7 / 20
満員の電車
しおりを挟む
ガタンコトン。
この時間の電車は、逃げ場がない。
座席に座れれば痴漢に遭うことはないんだろうけど、家の近くの駅は始発でもないしすぐ手前に団地やマンションの立ち並ぶエリアがあるから絶対に座れない。
仕方なくドア付近で立っていたら、案の定誰かがお尻に触れてきた。
ちょっと触れるくらいなら、カバンや体が偶然当たることもあるから…。
そう思っていたら、撫でまわしてくる。
これ、本当に痴漢だわ。
背筋がぞわぞわしてきた。
氷魔という種族は、短命ゆえに種を繋ぐため、愛を請いやすいよう誰もが魅了されるような極めて美しい容姿をしている。
そして、確実に種を残せるように、『性別』が自由に変化し、どの形態でも子がなせるようになっている。
男の体でも、男にとっては雌だろう。
―――――――――とはいえ、ここで泣き寝入りするような俺ではない。
リュウ時代は、従軍し、将軍職まで行ったのだ。
相手の手首をつまみ上げようとした瞬間、情けない悲鳴が聞こえてきた。
「ふぎゃぴぃぃっ!」
「ああ、すみません。足を踏んでしまいました。」
聞き覚えのある声。
振り返ると、右眼に眼帯をつけた赤い髪の顔の右側に深い傷のある男が痴漢の腕をひねりあげている。
「アル…………!」
駅で降りて、なんか気まずい。
「アルファさん、偉い人じゃないの?なんで電車なんか。」
「君が心配だからに決まってる。今までとは違うんだから。なんならこれからうちの車で送迎させるけど。」
「やめてよ、高級車目立つじゃん。」
「私立だから、そういう子もいるだろう?」
「そりゃいるけど……。今までそういうキャラじゃなかったのに目立つ。」
「…………学校、たのしそうだもんな。」
「うん。前世は楽しめなかったから。友だちもたくさんいるし。」
「分かった。でも、俺は独占欲が強いんだ。分かっていると思うが君が欲しい。ライバルがいるようなら、蹴散らすからね?」
アルファさんとは学校の手前の目立たないところで別れた。
学校に行った俺は、珍獣のように他の生徒に囲まれるのだった。
この時間の電車は、逃げ場がない。
座席に座れれば痴漢に遭うことはないんだろうけど、家の近くの駅は始発でもないしすぐ手前に団地やマンションの立ち並ぶエリアがあるから絶対に座れない。
仕方なくドア付近で立っていたら、案の定誰かがお尻に触れてきた。
ちょっと触れるくらいなら、カバンや体が偶然当たることもあるから…。
そう思っていたら、撫でまわしてくる。
これ、本当に痴漢だわ。
背筋がぞわぞわしてきた。
氷魔という種族は、短命ゆえに種を繋ぐため、愛を請いやすいよう誰もが魅了されるような極めて美しい容姿をしている。
そして、確実に種を残せるように、『性別』が自由に変化し、どの形態でも子がなせるようになっている。
男の体でも、男にとっては雌だろう。
―――――――――とはいえ、ここで泣き寝入りするような俺ではない。
リュウ時代は、従軍し、将軍職まで行ったのだ。
相手の手首をつまみ上げようとした瞬間、情けない悲鳴が聞こえてきた。
「ふぎゃぴぃぃっ!」
「ああ、すみません。足を踏んでしまいました。」
聞き覚えのある声。
振り返ると、右眼に眼帯をつけた赤い髪の顔の右側に深い傷のある男が痴漢の腕をひねりあげている。
「アル…………!」
駅で降りて、なんか気まずい。
「アルファさん、偉い人じゃないの?なんで電車なんか。」
「君が心配だからに決まってる。今までとは違うんだから。なんならこれからうちの車で送迎させるけど。」
「やめてよ、高級車目立つじゃん。」
「私立だから、そういう子もいるだろう?」
「そりゃいるけど……。今までそういうキャラじゃなかったのに目立つ。」
「…………学校、たのしそうだもんな。」
「うん。前世は楽しめなかったから。友だちもたくさんいるし。」
「分かった。でも、俺は独占欲が強いんだ。分かっていると思うが君が欲しい。ライバルがいるようなら、蹴散らすからね?」
アルファさんとは学校の手前の目立たないところで別れた。
学校に行った俺は、珍獣のように他の生徒に囲まれるのだった。
11
<関連作>①https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/745514318②https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/186571339第1話がダイジェストなので、よろしかったらご覧になっていただけると嬉しいです。
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
恋した貴方はαなロミオ
須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。
Ω性に引け目を感じている凛太。
凛太を運命の番だと信じているα性の結城。
すれ違う二人を引き寄せたヒート。
ほんわか現代BLオメガバース♡
※二人それぞれの視点が交互に展開します
※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m
※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
Endless Summer Night ~終わらない夏~
樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった”
長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、
ひと夏の契約でリゾートにやってきた。
最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、
気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。
そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。
***前作品とは完全に切り離したお話ですが、
世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【BL】記憶のカケラ
樺純
BL
あらすじ
とある事故により記憶の一部を失ってしまったキイチ。キイチはその事故以来、海辺である男性の後ろ姿を追いかける夢を毎日見るようになり、その男性の顔が見えそうになるといつもその夢から覚めるため、その相手が誰なのか気になりはじめる。
そんなキイチはいつからか惹かれている幼なじみのタカラの家に転がり込み、居候生活を送っているがタカラと幼なじみという関係を壊すのが怖くて告白出来ずにいた。そんな時、毎日見る夢に出てくるあの後ろ姿を街中で見つける。キイチはその人と会えば何故、あの夢を毎日見るのかその理由が分かるかもしれないとその後ろ姿に夢中になるが、結果としてそのキイチのその行動がタカラの心を締め付け過去の傷痕を抉る事となる。
キイチが忘れてしまった記憶とは?
タカラの抱える過去の傷痕とは?
散らばった記憶のカケラが1つになった時…真実が明かされる。
キイチ(男)
中二の時に事故に遭い記憶の一部を失う。幼なじみであり片想いの相手であるタカラの家に居候している。同じ男であることや幼なじみという関係を壊すのが怖く、タカラに告白出来ずにいるがタカラには過保護で尽くしている。
タカラ(男)
過去の出来事が忘れられないままキイチを自分の家に居候させている。タカラの心には過去の出来事により出来てしまった傷痕があり、その傷痕を癒すことができないまま自分の想いに蓋をしキイチと暮らしている。
ノイル(男)
キイチとタカラの幼なじみ。幼なじみ、男女7人組の年長者として2人を落ち着いた目で見守っている。キイチの働くカフェのオーナーでもあり、良き助言者でもあり、ノイルの行動により2人に大きな変化が訪れるキッカケとなる。
ミズキ(男)
幼なじみ7人組の1人でもありタカラの親友でもある。タカラと同じ職場に勤めていて会社ではタカラの執事くんと呼ばれるほどタカラに甘いが、恋人であるヒノハが1番大切なのでここぞと言う時は恋人を優先する。
ユウリ(女)
幼なじみ7人組の1人。ノイルの経営するカフェで一緒に働いていてノイルの彼女。
ヒノハ(女)
幼なじみ7人組の1人。ミズキの彼女。ミズキのことが大好きで冗談半分でタカラにライバル心を抱いてるというネタで場を和ませる。
リヒト(男)
幼なじみ7人組の1人。冷静な目で幼なじみ達が恋人になっていく様子を見守ってきた。
謎の男性
街でキイチが見かけた毎日夢に出てくる後ろ姿にそっくりな男。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
うまく笑えない君へと捧ぐ
西友
BL
本編+おまけ話、完結です。
ありがとうございました!
中学二年の夏、彰太(しょうた)は恋愛を諦めた。でも、一人でも恋は出来るから。そんな想いを秘めたまま、彰太は一翔(かずと)に片想いをする。やがて、ハグから始まった二人の恋愛は、三年で幕を閉じることになる。
一翔の左手の薬指には、微かに光る指輪がある。綺麗な奥さんと、一歳になる娘がいるという一翔。あの三年間は、幻だった。一翔はそんな風に思っているかもしれない。
──でも。おれにとっては、確かに現実だったよ。
もう二度と交差することのない想いを秘め、彰太は遠い場所で笑う一翔に背を向けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる