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そうだ、同居をしてみよう
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「勇者テンドー・ユーキよ、聖女たる我が王女とともに魔王の討伐を頼んだぞ!」
「お任せください。」
天童勇気は自分の幸運に感謝していた。
学校の成績は悪くて、このままでは留年か退学になっていた。
このままじゃ碌な人生は送れなかっただろう。
イライラしていつも地味な黒影を虐めていたが、苛められていることも気付かない男で余計にイラついた。
しかもあいつは、自分では気づいていないが、ちゃんとすれば俺よりよっぽど見栄えが良い男だ。
隠れイケメンだって密かに女子にモテていたのも気にくわない。
そんなアイツから立場を奪えたことで、満足だった。
耳にあけた金のピアスに金髪に染めた髪は、この世界では高貴な人間に見えたらしい。
尊大な態度であいつをけなせば、誰もが俺の方が勇者だと信じた。
聖女(と言い張っている)王女も俺に惚れている。
(あっちの世界よりイイ女がより取り見取り。それにみんなが俺をたたえる!金は王様からたんまりもらったし、異世界転移最高だぜ!)
くくくっ。
勇者は俺にこそふさわしい。
魔王の討伐くらい、簡単さ。
あいつが勇者なんてやれるくらいなんだから。
あいつより俺の方が強いんだからな。
「きゃー!勇者様よー!」
「素敵!一晩でいいから抱いてくれないかしら!」
くくく……。
この世界は俺の思うがまま!
城から追い出されたあいつは、今頃どうしてるかな…?
苛めがいがない奴だったが、流石にあいつも今頃は絶望してるだろう。
はははっ。
「はーい、休憩します。休憩の後は冬木さん夏目さん入ってください~。」
うわぁ、凄い。声優さんってすごいなー。
天童勇気役の東雲旭さんって、もうアラフィフのダンディな人なのにあんなに若々しい声で…。
聖女・クランベリー王女役の葛葉まなみさんもベテランで…。
「お疲れ様です。すごかったです!」
「いやあ、嬉しいな。飛ぶ鳥を落とす勢いの俳優さんにそんなに褒められちゃうと。『声優』を格下に見てるような嫌な人も中にはいるんだよね。」
東雲さんはどこかをチラリとみる。
「俺は声優は素人ですから。皆さんの足を引っ張らないように頑張ります!」
「ふふ、夏目くんって意外と可愛いところがあるんだね。黒影洸に通じるところがあるね。」
「そうですかねー?でも、格下に見てるなんて人もいるんですかね?声だけの演技って難しいじゃないですか。声に全部感情をのせないといけないわけだから。それに、年齢も性別さえ違う役だってやることあるんでしょう!」
「そうだね。僕も若い頃は女の子の役もやったことあるよ?」
「えっ…??ほんとに?すごいっ!」
「ふふ、本当に君かわいいね。僕が指導をしてやろうか?」
「ええーっ、本当ですか!」
フレンドリーな骨ばった手が、俺の背中に回った。
ん?ちょっと手の位置が……
「夏目、さん!」
冬木さんに後ろから呼ばれて振り向いた。
「指導なら、僕が」
「収録再開でーす!」
指導…。本当に彼が?俺に?
「うわっ…かわ…きれ…じゃなくて。カッコいいよ!」
「そ、そうかな?」
街の店でこの世界の衣服を買い、身を整える。
簡単な皮の鎧を着て。ロングソードを持って。
「ありがとう!」
「うん、じゃあこれから冒険者登録をしに行こう。」
「はい!」
「目的は魔王討伐だけど、無理せず行こうな!特にこの時期、自分の実力を過信して南の森に入るもんならやばいことになる。」
……?なんか変だな。
冬木さんにしてはセリフに深みを感じない。
「冬木さん、何かありましたか?」
「い、いいえ。何にも?」
「あ、あの。」
セリフ直しの合間に話しかけたら、冬木さんは真っ赤になって。
その収録のあと、監督に呼び止められた。
「ええーーっ、住み込みで声優の特訓?」
願ってもないけど。
「僕も、住んでいるんだ。」
え、春山監督のおうちに冬木さんも???
つまり、え、同居?!
どうきょぉ!?
「お任せください。」
天童勇気は自分の幸運に感謝していた。
学校の成績は悪くて、このままでは留年か退学になっていた。
このままじゃ碌な人生は送れなかっただろう。
イライラしていつも地味な黒影を虐めていたが、苛められていることも気付かない男で余計にイラついた。
しかもあいつは、自分では気づいていないが、ちゃんとすれば俺よりよっぽど見栄えが良い男だ。
隠れイケメンだって密かに女子にモテていたのも気にくわない。
そんなアイツから立場を奪えたことで、満足だった。
耳にあけた金のピアスに金髪に染めた髪は、この世界では高貴な人間に見えたらしい。
尊大な態度であいつをけなせば、誰もが俺の方が勇者だと信じた。
聖女(と言い張っている)王女も俺に惚れている。
(あっちの世界よりイイ女がより取り見取り。それにみんなが俺をたたえる!金は王様からたんまりもらったし、異世界転移最高だぜ!)
くくくっ。
勇者は俺にこそふさわしい。
魔王の討伐くらい、簡単さ。
あいつが勇者なんてやれるくらいなんだから。
あいつより俺の方が強いんだからな。
「きゃー!勇者様よー!」
「素敵!一晩でいいから抱いてくれないかしら!」
くくく……。
この世界は俺の思うがまま!
城から追い出されたあいつは、今頃どうしてるかな…?
苛めがいがない奴だったが、流石にあいつも今頃は絶望してるだろう。
はははっ。
「はーい、休憩します。休憩の後は冬木さん夏目さん入ってください~。」
うわぁ、凄い。声優さんってすごいなー。
天童勇気役の東雲旭さんって、もうアラフィフのダンディな人なのにあんなに若々しい声で…。
聖女・クランベリー王女役の葛葉まなみさんもベテランで…。
「お疲れ様です。すごかったです!」
「いやあ、嬉しいな。飛ぶ鳥を落とす勢いの俳優さんにそんなに褒められちゃうと。『声優』を格下に見てるような嫌な人も中にはいるんだよね。」
東雲さんはどこかをチラリとみる。
「俺は声優は素人ですから。皆さんの足を引っ張らないように頑張ります!」
「ふふ、夏目くんって意外と可愛いところがあるんだね。黒影洸に通じるところがあるね。」
「そうですかねー?でも、格下に見てるなんて人もいるんですかね?声だけの演技って難しいじゃないですか。声に全部感情をのせないといけないわけだから。それに、年齢も性別さえ違う役だってやることあるんでしょう!」
「そうだね。僕も若い頃は女の子の役もやったことあるよ?」
「えっ…??ほんとに?すごいっ!」
「ふふ、本当に君かわいいね。僕が指導をしてやろうか?」
「ええーっ、本当ですか!」
フレンドリーな骨ばった手が、俺の背中に回った。
ん?ちょっと手の位置が……
「夏目、さん!」
冬木さんに後ろから呼ばれて振り向いた。
「指導なら、僕が」
「収録再開でーす!」
指導…。本当に彼が?俺に?
「うわっ…かわ…きれ…じゃなくて。カッコいいよ!」
「そ、そうかな?」
街の店でこの世界の衣服を買い、身を整える。
簡単な皮の鎧を着て。ロングソードを持って。
「ありがとう!」
「うん、じゃあこれから冒険者登録をしに行こう。」
「はい!」
「目的は魔王討伐だけど、無理せず行こうな!特にこの時期、自分の実力を過信して南の森に入るもんならやばいことになる。」
……?なんか変だな。
冬木さんにしてはセリフに深みを感じない。
「冬木さん、何かありましたか?」
「い、いいえ。何にも?」
「あ、あの。」
セリフ直しの合間に話しかけたら、冬木さんは真っ赤になって。
その収録のあと、監督に呼び止められた。
「ええーーっ、住み込みで声優の特訓?」
願ってもないけど。
「僕も、住んでいるんだ。」
え、春山監督のおうちに冬木さんも???
つまり、え、同居?!
どうきょぉ!?
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