9 / 63
バチバチと火花が散る
しおりを挟む
「エリム=シュタイン君。君は知らなかったと思うが、スノウ君はアップル公爵家の当主なんだ。」
「家格が釣り合わぬと仰りたいのでしょうが、公爵家に伯爵家の嫁が嫁ぐなどよくあることです。公爵家の当主であればなおのこと、王太子殿下とは難しいのではないでしょうか。」
「ふふっ。私とスノウの婚約は陛下もスノウの養父であるホワイト伯爵もお認めになっているのだ。なに、公爵家の領地は当面王家の直轄地とし、何人か生まれたうちの一人に領地を継がせればよい。そういうことだ、気にするな。」
「王太子殿下は優秀な方だと思いますが、人の心の機微というものには疎いようですね。ゆえに、陛下たちもスノウが許せばという前提を与えたのでは?」
「君はなかなか優秀な男だな。」
「痛み入ります。」
「二人ともやめてよ。王太子殿下もエリムも。俺は、誰とも結婚するつもりはないんだから。大体、俺みたいな中途半端な…男だか女だか分からないやつ、相手にするもんじゃないよ。世の中には俺よりもっと素晴らしい女性がいるでしょう。」
「スノウ。僕は見えないから、中身だけしか分からない。男とか女とか、そういうのは見た目だけの話でしょう。スノウより素晴らしい人を僕は知らないよ。自分でそんなふうに言わないで。」
「そうだ。知っていたか、スノウ。両性具有は天使の証なんだ。天使と同じ性なんだよ。だから引け目に思ってはいけない。」
「もう、分かったから。ご飯を食べ終わるよ。エリムも、ねっ。授業始まっちゃう。今日は休み時間に勉強会ができなかったから、帰る前にしようね。」
「ありがとう。スノウ。」
「スノウ、私にも笑ってほしい。もう嫌なことはしないから。」
くぅんと折れた耳が見える。
なんだこの殿下、子犬みたいで可愛いところあるな。
「家格が釣り合わぬと仰りたいのでしょうが、公爵家に伯爵家の嫁が嫁ぐなどよくあることです。公爵家の当主であればなおのこと、王太子殿下とは難しいのではないでしょうか。」
「ふふっ。私とスノウの婚約は陛下もスノウの養父であるホワイト伯爵もお認めになっているのだ。なに、公爵家の領地は当面王家の直轄地とし、何人か生まれたうちの一人に領地を継がせればよい。そういうことだ、気にするな。」
「王太子殿下は優秀な方だと思いますが、人の心の機微というものには疎いようですね。ゆえに、陛下たちもスノウが許せばという前提を与えたのでは?」
「君はなかなか優秀な男だな。」
「痛み入ります。」
「二人ともやめてよ。王太子殿下もエリムも。俺は、誰とも結婚するつもりはないんだから。大体、俺みたいな中途半端な…男だか女だか分からないやつ、相手にするもんじゃないよ。世の中には俺よりもっと素晴らしい女性がいるでしょう。」
「スノウ。僕は見えないから、中身だけしか分からない。男とか女とか、そういうのは見た目だけの話でしょう。スノウより素晴らしい人を僕は知らないよ。自分でそんなふうに言わないで。」
「そうだ。知っていたか、スノウ。両性具有は天使の証なんだ。天使と同じ性なんだよ。だから引け目に思ってはいけない。」
「もう、分かったから。ご飯を食べ終わるよ。エリムも、ねっ。授業始まっちゃう。今日は休み時間に勉強会ができなかったから、帰る前にしようね。」
「ありがとう。スノウ。」
「スノウ、私にも笑ってほしい。もう嫌なことはしないから。」
くぅんと折れた耳が見える。
なんだこの殿下、子犬みたいで可愛いところあるな。
63
お気に入りに追加
1,207
あなたにおすすめの小説

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
「恋の熱」-義理の弟×兄-
悠里
BL
親の再婚で兄弟になるかもしれない、初顔合わせの日。
兄:楓 弟:響也
お互い目が離せなくなる。
再婚して同居、微妙な距離感で過ごしている中。
両親不在のある夏の日。
響也が楓に、ある提案をする。
弟&年下攻めです(^^。
楓サイドは「#蝉の音書き出し企画」に参加させ頂きました。
セミの鳴き声って、ジリジリした焦燥感がある気がするので。
ジリジリした熱い感じで✨
楽しんでいただけますように。
(表紙のイラストは、ミカスケさまのフリー素材よりお借りしています)

うまく笑えない君へと捧ぐ
西友
BL
本編+おまけ話、完結です。
ありがとうございました!
中学二年の夏、彰太(しょうた)は恋愛を諦めた。でも、一人でも恋は出来るから。そんな想いを秘めたまま、彰太は一翔(かずと)に片想いをする。やがて、ハグから始まった二人の恋愛は、三年で幕を閉じることになる。
一翔の左手の薬指には、微かに光る指輪がある。綺麗な奥さんと、一歳になる娘がいるという一翔。あの三年間は、幻だった。一翔はそんな風に思っているかもしれない。
──でも。おれにとっては、確かに現実だったよ。
もう二度と交差することのない想いを秘め、彰太は遠い場所で笑う一翔に背を向けた。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

薄幸な子爵は捻くれて傲慢な公爵に溺愛されて逃げられない
くまだった
BL
アーノルド公爵公子に気に入られようと常に周囲に人がいたが、没落しかけているレイモンドは興味がないようだった。アーノルドはそのことが、面白くなかった。ついにレイモンドが学校を辞めてしまって・・・
捻くれ傲慢公爵→→→→→貧困薄幸没落子爵
最後のほうに主人公では、ないですが人が亡くなるシーンがあります。
地雷の方はお気をつけください。
ムーンライトさんで、先行投稿しています。
感想いただけたら嬉しいです。
【完結】塩対応の同室騎士は言葉が足らない
ゆうきぼし/優輝星
BL
騎士団養成の寄宿学校に通うアルベルトは幼いころのトラウマで閉所恐怖症の発作を抱えていた。やっと広い二人部屋に移動になるが同室のサミュエルは塩対応だった。実はサミュエルは継承争いで義母から命を狙われていたのだ。サミュエルは無口で無表情だがアルベルトの優しさにふれ少しづつ二人に変化が訪れる。
元のあらすじは塩彼氏アンソロ(2022年8月)寄稿作品です。公開終了後、大幅改稿+書き下ろし。
無口俺様攻め×美形世話好き
*マークがついた回には性的描写が含まれます。表紙はpome村さま
他サイトも転載してます。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる