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【閑話】拘置所で
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なんで私がこんな目に。
私は悪くない。
あの子が私の邪魔をするからじゃない!
雪村火垂への傷害は現行犯で、私は起訴された。
惨めなジャージ。
自由に身繕いできない。
私は、この美貌で世界を席巻する女なの!
面会に現れたのは、知らない女。
品の良さそうな高ブランドの服を着て、スタイルも抜群。
私とは違うタイプの美人。
年齢も同じくらいかしら。
でも、その女が連れている男たちには見覚えがあった。
一人は雪村篝。元夫の弟で、確か実家の旅館を継いだのよね。
私のことを無学だとバカにした男。
あのご両親も今はもういないのかしら。
もう一人は雪村光。
私の元夫。
エリートだった時の輝きはもうない。
「もう我々はあなたに関わらない。実家の弟さんも、あなたとは絶縁するそうだ。あなたに付きまとわれたくないばかりに、弟さんからいただいた迷惑料を火垂を通じてあなたに生活費の足しとして渡していたが、もうないと思ってくれ。」
「はあ?なんでよ!」
「当たり前でしょう?光さんの人生を狂わせて、月くんを苦しめて!うちの火垂を傷つけておいて!」
え?
この美人、篝さんの奥さん?
あの地味ブスなの?
「あんた、なによ!厚化粧しちゃって!ブスのくせに!」
「厚化粧なんてしていません。これは薄いファンデーションに口紅だけです。家族で集まる時は私が炊事を全部していたのよ?年末の掃除もあるんだから、TPOを弁えて、ノーメイクに引っ詰め髪に動ける服でいたけど、普段はこちら。いつもドレスアップしていたあなたがおかしかったのよ。」
「君は罵っていたが、私たちは君のほうがブスだと思っていたよ。今の君は、性格の悪さが滲み出て、醜悪だ。」
「俺も当時は言えなかったが、お前のせいで実家に帰りづらかったよ。美津子さんは、学生時代はミス◯◯大に選ばれ、世界的ミスコンでも準優勝した才色兼備だ。お前がもらえなかった大手芸能事務所から束になるくらいの勧誘を受けて、女優の道もあったのに、篝を選んで、女将になる道を選んでくれた人だよ。それなのに………。俺は恥ずかしかったよ。」
「あなた!」
あの女が!?
「俺は恥ずかしいよ。月を傷つけて、捨てて。プライドがガタガタで、あの時はどうかしていた。お前が憎いあまりにあの子を拒絶して……後悔したよ、週刊誌であの子の半生を知って。別れたあと、虐待の挙げ句に捨てたんだな。あの子は辛い思いをして立ち直った。だから、俺も自暴自棄になるのはもう辞めたんだ。あの子に俺たちはいらない。俺たちもあの子をそっとしておくべきだ。」
「兄さんの働いていた商社がダメになったきっかけは、貴女だって分かってる?貴女が我が物顔で外国の商談に顔を出して失礼なことをしまくったから、信用を失って、大きな商談が潰れたの!だから、成績にケチがついた兄さんは次の働き先がなかったんだよ!」
「篝。いいんだ。俺を支えてくれてありがとう。」
「兄さん。兄さんが立ち直ってくれて嬉しいよ。うちの営業と広報、外国人対応にアメニティ開発。兄さんの手腕でうちも業績が鰻登りで助かる!」
「一人だけ堕ちたわね、蝶子さん。貴女が一生、私たちや月くんに迷惑をかけないよう、貴方の悪業や再犯性はしっかり証言して差し上げますから。」
そう言って、女はハンドバッグから手鏡を取り出すと、私に向けた。
そこには、年齢以上にしわくちゃで、目が吊り上がり、鬼のような人相になった、誰にも見向きされっこない醜悪な老女がいた………。
私は悪くない。
あの子が私の邪魔をするからじゃない!
雪村火垂への傷害は現行犯で、私は起訴された。
惨めなジャージ。
自由に身繕いできない。
私は、この美貌で世界を席巻する女なの!
面会に現れたのは、知らない女。
品の良さそうな高ブランドの服を着て、スタイルも抜群。
私とは違うタイプの美人。
年齢も同じくらいかしら。
でも、その女が連れている男たちには見覚えがあった。
一人は雪村篝。元夫の弟で、確か実家の旅館を継いだのよね。
私のことを無学だとバカにした男。
あのご両親も今はもういないのかしら。
もう一人は雪村光。
私の元夫。
エリートだった時の輝きはもうない。
「もう我々はあなたに関わらない。実家の弟さんも、あなたとは絶縁するそうだ。あなたに付きまとわれたくないばかりに、弟さんからいただいた迷惑料を火垂を通じてあなたに生活費の足しとして渡していたが、もうないと思ってくれ。」
「はあ?なんでよ!」
「当たり前でしょう?光さんの人生を狂わせて、月くんを苦しめて!うちの火垂を傷つけておいて!」
え?
この美人、篝さんの奥さん?
あの地味ブスなの?
「あんた、なによ!厚化粧しちゃって!ブスのくせに!」
「厚化粧なんてしていません。これは薄いファンデーションに口紅だけです。家族で集まる時は私が炊事を全部していたのよ?年末の掃除もあるんだから、TPOを弁えて、ノーメイクに引っ詰め髪に動ける服でいたけど、普段はこちら。いつもドレスアップしていたあなたがおかしかったのよ。」
「君は罵っていたが、私たちは君のほうがブスだと思っていたよ。今の君は、性格の悪さが滲み出て、醜悪だ。」
「俺も当時は言えなかったが、お前のせいで実家に帰りづらかったよ。美津子さんは、学生時代はミス◯◯大に選ばれ、世界的ミスコンでも準優勝した才色兼備だ。お前がもらえなかった大手芸能事務所から束になるくらいの勧誘を受けて、女優の道もあったのに、篝を選んで、女将になる道を選んでくれた人だよ。それなのに………。俺は恥ずかしかったよ。」
「あなた!」
あの女が!?
「俺は恥ずかしいよ。月を傷つけて、捨てて。プライドがガタガタで、あの時はどうかしていた。お前が憎いあまりにあの子を拒絶して……後悔したよ、週刊誌であの子の半生を知って。別れたあと、虐待の挙げ句に捨てたんだな。あの子は辛い思いをして立ち直った。だから、俺も自暴自棄になるのはもう辞めたんだ。あの子に俺たちはいらない。俺たちもあの子をそっとしておくべきだ。」
「兄さんの働いていた商社がダメになったきっかけは、貴女だって分かってる?貴女が我が物顔で外国の商談に顔を出して失礼なことをしまくったから、信用を失って、大きな商談が潰れたの!だから、成績にケチがついた兄さんは次の働き先がなかったんだよ!」
「篝。いいんだ。俺を支えてくれてありがとう。」
「兄さん。兄さんが立ち直ってくれて嬉しいよ。うちの営業と広報、外国人対応にアメニティ開発。兄さんの手腕でうちも業績が鰻登りで助かる!」
「一人だけ堕ちたわね、蝶子さん。貴女が一生、私たちや月くんに迷惑をかけないよう、貴方の悪業や再犯性はしっかり証言して差し上げますから。」
そう言って、女はハンドバッグから手鏡を取り出すと、私に向けた。
そこには、年齢以上にしわくちゃで、目が吊り上がり、鬼のような人相になった、誰にも見向きされっこない醜悪な老女がいた………。
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