【完結】自称ヒロイン役を完遂した王家の影ですが、断罪パーティーをクリアした後に王太子がぐいぐい来ます。

竜鳴躍

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あなたの騎士

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「ねぇ、ジョエル様。私たち、仲良しの夫婦になりましょうね。きっと誰もが羨む世界一の王と王妃になれますわ。」

「ははは。ビューティは気が早い。この国とは仲良くやっていけそうですな。」

「は…はい。」

べたべたと纏わりつくウイッチに辟易する。

ジョエルは事の成功を祈っていた。


(この女を私がひきつけている間に…!!頼んだぞ、ケント…、そして――――――――エリム!)







「これからどうしようかなあ。お金はいつまでもあるものじゃないし。何か仕事を探さないとなぁ。何が出来るかなー。」

冒険者?

それともどこかの街の商会で働く?

劇場の仕事も夢があっていいよね。

スノウは兄から渡されたお金の袋を懐に、馬で王都の境を丁度越えたところで、初めての山道に少しばかりの不安を感じていた。

「王都から出て最初の街ってどこだろう。やっぱり港町のポーティスかなぁ。馬でどのくらいだろ。道はあってるはずだけど。」

ドクトル島へ目の治療に出かけたエリムもそろそろ帰ってくる頃だ。
もう会えないかもしれないから、どこかですれ違えたらいいな。

最後に一緒にご飯を食べて、お話出来たら嬉しい。



「………ん?」


目の前に、なんだか通せんぼをしている集団がいる。


「あのぅ、そんなふうに道をふさいでいたら危ないですよ?スピードを出している人だったらそのまま轢いちゃいます。」

馬から降りて、注意をすると、集団はにやにやと笑いながらスノウを囲んだ。


ぐっといきなりスノウの腕を掴んでくる。


「なんですか!貴方たち!」

咄嗟に腰の剣に手をかけようとして、もう一人にその腕を掴まれた。

「……!」

両腕を拘束されて警戒すると、さらに一人が品定めをするようにスノウを見た。


上着の下に手を入れて、弄られ、嫌悪感を抱く。

「こっ、このっ」

足で蹴りを入れようにも、小柄な体ではうまく力が入らない。

「依頼主さんからお前を傷物にするようお願いされているんでね。」

「いやあ、べっぴんさんじゃん。」

「役得役得。」








「お前ら、その人から離れろっ!!!!!」







「うわ、いてっ!」


遠くから石が投げられて、賊が振り返る。



スノウは目を見張った。




「ああ、あ……エリム。エリム!!!」



そこにいたのはエリムだったから。

見違えるように肉をつけて、白い杖ではなく剣を腰から提げた、立派な騎士がそこにいた。



「この野郎っ!」

「スノウ!目を閉じてっ!」

エリムは煙幕を投げつける。


「なっ!ぶはっ!」


「前が見えねぇ!」


「馬鹿め、こんなんじゃお前だって」


「うぐぁあ!」

「がぁああ!」


目を閉じている間に叫び声が聞こえる。


(エリム…!そうか、エリムは見えない中で生活してきたから…!)


「ぎゃあ!」



自分の近くで叫び声が聞こえ、捕えられている腕が緩む。


そして、煙幕が引くと、そこにはぴくぴくと痙攣をおこしている賊たちの姿があった。




「エリム、ありがとう。どうしてここに…。」

エリムは手に持った奇妙な形の機械をしまう。


「まずはこいつらを縛ってしまおう。それから、私についてきて?」

一緒に馬を走らせながら、エリムは自分の役目を。

ジョエルから託されたことを伝えた。





「あのウイッチが、新しい魔女になって戻って来た。幻覚で惑わせて、帝国の王女になってる。陛下も王妃様もジョエルも今はまだ正気。だけどスノウが危険だから、幻覚に罹った振りをしてるんだ。ケント様が港に来て、教えてくれた。」

私の役目は、スノウの騎士。

といっても腕に自信はないから、医療器具の応用で作られた電気銃も併用しているけれどね。


「今はどこへ向かっているの?」

「魔女と戦うには魔女の協力が必要なんだって。正しい魔女がやられてしまって、彼が言い残した通り『聖女』様を探してるんだ。ケント様に心当たりがあって…。だから今は『聖女』様のところへ。」


そういうエリムの懐には、傷ついた一羽の白い鳥が見える。





なんなんだ。

あのウイッチって元公爵令嬢。

俺の、一応いとこ?いとこになるんだよな?

学園では立派な令嬢に見えた。
王太子との結婚を祝福していた。

そんな―――――――――



今なら、あんな女とジョエルがなんて認められない。

許せない。

ジョエルの妃になりたいからって、こんなにひどいことをするなんて。

こんなに怒りが沸いたのは初めてだ。
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