虐げられた令息は盗賊に救われる

ジャンとともに

どこにでもいる平均的な侍女は、王の部屋を見渡した。

くるりと回り、こちらに近寄ってくる。


「いる。ここ。」



なんでっ！



見ると、汗で絨毯に染みが出来ている。


ジャンのかけた魔法は薄くなり、もうすぐ切れてしまう。


部屋の外へ！


目の前に刃が過ぎた。



「本当だ。匂う。魔法で消えているな。」

兵士姿の男が鼻をクンとさせた。



「逃げろ、私が守る。」「私も戦う！」
公爵とアローが剣を抜いた。

そして、魔法が切れる。


「お貴族に負ける俺じゃねえ！」

「ああっ！」

強靱に公爵が深く斬られ、アローも右手を斬られた。


「お父様！お兄様！」

叫びながら、かけよりたい気持ちを堪えて妃殿下と逃げる。

「逃がすかあ！」

ナイフを両手に持ったメイドが走ってくる。



お兄様は左手で男の攻撃をなんとか耐えている。

「なかなかやるな！いたぶりがいがある。」
「ふっ、私は両利きなんだ！」
「だが、素人だ！」


「お兄様！」

目の前で兄が血の海に沈む。

なんでっ。


僕さえいなければ。



女の刃が迫り、お祖母さまと二人覚悟した。


「ぐああっ！」

突然、女が吹き飛ぶ。


衝撃魔法にあたった？



「ポラリス!!」
赤毛の愛しい人。

「ジャン!!」

ジャンは倒れている二人を見て、敵を目で射貫いた。


「くっ！お前もやってやる！」
二人がジャンに向かう。


「身体強化、一閃。」


二人が吹き飛ぶ。


「くうっ！まあよい、二人は始末した。退くぞ！」





「お父様！お兄様！」

駆け寄るポラリスの瞳が輝く。

血の海の二人に光は及び、そして―――――