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愛する人の隣に立てるように

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実家のシュタイン伯爵家とは疎遠だ。


私が目が不自由だったから。
当主には相応しくないから。

別にいい。

あんな家は要らない。


そう思っていた。


目が見えない私が、学園を卒業した後、どうなるか。

就職は難しい。

きっと一生、家に飼われる。

蔑まれながら。


そう、思っていた。




エリムは今、母の実家に足を踏み入れていた。

ビューア侯爵家。

この家は、母の兄夫婦が継いでいる。

伯父さまにあたる侯爵は、私の文を見て時間を作ってくれた。



「葬儀以来かな。腰掛けて。」

温和な空気の中にピリリと緊張が走る。


「ご無沙汰しております。今までご挨拶も出来ず、申し訳ありません。」

「いいんだ。君も不自由な体で難しかっただろう。それで、用件は何かね?」


「私に投資をしてくださいませんか。」


「ほう。私に何を望む。」


「私はこのような身ですが、手術さえすれば視力は得られるのです。学園では上位の成績です。きっと、次期侯爵としても遜色ないかと自負しております。きっと家のためお役に立ちますから、私に手術費用を投資してください!」


「ふむ……。」

ビューア侯爵家にいた一人娘はウイッチの蛮行により還らぬ人となっている。
なので、伯父には今、後継者がいない。
身内から後継者を養子にする必要があるはずだった。


「………!」

緊張で身が引き締まる。



「よく、言った。」

ポンと、頭に優しい大きな手が乗せられた。



「よろしい、正式にうちと養子縁組しよう。その後で手術だ。あの腐れ外道の悔しがる顔が見ものだな。あの後妻の子は出来が悪いらしいからな。」


珠を手放したことを後悔させてやれ、と豪快に言われて、胸がスッとした。




(私は視力を取り戻すよ。スノウの隣に立てるように。王子とだって張り合って見せるからね!)
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