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閑話 アイス=クレイソン公爵
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アンジュたちが王太子の救出に向かって数時間後。
城の応接間では、陛下、マリー妃、騎士団長とその妻が皆の帰りを待って、お茶を飲みながら過ごしていた。
そこへ、カツカツと心地よい靴音を響かせ、入室する者がいた。
「みなさま、ご無沙汰しております。私もご一緒させていただいても?」
金髪に青い目。どことなく、陛下やミレニアに似た容姿。
陛下の祖父の年の離れた弟の嫡男。陛下たちより3歳下の32歳と、まだまだ若々しい。
アイス=クレイソン公爵だ。
王家の血は遠くなったが、陛下も陛下の父親も男兄弟がいなかったこともあり、王位継承権は下位だがまだ持っている。
マリー妃のお披露目会で見た彼は、まじめで素朴で、どことなく頼りなげな存在だった。
だが、時を重ね、陛下を少し男らしく、体格をガッシリさせたような美丈夫へと変わっていた。
かつて彼の父親が王位欲しさに悪事を企て軟禁となった時、
まだ15歳になったばかりだった彼が、代替わりで当主となった。
だいぶ苦労したとは思うが、父親よりうまくやっているようで、領地の経営も順調だ。
「この度はうちの愚息がすまない。妻君に迷惑をおかけして。」
「まぁ、彼のことですから、もうすぐ帰ってきますよ。もう遅いので迎えに来ただけです。」
王位継承争いに巻き込まれるのも、担ぎ出されるのも嫌った公爵は、長く独り身を貫いていた。
だが、見つけてしまったのだ。
自分の半身を。
丁度いいことに、同性だった。
同性なら跡継ぎは生まれないからちょうどいい。
追い詰めて追い詰めて、自分の妻にした。
みなに自慢をしたかったが、
騎士団に入れたことや重用されていることが、「カラダを使ったんだろう?」と揶揄されるようになるからいやだと泣かれたので、旧姓使用も許したし、ここにいる者を含め、ごく限られた人間しか、クリスが本当は、クリス=クレイソンで、公爵夫人であることを知らない。
「帰ってきたら、それはそれは可愛がってあげないとね…。」
フフフと笑う、その人と。
陛下もマリー妃も騎士団長とその夫人も。
全員が目を合わさないようにした。
城の応接間では、陛下、マリー妃、騎士団長とその妻が皆の帰りを待って、お茶を飲みながら過ごしていた。
そこへ、カツカツと心地よい靴音を響かせ、入室する者がいた。
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金髪に青い目。どことなく、陛下やミレニアに似た容姿。
陛下の祖父の年の離れた弟の嫡男。陛下たちより3歳下の32歳と、まだまだ若々しい。
アイス=クレイソン公爵だ。
王家の血は遠くなったが、陛下も陛下の父親も男兄弟がいなかったこともあり、王位継承権は下位だがまだ持っている。
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「この度はうちの愚息がすまない。妻君に迷惑をおかけして。」
「まぁ、彼のことですから、もうすぐ帰ってきますよ。もう遅いので迎えに来ただけです。」
王位継承争いに巻き込まれるのも、担ぎ出されるのも嫌った公爵は、長く独り身を貫いていた。
だが、見つけてしまったのだ。
自分の半身を。
丁度いいことに、同性だった。
同性なら跡継ぎは生まれないからちょうどいい。
追い詰めて追い詰めて、自分の妻にした。
みなに自慢をしたかったが、
騎士団に入れたことや重用されていることが、「カラダを使ったんだろう?」と揶揄されるようになるからいやだと泣かれたので、旧姓使用も許したし、ここにいる者を含め、ごく限られた人間しか、クリスが本当は、クリス=クレイソンで、公爵夫人であることを知らない。
「帰ってきたら、それはそれは可愛がってあげないとね…。」
フフフと笑う、その人と。
陛下もマリー妃も騎士団長とその夫人も。
全員が目を合わさないようにした。
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