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彼女のことだと脳細胞が働かない
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アンジュが好きだ。
幼いころから一緒にいて、隣にいるのが当たり前だった。
可愛い綺麗な女の子。
何の忖度もなく、思ったことを素直に伝えてくれる。
君の笑顔が、言葉が、僕のすべて。
いつか君が別のだれかのものになってしまったら、僕はきっと生きていけない。
本当は、婚約者になって外堀を埋めたかったけど、騎士団長が反対してできなかった。
僕はどうすればいい?
どうすれば君はこれから先もずっと僕と人生を歩んでくれるの?
騎士としてではなく、妃として、隣にいてほしいのに。
君が剣を持てないようにしてやったら、
閉じ込めてしまったら、
無理やりにでも妃にしてしまったら
でも、それは君が君でなくなってしまう。
僕は、お日様のような君を愛しているのに。
僕は決めたんだ。
君の誕生日にブルーローズを捧げてプロポーズすると。
後先考えない行動だったのは認める。
モンスターに遭遇したからって、素人が何もわからずに突っ込んでごめんなさい。
僕は王太子。たった一人しかいない世継ぎなのだから、わきまえろと叱られたのだと思っている。
将来の王たるもの、それではならないと。
この山はモンスターが多い。
クリスはさすが元SS冒険者だ。
神速の名は伊達ではないな。
僕より多い、群れの個体を群れごと引き受けて、自分に引き付けてから、両手に構えた剣でまとめて斬り捨てている。
僕は、さすがに息切れながら、拳で最後の一撃を加えた。
16体目の最後の化けイノシシが、ドスンと雪の上に倒れた。
無事、帰らないと。
みんなきっと心配してる。
頭を冷やして、もっと立派な王太子になろう。
彼女のことだと脳細胞が働かない。
でも、それではダメなのだ。
父のようにどんなときでも冴えた男になりたい。
それこそが結果的に愛する人を守ることにもつながるはずだ。
「王太子、怪我はありませんか!?」
返り血を浴びてコートが変色しているクリスが、こっちへ来た。
向こうは全部片付いたらしい。
「大丈夫、早く下山しよう。」
そのとき、下の方から、今一番会いたい女性の声が聞こえた。
「ディヴィッド様!クリスさん!」
アンジュが寒さで頬を赤くして、僕の胸に飛び込んできた。
「よかった!」
ハデスとミカエルも、クリスを見つけたようで、クリスの隣に立つ。
「なんだ、お前ら来たのかよ。」
クリスは心なしか嬉しそうだ。
「リーダーのことだから大丈夫だってみんな思ってたんだけどねぇ、あの子が心配だって。」
そうか、アンジュは心配してくれたんだ。
腕の中のアンジュの髪を撫でようとしたそのとき。
「フォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…
雄たけびが聞こえ、
雪煙を起こして、真っ白な毛並みで6枚の翼をもつ、毛の生えた竜のような個体が姿を現し。
俺たちを睨みつけた。
幼いころから一緒にいて、隣にいるのが当たり前だった。
可愛い綺麗な女の子。
何の忖度もなく、思ったことを素直に伝えてくれる。
君の笑顔が、言葉が、僕のすべて。
いつか君が別のだれかのものになってしまったら、僕はきっと生きていけない。
本当は、婚約者になって外堀を埋めたかったけど、騎士団長が反対してできなかった。
僕はどうすればいい?
どうすれば君はこれから先もずっと僕と人生を歩んでくれるの?
騎士としてではなく、妃として、隣にいてほしいのに。
君が剣を持てないようにしてやったら、
閉じ込めてしまったら、
無理やりにでも妃にしてしまったら
でも、それは君が君でなくなってしまう。
僕は、お日様のような君を愛しているのに。
僕は決めたんだ。
君の誕生日にブルーローズを捧げてプロポーズすると。
後先考えない行動だったのは認める。
モンスターに遭遇したからって、素人が何もわからずに突っ込んでごめんなさい。
僕は王太子。たった一人しかいない世継ぎなのだから、わきまえろと叱られたのだと思っている。
将来の王たるもの、それではならないと。
この山はモンスターが多い。
クリスはさすが元SS冒険者だ。
神速の名は伊達ではないな。
僕より多い、群れの個体を群れごと引き受けて、自分に引き付けてから、両手に構えた剣でまとめて斬り捨てている。
僕は、さすがに息切れながら、拳で最後の一撃を加えた。
16体目の最後の化けイノシシが、ドスンと雪の上に倒れた。
無事、帰らないと。
みんなきっと心配してる。
頭を冷やして、もっと立派な王太子になろう。
彼女のことだと脳細胞が働かない。
でも、それではダメなのだ。
父のようにどんなときでも冴えた男になりたい。
それこそが結果的に愛する人を守ることにもつながるはずだ。
「王太子、怪我はありませんか!?」
返り血を浴びてコートが変色しているクリスが、こっちへ来た。
向こうは全部片付いたらしい。
「大丈夫、早く下山しよう。」
そのとき、下の方から、今一番会いたい女性の声が聞こえた。
「ディヴィッド様!クリスさん!」
アンジュが寒さで頬を赤くして、僕の胸に飛び込んできた。
「よかった!」
ハデスとミカエルも、クリスを見つけたようで、クリスの隣に立つ。
「なんだ、お前ら来たのかよ。」
クリスは心なしか嬉しそうだ。
「リーダーのことだから大丈夫だってみんな思ってたんだけどねぇ、あの子が心配だって。」
そうか、アンジュは心配してくれたんだ。
腕の中のアンジュの髪を撫でようとしたそのとき。
「フォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…
雄たけびが聞こえ、
雪煙を起こして、真っ白な毛並みで6枚の翼をもつ、毛の生えた竜のような個体が姿を現し。
俺たちを睨みつけた。
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