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私の婚約者を発表します
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「貴族の子女の諸君、本日はデビュタントおめでとう。今日から大人の貴族の一員として、君たちが活躍することを願う。民は宝、民のために働くのが貴族である。それを忘れないで欲しい。さて…。」
コア=ラー=ユーカリ陛下は小柄な体を威厳で大きく見せながら、穏やかな表情で会場の子女を見やった。
もう中年に差し掛かるが、若い頃は紅顔の美少年と呼ばれた金髪碧眼で童顔な王の隣には、長身でスラリとした知的美人のカルデラ王妃。
王妃は陛下より2歳年上で、本来は陛下の兄の婚約者だった。
男爵令嬢に悪役令嬢扱いされ、婚約破棄された出来の良い彼女は、クレイ公爵家の令嬢だった。
甥にあたるミスリル同様、銀髪にブルーグレーの瞳は一見冷たく見えるが、本当は暖かい人である。
その王妃は、今、扇子の影で一点を見つめていた。
かつて、自分を陥れた男爵令嬢がそこにいる。
化粧を変えて髪を染めたって、わたくしが気づかないはずはないでしょう?
何よりあの娘は、あなたにそっくりよ。
そう、『聖女』だからとうっかり婚約者候補に入れてしまった夫を諫め、探る様に勧めたのは王妃だった。
陛下と2人、見つめあって、そして息子に合図をした。
「陛下の許可を得ましたので、このお集まりの機会に、私から私の婚約者を発表いたします。」
金髪碧眼だが、王妃に似た知的な容姿の知的な佇まい。
気品あふれる所作で、カーグ王子が前に出た。
スザンナは、鼻を膨らませて、周りの令嬢を蹴散らし、前に一歩出る。
<いよいよだわ…!!>
「私の婚約者は――――――――
ドリス=チェイサー嬢に決定いたしました!」
は???
スザンナは醜く顔を歪めた。
王子が優雅にドリスの前に進み、手をとって口づける。
「……本当に、わたくしを選んでくださったのですね…。」
ドリスは、涙で瞳を潤ませ、涙を拭うために一瞬、眼鏡を取った。
その顔は凛として、誰よりも美しく。
白い水仙のようで。
「あたりまえだ。元々、婚約者は君だったのだ。あとから候補が増えただけで。君は王太子妃教育も終えている。誰より妃に相応しいのは君だ。僕が愛しているのも、君だけだ。」
「酷いですわ!!!私を弄んだのですね!!!!」
わざと可憐に、か弱い乙女のように、スザンナが叫ぶ。
周囲がざわつくが構うことなく、ドリスを後ろに隠し、カーグ王子はスザンナに冷ややかな視線を向けた。
「人聞きの悪い。『聖女』は国が大切にまもらなければならない。他国に奪われないためにも、『聖女』が生まれたならば、王子が娶る、そういう風習がある。だから、元々ドリスだけが婚約者だったところに君も婚約者候補として入って来た。候補者として、私は君ともお茶会で交流はしていたが、君にドレスや宝飾品を送ったことがあっただろうか?エスコートしたことは?二人っきりで会ったことがあったかな?常に侍女や侍従が一緒ではなかった?因みに、ドリスの今日のドレスは私が選んで贈ったものだよ?私色の空色のドレスに黄色いコサージュだろう?私がいつ、君と婚約すると言った?弄ぶだなんて酷いな。」
「『聖女』は王子と結婚するんでしょう?!」
「本当の、『聖女』ならな?お前は聖女を騙った偽物で人殺しと娼婦の娘で平民だ。かつて、陛下の兄や兄の側近を誑かし、全員を破滅させた希代の悪女の娘よ。お前の母は、重ねて先代のマリー=ホワイト侯爵を殺害した重罪人だ。」
会場のどよめきが大きくなる。
母親のキャロラインは青い表情で爪を齧り、ケンは考えが追いついていないようだ。
スザンナ自身も飲み込めないのか、母親を振り返った。
カーグ王子と陛下と王妃は、会場をぐるりと見まわした。
コア=ラー=ユーカリ陛下は小柄な体を威厳で大きく見せながら、穏やかな表情で会場の子女を見やった。
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王妃は陛下より2歳年上で、本来は陛下の兄の婚約者だった。
男爵令嬢に悪役令嬢扱いされ、婚約破棄された出来の良い彼女は、クレイ公爵家の令嬢だった。
甥にあたるミスリル同様、銀髪にブルーグレーの瞳は一見冷たく見えるが、本当は暖かい人である。
その王妃は、今、扇子の影で一点を見つめていた。
かつて、自分を陥れた男爵令嬢がそこにいる。
化粧を変えて髪を染めたって、わたくしが気づかないはずはないでしょう?
何よりあの娘は、あなたにそっくりよ。
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金髪碧眼だが、王妃に似た知的な容姿の知的な佇まい。
気品あふれる所作で、カーグ王子が前に出た。
スザンナは、鼻を膨らませて、周りの令嬢を蹴散らし、前に一歩出る。
<いよいよだわ…!!>
「私の婚約者は――――――――
ドリス=チェイサー嬢に決定いたしました!」
は???
スザンナは醜く顔を歪めた。
王子が優雅にドリスの前に進み、手をとって口づける。
「……本当に、わたくしを選んでくださったのですね…。」
ドリスは、涙で瞳を潤ませ、涙を拭うために一瞬、眼鏡を取った。
その顔は凛として、誰よりも美しく。
白い水仙のようで。
「あたりまえだ。元々、婚約者は君だったのだ。あとから候補が増えただけで。君は王太子妃教育も終えている。誰より妃に相応しいのは君だ。僕が愛しているのも、君だけだ。」
「酷いですわ!!!私を弄んだのですね!!!!」
わざと可憐に、か弱い乙女のように、スザンナが叫ぶ。
周囲がざわつくが構うことなく、ドリスを後ろに隠し、カーグ王子はスザンナに冷ややかな視線を向けた。
「人聞きの悪い。『聖女』は国が大切にまもらなければならない。他国に奪われないためにも、『聖女』が生まれたならば、王子が娶る、そういう風習がある。だから、元々ドリスだけが婚約者だったところに君も婚約者候補として入って来た。候補者として、私は君ともお茶会で交流はしていたが、君にドレスや宝飾品を送ったことがあっただろうか?エスコートしたことは?二人っきりで会ったことがあったかな?常に侍女や侍従が一緒ではなかった?因みに、ドリスの今日のドレスは私が選んで贈ったものだよ?私色の空色のドレスに黄色いコサージュだろう?私がいつ、君と婚約すると言った?弄ぶだなんて酷いな。」
「『聖女』は王子と結婚するんでしょう?!」
「本当の、『聖女』ならな?お前は聖女を騙った偽物で人殺しと娼婦の娘で平民だ。かつて、陛下の兄や兄の側近を誑かし、全員を破滅させた希代の悪女の娘よ。お前の母は、重ねて先代のマリー=ホワイト侯爵を殺害した重罪人だ。」
会場のどよめきが大きくなる。
母親のキャロラインは青い表情で爪を齧り、ケンは考えが追いついていないようだ。
スザンナ自身も飲み込めないのか、母親を振り返った。
カーグ王子と陛下と王妃は、会場をぐるりと見まわした。
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