17 / 75
つうしんぼ
しおりを挟む「賀茂さんからの報告だと、隼人の友人の宮田君は、悪魔崇拝の教団に関わっていると考えるのが妥当だな」、手にしていた皇宮警察本部からの報告書を正人は机の上に置いた。
「そうじゃな、知識なしにいきなり上位悪魔は、呼び出せんからな」と、長老は棚の上で丸まって寝ながら薄ら目を開ける。
「DDのデータベースとの照合で、最近世界中で活発に活動している教団がある。日本でも活動を始めているのかも知れないわ」と、茜はパソコンの画面を見ながら話した。
「茜、どこの教団か分かるか?」
「黒薔薇十字軍、アメリカを本拠地に活動している教団」
「大事にならなければ良いが、俺達はいつでも動けるよう引き続き情報収集に専念するから」と、正人は煙草を加え給湯室に入って行った。
賀茂は、宮田宅で押収した宮田千尋のパソコンの情報解析が出来たので、DDへは報告書で知らせて来た。彼は、黒薔薇十字軍のホームページにアクセスし、集会に参加していた形跡があった。
誰もが持つ不安を材料にしたり、強い力が手に入るなどの文句で若者を中心に勧誘しているサタニズム教団、実際に怪事件を起こしたり悪魔を召喚させたなどの報告がDD本部にも入っていた。
隼人には、何故、彼がこのような教団に関心を持ったのか分からなかった。
宮田君に友人が少なかったのは事実だ。
彼とは大学で知り合ったが、それまでの彼を知らない。
もしかしたら、俺の知らない悩みや苦悩があったのかも知れないな。
友人気取りで、本当は彼の事を理解出来ていなかったのかも。
自分の机に着席し塞ぎがちに考え込む隼人に、給湯室から出て来た正人が声を掛けた。
「悩むなよ、隼人、君に責任がある訳では無いんだから」
「そうですが、友人と思っていたのに。悩んでいるなら話をして欲しかった」
ドカッと勢いよく正人は自分の席に座ると、「誰しも話せない事はあるからな」
「そうですよね、悩むより宮田君が見つかるよう、今は僕が出来る事をするしかないですよね」
「そうだよ、それで良い」
「今日は、会議なのですよね? 桜は、参加しなくて良かったのですか?」
「ああ、今日も賀茂さんのサポートに行っているから参加出来なかったんだ」
「その方が、都合は良いのじゃ」
「そうよね、会議の本題はこれからだからね💛」
長老と茜は、何かを企んでいる。特に茜の獲物を狙うような目に隼人は、何か嫌な予感がして額から汗が滲み出た。
「何か、不穏な空気が流れていますけど。本題とは何ですか?」
「本題は、お前と桜の事じゃ」と、寝ていた長老が正人の机の上に座った。
「桜と僕の事ですか・・・」
「凄く、重要な事なのよ。隼人君!」
隼人は正人の方を見たが、彼はわざと目を逸らした。長老と茜が中心になってこれから始まる本題に突入する。
な、何を話し合うの?
正人さんは目を背けるし、茜さんと長老の目が真剣で怖い。
嫌な感じしかしない雰囲気に隼人は、そそくさと事務所から逃げ出したくなった。
「薄々、気が付いていると思うけど、桜はあなたに気がある」
「僕にですか。それは、茜さんの女の勘か何かですか?」
「簡単な事じゃよ、小僧。命がけで自分を助けてくれた男性に一目置くのは当然じゃろ。惚れられたのじゃよ」
「桜が、俺に・・・、いや、僕に惚れたのですか?」
「そうよ、本人に直接聞いたら否定するでしょうが、私の見立てでは本気ね♪」
「冗談はやめてくださいよ、長老も茜さんも」
「だからこそ、君には理性をしっかりと保ってほしいんだよ」と、さっきまで自分には関係ない素振りをしていた正人が口を開いた。
「僕には、良く分かりませんので、ちゃんと説明してくださいよ」
「桜にはね、トラウマがあるの。幼い時に負った心の傷、多分、それが原因で今まで異性を遠ざけ恋愛を避けていたようなの」
「そうじゃな、知識なしにいきなり上位悪魔は、呼び出せんからな」と、長老は棚の上で丸まって寝ながら薄ら目を開ける。
「DDのデータベースとの照合で、最近世界中で活発に活動している教団がある。日本でも活動を始めているのかも知れないわ」と、茜はパソコンの画面を見ながら話した。
「茜、どこの教団か分かるか?」
「黒薔薇十字軍、アメリカを本拠地に活動している教団」
「大事にならなければ良いが、俺達はいつでも動けるよう引き続き情報収集に専念するから」と、正人は煙草を加え給湯室に入って行った。
賀茂は、宮田宅で押収した宮田千尋のパソコンの情報解析が出来たので、DDへは報告書で知らせて来た。彼は、黒薔薇十字軍のホームページにアクセスし、集会に参加していた形跡があった。
誰もが持つ不安を材料にしたり、強い力が手に入るなどの文句で若者を中心に勧誘しているサタニズム教団、実際に怪事件を起こしたり悪魔を召喚させたなどの報告がDD本部にも入っていた。
隼人には、何故、彼がこのような教団に関心を持ったのか分からなかった。
宮田君に友人が少なかったのは事実だ。
彼とは大学で知り合ったが、それまでの彼を知らない。
もしかしたら、俺の知らない悩みや苦悩があったのかも知れないな。
友人気取りで、本当は彼の事を理解出来ていなかったのかも。
自分の机に着席し塞ぎがちに考え込む隼人に、給湯室から出て来た正人が声を掛けた。
「悩むなよ、隼人、君に責任がある訳では無いんだから」
「そうですが、友人と思っていたのに。悩んでいるなら話をして欲しかった」
ドカッと勢いよく正人は自分の席に座ると、「誰しも話せない事はあるからな」
「そうですよね、悩むより宮田君が見つかるよう、今は僕が出来る事をするしかないですよね」
「そうだよ、それで良い」
「今日は、会議なのですよね? 桜は、参加しなくて良かったのですか?」
「ああ、今日も賀茂さんのサポートに行っているから参加出来なかったんだ」
「その方が、都合は良いのじゃ」
「そうよね、会議の本題はこれからだからね💛」
長老と茜は、何かを企んでいる。特に茜の獲物を狙うような目に隼人は、何か嫌な予感がして額から汗が滲み出た。
「何か、不穏な空気が流れていますけど。本題とは何ですか?」
「本題は、お前と桜の事じゃ」と、寝ていた長老が正人の机の上に座った。
「桜と僕の事ですか・・・」
「凄く、重要な事なのよ。隼人君!」
隼人は正人の方を見たが、彼はわざと目を逸らした。長老と茜が中心になってこれから始まる本題に突入する。
な、何を話し合うの?
正人さんは目を背けるし、茜さんと長老の目が真剣で怖い。
嫌な感じしかしない雰囲気に隼人は、そそくさと事務所から逃げ出したくなった。
「薄々、気が付いていると思うけど、桜はあなたに気がある」
「僕にですか。それは、茜さんの女の勘か何かですか?」
「簡単な事じゃよ、小僧。命がけで自分を助けてくれた男性に一目置くのは当然じゃろ。惚れられたのじゃよ」
「桜が、俺に・・・、いや、僕に惚れたのですか?」
「そうよ、本人に直接聞いたら否定するでしょうが、私の見立てでは本気ね♪」
「冗談はやめてくださいよ、長老も茜さんも」
「だからこそ、君には理性をしっかりと保ってほしいんだよ」と、さっきまで自分には関係ない素振りをしていた正人が口を開いた。
「僕には、良く分かりませんので、ちゃんと説明してくださいよ」
「桜にはね、トラウマがあるの。幼い時に負った心の傷、多分、それが原因で今まで異性を遠ざけ恋愛を避けていたようなの」
0
お気に入りに追加
560
あなたにおすすめの小説

しっかり者で、泣き虫で、甘えん坊のユメ。
西友
BL
こぼれ話し、完結です。
ありがとうございました!
母子家庭で育った璃空(りく)は、年の離れた弟の面倒も見る、しっかり者。
でも、恋人の優斗(ゆうと)の前では、甘えん坊になってしまう。でも、いつまでもこんな幸せな日は続かないと、いつか終わる日が来ると、いつも心の片隅で覚悟はしていた。
だがいざ失ってみると、その辛さ、哀しみは想像を絶するもので……

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる