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新エルグランド編

こんなはずじゃなかった……。

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ポラリス……いや、ポラリス様は貧しい人でも生活をしていけるように、政治をしているようだ。


正式な王位継承の手続きはまだだが、執務もこなしているし、すぐに陛下になるだろう。
そして、その隣にはスターライト公爵の令息がいて、将来の宰相として実質的に動いていると聞く。

ポラリスのために18年間も令嬢として生きた麗人は市井でも人気で、エドワードとの婚約破棄の一幕は大衆演劇の題材にもなっているらしい。




手に職をつけるために教会で手習いをしながら、刺繍や小物を作って小銭を稼ぐ日々。

まだ生活は安定しない。

侍女もいない、豪華な服も着られない、そんな生活で肌もぼろぼろになり、年齢より若々しさを保っていた美貌は数日でおばさんになった。


……でもそのおかげで、誰も私があの女王だったとは思わない。

父は気が狂って、小屋ともいうべき今の家に押し込めている。

あの調子では長くは生きないかもしれない。



教会の炊き出しの手伝いをしながら、「今日はお肉が入っているのね。」とつぶやいた。

「お城でもパーティーがあるっていうの。ポラリス様が正式に王子となられてから初めて主催するパーティーだからお祝いだって、国から配給があったのよ。おすそわけですって。」




私が女王だったとき、何をしていただろう。

父が、貧しい者や出来の悪い者を抱えておくだけ、予算の無駄だ、そんなもの売り飛ばしてしまえっていつも言ってて。

ちっともみんなの生活のことなんて考えたこともなかった。

父や周りの人たちが儲かる様に、父の言いなりになっていたわ。


それに、私は悪い女。


私のせいで媚薬で壊れたミリムは、今では娼婦に堕ちたと聞く。

グリンの尊厳を奪い、道具のように扱い、エドワードも…。






初めは、ただ。アポロ様が好きだった。手に入れたかった。自分が妃になりたかった。

年齢が近い高位貴族の女性はそんなに数はいなくて、我が家は昔、悪いことをして難色を示されていたから不利で。

だから一人ひとり、別の貴族の男性をあてがってやったの。

最後の一人になれば選んでくれると思ったのに、隣国から王女が来るなんて。


既成事実を作って、無理やりにでも妃になりたかった。



でも、どんなにしても振り向いてもらえなかった。


アポロが死に、次の私の欲望は、みんなに敬われることだった。

もてはやされ、敬われ、傅かれる。


それが心地よくて。




全てを我が物に。




ああ、だから。だから破滅したんだ。



食事を貰って小屋に帰ると、父親だったものに当たり散らかされる。

せっかくもらったスープが、地面に落ちた。
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