【完結】自称ヒロイン役を完遂した王家の影ですが、断罪パーティーをクリアした後に王太子がぐいぐい来ます。

影の先輩

「よ。」


「よ、じゃないですよ。」

俺はその人を睨む。

軟派そうな垂れ目。
整った容姿なのに平凡にみせる空気。

文官として出仕したその日に俺をスカウトした男。

表の顔は宮廷医師。

ファイ=アイスノン。



「おめでとう？っていうべきかな。」

「俺は断っています。普通の体じゃない妃なんて、侮られます。」

「そう？何を持って普通なん？意外と公表されないだけで両性具有は多いと思うよ？性器の形は一つじゃないし、女性のお豆ちゃんだって男性器に近い人もいるわけだし？自分の体でも気づかない人もいるかもよ。スノウは男性器の方は機能していないんだし…………」


「黙ってくれます？」


「おお怖い。」

「それでも、俺のアイデンティティは男だと思います。妻は抱けなくても、男に抱かれる自分なんて」


「ドレス姿、似合ってたけどな。」


「仕事なら着られますから。」


「もう同僚としては会えないが、幸せを祈っているぜ？」



全くもう。


三十路の不精髭男は、ふっと姿を消した。