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鏡が割れた side ルティ

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鏡が割れた。


鏡から滲み出ていた黒いものも霧散した。


埃だらけで鏡の破片が散乱した母の部屋で、ルティはしゃがみこんだ。



「はは…。あはは…。」


「ルティ。」

レオはルティを抱きしめる。



「うっ、うぅぅ。」




過去と決別できた気がする。

自分はカルマン=アップルではない。

タルト=アップルも、マジョリカ=アップルも、そしてウイッチ=アップルも自分とは関係ない。


既に二人はこの世にはなく、残る一人もすぐに処刑されるだろう。


それだけのことをした。



そして、ウイッチの悪しき野望を止めるため。

自分は役に立てたのだ。




「小さい頃…。ウイッチとこの部屋に忍び込んだことがある。お父様を鏡の前に置いて、お母様はお父様の髪を切ってらした。」

もしかしたら、元々悪い人だったのかもしれないが、母のせいで父はますます歪んでいったのかもしれない。

今思えば、父に呪いをかけていたような気がする。

「うん。」


「ウイッチは綺麗な鏡だって。でも私は、なんだか恐ろしかった。だからかな、母は私を愛してくれなかった。でもきっとそれでよかったんだ。『魔女』になんて愛されるものじゃない…。」


「うん。」


「でもきっと、マジョリカはタルトを愛していたんだよ。それだけは真実だろう。だってあれほど、自分が一番じゃなきゃ気が済まない人が、陛下を狙わないで公爵家の、しかも後継じゃない弟の方を狙うわけがない。そしてタルトもマジョリカを愛してたんだ。だってこの部屋にカギを掛けて、お母様にしか開けられないようにしたのはお父様自身だもの…。」


父親もあんなんで、母親も妹も魔女で、最悪な家族だったけれど。

愛があって生まれたのだということだけは、信じていてもいいよね。



「さよなら、家族だった、人たち。」

「うん。」









―――――――その頃城では、ウイッチが老婆になり果てていた。


「『魔女』は老いを魔道具に貯めて転生を繰り返すからね。魔道具が壊れればもう転生もできないし、若さも保てないだろう。もう終わりだ。大人しく処刑されろ。」


周囲は近衛兵が迫っている。

アイスノンに言われて、ウイッチは激高した。


「私が死んでもコイツだけは幸せにするものか!ジョエル様とお前が結婚するなんて許さない!」

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