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なんで俺が王家の影だってばらすかな!?

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(王太子があの方に…!?嘘でしょう??王太子様は纏わりつかれて迷惑そうにしていたじゃない!)

(それに伯爵令息って…??どういうこと!!?)

(あんな下品で下賤な女に何故…!!!???)



会場がざわつく。


うー注目されている。

影に戻るため、静かにフェードアウトするつもりだったのに、こんなに注目されるのは困る。


俺の本当の名前を知っているようだし、調べたのだろう。
婚約者が本当に悪人だったのだから、マリエルが可愛くみえたのかもしれない。

実際俺は可愛いしな…。(そうでなければハニトラ役の任務なんか与えられない)


だが―――――――


「やめてください。王太子殿下、私のようなものに膝をつくものではありません。私はあなたの妃になれるような立場の者では…。」

もうこれ以上俺の本当の名前を連呼しないで。



王太子の瞳がスッと細くなり、立ち上がる。


「貴方が本物のアップル公爵家の令息であり令嬢であり。今となっては当主だと言っても?」

はぁあ???何のこと!?


父であるホワイト伯爵を見る。


父は俺たちの下へ真っすぐ姿勢を正して歩いてくる。




「ホワイト伯爵。君の育ての父親だよね?君は彼の養子だ。」



「ふふふ。私はマリエル=アザール。辺境の男爵家の娘ですわ。ご存じでしょう??」

当然、俺はしらばっくれるぞ!
うぅ。普通に文官として士官していることになっているんだよぅ。
ごめんなさい、お父様!
王家の影は秘密の職業なんですっ。
文官武官問わず適性のある者に王家か影の先輩から直接スカウトされるんですっ。
だから、お父様にも内緒でごめんなさいっ。

女装してるし鬘だし、バレないと思いたいけど間近で見られたら自信がないので、お父様の見ていないほうへ顔をそらす。


「この国にアザールなんて男爵家はないでしょう?」

「平民同然のど田舎の貴族なのです。」

ていうか、知ってるんだろ!影がよく使う家名なのだからそっとしてほしい。


助けが欲しくて会場に紛れている影の先輩や陛下を見れば、視線を外された。

ちくしょう。



「もういいんだ。スノウ。君が『王家の影』として、私が次代の陛下に相応しいか判断するために、マリエル=アザールとして学園に潜入し、仕事として私を誘惑していたことは知っている。」



ざわっとどよめきが大きくなった。

あぁぁああああ、もうおしまいだよ!影はいい出世コースだったのに!もう廃業だよ!



「スノウ。全くお前はいつの間に『影』に…。」

お父様がため息をつく。

あああ。もう!



俺は、ピンクの鬘を外した。

真っ黒な黒髪が解放されて、外気に触れる。

男としては長めの、だが女性、特に令嬢としてはありえない長さの肩ほどの髪。


「申し訳ありません。しかし、私は養子の身。育ててくださったご恩に報いるためにも、ゆくゆく家督を継がれるレオお兄様のためにも、出世をして家のお役に立ちたかったのです。私のような小柄な体格では武官にはなれません。文官ではすぐに功績をあげることは厳しかったものですから…。」

「スノウ。そんなことは考えなくてよいと言ったのに…。突然のことで理解していないようだが、殿下がおっしゃったのは本当だ。お前が、本物のアップル公爵家の後継。先代の遺児なのだよ。よかったよかった。殿下に見初められて。お前が子を産めることも乙女であることも医師が診断しているし、家格も心配しなくてよい。安心して殿下の胸に飛び込みなさい。」


えっ。ちょ。まって。




「ここに、新たなアップル公爵家の当主としてスノウ=アップルに爵位を授ける!そして、我が王太子、ジョエルとの婚約も宣言する!」


陛下ぁア!


「ふふっ。幸せになろう。」


待ってください。俺の気持ちは!?王子と結婚できるのが一番の幸せヨネ?ってみんな思ってるんでしょうけど、俺はそうは思わないから!




「お断りします…!!!!!!!!!」




俺は、めちゃくちゃ大きな声で叫んだ。
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