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スネイク伯爵はほくそ笑む

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「……以上が事の顛末だ。」


スネイク伯爵はジョーから報告を受けた。
ジョーの持つ魔道具には、ありありと映し出されている。


自分が雇った暗殺者の二人組がスターライト公爵とアローラを確かに殺害している。

そして、向こうの騎士……赤毛の男が駆けつけ、二人を始末したようだ。




「まあ、あの二人が返り討ちに会ったのは計算外だが、公爵とその息子を消せたのならいいだろう。」

いずれ処分しようと思っていた奴らだ。



「国際裁判は予定通り行われるんだったな。」


「ああ、各国の国王に依頼したのだ、一度申請が通れば撤回はできん。だが、愉快だな。証拠を失い、どうやって言い分を通すのか。全く面白い。あとは、あのポラリスを始末できれば一番良かったんだが。」


「点々と居場所を変えているようですね。捕まえるのは至難の業かと。」


「まあいいだろう、私の勝ちも同然だ。」




「では、私はこれで。」





転移でスネイク伯爵の下を去り、ジョーは秘密の小屋に向かった。


幾重にもかけた結界。




その中に、薄汚れた侍女と兵士が拘束されている。

その腕には針が刺さり、点滴で無理やりに栄養を流し込んでいた。

ジャンにやられた二人は、返り討ちにあったが退避した。

それを捕まえたのだ。

スネイク伯爵に見せた映像は、やられるところで止めていた。






「ひぃぃっ!!」

2人は短い悲鳴をあげる。


「……お前たちが憎い。俺の大事な、大切な、可愛い妹を……。お前たちが殺した。大事な裁判がある。出番まで、大事に大事に生かしてやる。ふふふ、お前たちは大事な証人だからな。」


「ひぃいいいいいいいいい!!!!!!!!」


2人には、決して偽証ができない、自死も自傷もできない、そういう魔法がかけられていた。
2人の舌に、魔法で刻まれた陣は、専門の者が見れば、彼らの発言が正しいことが証明できるだろう。


暗闇にルビーのような目が光り、禍々しい。


ジョー、いやジョニーはこの日のために全てを捨てた。


………中には得たものもあるが。それは、この復讐のための人生の過程だった。


全てが終わった時、自分がどうなってしまうのか分からない。

だが、伯爵を騙し、出し抜いて、着々と整ってきた。




余計なことも全部言ってやるといい。

きっとこいつらは伯爵に頼まれて、うんと酷いことをしてきたはずだ。


そして、みんなで相応の罰を受けるだろう。



怒りのまま、憎しみのまま、痛めつけることはやろうと思えばできる。

だが、望む結末のため、王太子になるはずだった兄は耐える。






あの日、燃やした証拠書類はコピー。

現物は金庫にあるまま。

だから、陛下は気づいたはずだ。



俺が、ポラリスのために、アレクサンドラとアポロのために、憎い男の懐に入り込んでいることを。
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