聖女の力を搾取される偽物の侯爵令息は本物でした。隠された王子と僕は幸せになります!もうお父様なんて知りません!

竜鳴躍

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ヘルメスの実力

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「うぉおお!」

アテンド商会の力をみさらせえ!


城の中には、操られていない者が避難している。


来るべき決戦に向け、籠城しつつも皆が準備を始めていた。


「装備や衣装はうちが調達します!」

「それならば騎士団が護衛を!」

「ならば、偽装を。慎重に慎重を期すのだ!」




「リリー様、皆様!デビュタントの衣装は僕にお任せください!」

ヘルメスの体が紫色に光る。

ハサミを持ち、布を切断し、物凄い勢いで衣装が出来ていく。




「生徒会長、リリー様。僕たちエスコートされる側は磨かれるのも仕事だよ。」


「えっ、私まで!?」


「悪役令嬢とか令息とか言わせたくないよね!お兄様とスタンリー、チャーリーは……。」

ブラウン王子の視線の先には、陛下や宰相、騎士団長に混じって、大事な人たちが。




「大丈夫、『聖女』の出番がないように、俺たちで片づけるから。」

チャーリーが笑ってくれる。


うん…。





ブラウン王子に伴われて、侍女の皆さんに綺麗に磨いてもらった。

「僕たちがあの場にいても、何も役に立たないよ。だから、僕たちはみんなの『勝利の女神』になろう。」

「女の子じゃないけどね?」

「あら、いいじゃないですか。明日は、みんなで炊き出しをするそうです。私たちもやりましょう。」


「そうだね、僕、チャーリーにご飯作ってあげたい。」




「ふ~~~ん。」


「たっ、たいせつな弟だからねっ!」







その夜は、なかなか寝られなかったけど。

いつの間にか眠りに落ちて、チャーリーと兄弟になったばかりのことを思い出していた。






『あ~ん、あ~~~~ん!』

『お兄様、だいじょうぶ?何があったの?』


『お母様に渡そうと思ったプレゼント…。初めてハンカチに刺繍を刺して、やっとできたのに、風で飛ばされて…。』


庭にある大きな池、薔薇園、どこに行ったのか分からない…。



『大丈夫、お母様はきっとその気持ちだけで嬉しいはずだから。刺繍はまた刺せばいいじゃないか。』


『うん…。』


残念だなぁ。

そう思って、眠って起きたら。


テーブルの上にハンカチが置かれていて。


チャーリーは熱を出して眠っていた。


『ありがとう、チャーリー。夜、寒いのに僕のために…。池に入ったんでしょう?ハンカチを洗濯して、アイロンまで…。』

『リリー、おにいさま。わらって?』



『え?』


『ごめんなさい、よりありがとう、が嬉しい。』



『ありがとう!』


いつもそばで、僕を守ってくれるチャーリー。


「ぼく…、ちゃーりーが、すき…。」










ヘルメスは意外とやるやつだ。

リリーの衣装について、注文をして、自分の服もお願いした。


作業速度が尋常ではなく、アテンド商会はすごい商会だ。


俺たちも俺たちの戦いに向けて、準備をする。


「リリーは聖女の力を使いすぎると魔力枯渇になって気を失ってしまう。眠れば治るとはいえ、戦いの場では無理をしてしまうだろう。聖女の力が有用なのは分かっているが、なるべく使わせたくない。」


「確か文献によれば、聖女と呼ばれた人たちは、総じて献身的な人たちで、短命です。」
大司教が言う。


やっぱり、リリーは駆り出したくない!


「魔力枯渇が原因なら、誰かが魔力を譲渡すれば何とかなるか?」

ベリー王子は、うーんと考えている。


「ベリー王子!」お前は、リリーを愛しているんじゃないのか!


「そりゃあ、リリー様を危険に晒したくはない。だが、現実的にそうなる可能性は高い。魔力譲渡でカバーできるなら、いくらでも魔力を渡そう。王族は魔力が多いからな。」




いつまでも議論は続く。
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