人気俳優は表情筋が死んでいる人気声優の彼が好き

春山家へようこそ

「春山家へようこそ。」

閑静な住宅街の広い庭付き一軒家。
着替えと身の回りのものを大きなトランクに詰めて、緊張は胸に詰めて。

ドアを開くと人の良さそうな小柄な夫人と、春山薫助監督、春山豊マネージャー。

そして……


「ようこそ、夏目さん。」


白いだぼだぼＴシャツがよく似合う、冬木香月。

だぼだぼだから、華奢に見える。

表情は無だけど、首かしげかわいい。


「僕もお世話になりますっ。夏目太陽のマネージャーの秋口小麦です！」

「お前は呼んでないんだが？」

秋口をみて、とたんに機嫌が悪くなった豊氏は、意外とガラが悪いな？


「すみません………。」

「あんたは謝らんでいい。お前は何が狙いだ！親父のセル画か！昔の脚本か！ファンほど始末におえねえ！」

「殺生な！みるだけ、ちょっとだけだからあ！それに連絡役の僕がいないと、夏目くんが仕事たいへんなのです！」

「この家のものがなくなったら、お前を疑うからな。写真を撮ったらデータを全消去してやるからな。」

「ひい！」

「秋口、豊さんが正しい。心のフィルターに焼き付けるだけにしとけ。」

「しょぼん。」

「しょぼんなんてリアルで口にするやつ初めて見た。しかも成人男子で。」

「秋口は知能は高いはずなんですが、天然のぶりっ子なんです。」
ほんと、すみません。


「夏目さん！お部屋、案内します！」


冬木に手を引かれ、連れていかれた部屋は。


「ようこそ、僕の部屋です！」


「え。」



彼の部屋だった。


なお、秋口は豊さんの部屋に拉致されたらしい。