【完結】再会したらあれっ?~王子の初恋の美少女はイケメン男子でした~

竜鳴躍

文字の大きさ
上 下
16 / 75

長期休暇はモンスターハント

しおりを挟む
 小指を絡める約束方法など知るはずもなく、ローズは停止する。だが、冨岡が口にした『大人と子どもではなく』という言葉は彼女の心を確実に揺らしていた。

「子ども扱いしないってほんと?」

 ローズに問いかけられた冨岡は優しく頷く。

「約束に大人も子どももありませんよ。俺とローズお嬢様の約束です」
「じゃあ、私に押し付けるようなことしない?」

 その時ローズが言葉にしたのは素直な気持ちなのだと、冨岡は気づいた。年齢に相応しい話し方と甘えたような声色。それが演技であればすぐさま女優になれるだろう。全米が涙することも、権威ある女優賞を受賞することも間違いない。
 その言葉から察するに、これまで様々な大人に『理想のお嬢様』を押し付けられてきたことは間違いない。
 彼女には彼女なりの理由がありそうしているのだ、と薄々気づいている冨岡はローズの右手に小指を近づけた。

「押し付けるようなことはしないと約束しますよ。ほら、ローズお嬢様も小指を出してください」
「小指・・・・・・これは一体なんなの?」
「あ、そっか。これは俺の国で約束を交わす時にする、儀式のようなものです」
「儀式?」
「そうですよ、小指で固い約束を交わすんです。これは重い重い儀式ですから、約束を破ると針を千本飲まなければなりません」

 冨岡がそう説明するとローズは左手で右手の小指を握って隠す。

「そんなことしたら死んじゃうじゃない!」
「ええ、命がけの約束です」

 想像していたよりも彼女が大きく反応したことで、思わずにやけそうになるのを我慢する冨岡。決して馬鹿にしているわけではなく、ローズを子どもらしく可愛いと思ってしまったのだ。
 そんなローズは少し怯えた表情で言葉を返す。

「野蛮過ぎないかしら、あなたの国」
「それほど約束を大切にする国なんです。そんな国から来たこんな俺との約束なら安心でしょう? 俺はお嬢様に何かを押し付けるようなことはしません。だから、俺にお嬢様と話す時間をください。約束です」

 再び冨岡はローズとの指切りを試みる。
 ここまで驚いてばかりのローズだったが、幼いなりに冨岡がまっすぐ自分と向き合ってくれていると気づき小指を絡めた。

「約束を破ったら本当に針を千本飲むのね?」

 慎重に確認を怠らないローズ。考えるまでもなく、冨岡は頷いた。彼の根底には『ホース公爵の後ろ盾を得るため』という目的はあったが、今は『ローズの話を聞きたい』と心から思っている。『困っている人がいれば助けられる人間であってくれ』という源次郎の言葉が冨岡の行動に大きく影響していた。
 
「もちろんですよ」
「私は公爵家の娘よ? 針を用意することなんて簡単なんだから」
「約束は互いにですから、ローズお嬢様が飲むことになるかもしれませんよ?」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

しっかり者で、泣き虫で、甘えん坊のユメ。

西友
BL
 こぼれ話し、完結です。  ありがとうございました!  母子家庭で育った璃空(りく)は、年の離れた弟の面倒も見る、しっかり者。  でも、恋人の優斗(ゆうと)の前では、甘えん坊になってしまう。でも、いつまでもこんな幸せな日は続かないと、いつか終わる日が来ると、いつも心の片隅で覚悟はしていた。  だがいざ失ってみると、その辛さ、哀しみは想像を絶するもので……

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

処理中です...