でご覧ください。
表紙絵
⇨ 深浦裕 様 X(@yumiura221018)
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。

未必の恋
ほそあき
BL
倉光修には、幼い頃に離別した腹違いの兄がいる。倉光は愛人の子だ。だから、兄に嫌われているに違いない。二度と会うこともないと思っていたのに、親の都合で編入した全寮制の高校で、生徒会長を務める兄と再会する。親の結婚で名前が変わり、変装もしたことで弟だと気づかれないように編入した、はずなのに、なぜか頻繁に兄に会う。さらに、ある事件をきっかけに兄に抱かれるようになって……。

愛人は嫌だったので別れることにしました。
伊吹咲夜
BL
会社の先輩である健二と達哉は、先輩・後輩の間柄であり、身体の関係も持っていた。そんな健二のことを達哉は自分を愛してくれている恋人だとずっと思っていた。
しかし健二との関係は身体だけで、それ以上のことはない。疑問に思っていた日、健二が結婚したと朝礼で報告が。健二は達哉のことを愛してはいなかったのか?

勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました
雪
BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」
え?勇者って誰のこと?
突如勇者として召喚された俺。
いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう?
俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる