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聖女とその妹
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「サマンサ様!」
「まあ!」
馬に乗ったケントを見て、サマンサは驚いた。
何故なら、その馬には妹のユーリカも乗っている。
「どうしたのですか?ユーリカまで。」
「国の一大事なの、お姉さま。あのウイッチが、処刑を逃れて悪い『魔女』になって帰って来たのよ!ジョエル様のお妃になろうとして、今、お城にいるの…!」
「『魔女』!?嘘でしょう?そりゃあ私もあの人の罠にかかって辛い思いをしましたけど、『魔女』なんてまだ存在していたっていうの…!」
ケントはサマンサの手をそっと握りしめた。
「よい魔女の末裔が言ったそうです。魔女の罠にかかってもなお気高き心を失わなかった者が聖女だと。聖女がよき魔女を助けてくれるのだと。私には、あなたがそうだとしか思えない!きっと、『魔女』は邪魔な令嬢たちが儚くなるように呪いをかけていたのでしょう。しかし、貴方は跳ね返した。それはきっとあなたが聖女だからだと信じています。」
「でも……。」
「まずは中に入れてください。司祭様に話を…。そして後からスノウ様とエリム様も来ます。傷ついた善き魔女も一緒のはず。彼らも中に、お願いします。」
「分かりましたわ。」
ケントは司祭に挨拶をし、司祭は奥の部屋を用意してくれた。
「あ、ケント様だ。なあ、タイタンさまはー?おーたいしはいないの?」
「ご本よんでー。」
子どもたちがケントを見つけて寄ってくる。
「ごめんね、今日は別のお仕事なの。お客様が他にもいらっしゃるからみんなはいつも通りでいてくれる?」
「はーい。」
サマンサの話に、子どもたちが素直に従ってくれた。
「ケント様!」
すぐにエリムとスノウは現れた。
馬は、孤児院の裏に目立たないようにしてつないでおく。
「エリム、アイスノン医師を…。」
「はい。」
エリムが傷ついた白い鳥を懐から出す。
「えっ、これが…!!?」
影の先輩であるファイ=アイスノンと宮廷医師の姿しか知らないスノウは驚いた。
魔女は薬学に長ける。
善き魔女とは、医学に通じるんだ…。
「サマンサ様、彼が癒されるように、どうか願っていただけませんか。」
ケントに促されるまま、サマンサは手をあわせて祈りを捧げた。
少しだけ、鳥が動いた気がする。
「だめ、だめよ。私。」
「じゃあ、ユーリカ様。貴方も一緒にお願いします!」
「えっ!私!?」
「はい、そのためにお連れしました。あなたとお姉さまはそっくり姉妹なのだと伺いました。ならば、貴方も同じように聖女の資格があるはずです!一人でダメなら、二人なら!」
姉妹は顔を見合わせ、手を繋いで祈った。
国の安寧を。
傷ついた善き魔女の回復を。
スノウの幸せを。
「まあ!」
馬に乗ったケントを見て、サマンサは驚いた。
何故なら、その馬には妹のユーリカも乗っている。
「どうしたのですか?ユーリカまで。」
「国の一大事なの、お姉さま。あのウイッチが、処刑を逃れて悪い『魔女』になって帰って来たのよ!ジョエル様のお妃になろうとして、今、お城にいるの…!」
「『魔女』!?嘘でしょう?そりゃあ私もあの人の罠にかかって辛い思いをしましたけど、『魔女』なんてまだ存在していたっていうの…!」
ケントはサマンサの手をそっと握りしめた。
「よい魔女の末裔が言ったそうです。魔女の罠にかかってもなお気高き心を失わなかった者が聖女だと。聖女がよき魔女を助けてくれるのだと。私には、あなたがそうだとしか思えない!きっと、『魔女』は邪魔な令嬢たちが儚くなるように呪いをかけていたのでしょう。しかし、貴方は跳ね返した。それはきっとあなたが聖女だからだと信じています。」
「でも……。」
「まずは中に入れてください。司祭様に話を…。そして後からスノウ様とエリム様も来ます。傷ついた善き魔女も一緒のはず。彼らも中に、お願いします。」
「分かりましたわ。」
ケントは司祭に挨拶をし、司祭は奥の部屋を用意してくれた。
「あ、ケント様だ。なあ、タイタンさまはー?おーたいしはいないの?」
「ご本よんでー。」
子どもたちがケントを見つけて寄ってくる。
「ごめんね、今日は別のお仕事なの。お客様が他にもいらっしゃるからみんなはいつも通りでいてくれる?」
「はーい。」
サマンサの話に、子どもたちが素直に従ってくれた。
「ケント様!」
すぐにエリムとスノウは現れた。
馬は、孤児院の裏に目立たないようにしてつないでおく。
「エリム、アイスノン医師を…。」
「はい。」
エリムが傷ついた白い鳥を懐から出す。
「えっ、これが…!!?」
影の先輩であるファイ=アイスノンと宮廷医師の姿しか知らないスノウは驚いた。
魔女は薬学に長ける。
善き魔女とは、医学に通じるんだ…。
「サマンサ様、彼が癒されるように、どうか願っていただけませんか。」
ケントに促されるまま、サマンサは手をあわせて祈りを捧げた。
少しだけ、鳥が動いた気がする。
「だめ、だめよ。私。」
「じゃあ、ユーリカ様。貴方も一緒にお願いします!」
「えっ!私!?」
「はい、そのためにお連れしました。あなたとお姉さまはそっくり姉妹なのだと伺いました。ならば、貴方も同じように聖女の資格があるはずです!一人でダメなら、二人なら!」
姉妹は顔を見合わせ、手を繋いで祈った。
国の安寧を。
傷ついた善き魔女の回復を。
スノウの幸せを。
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