ヤンデレ王子は姫騎士を包囲する

竜鳴躍

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今日から楽しい学園生活

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この国ーーーレッドキングダムには、王太子が一人いる。

前の王の生前退位により即位した、マクシミリアン=フォン=レッドキングダムの長子である、デイヴィット=フォン=レッドキングダムだ。

もう立派に中年の域に差し掛かろうというのに、女装すれば従妹で騎士団長の妻であるミレニア=ローズ=ビクトリア伯爵夫人に瓜二つの王には、賢く、清楚な美しさを持つ王妃マリーがおり、恋愛の末結婚した夫婦には、側妃はおらず。

なんだかんだと、自然に任せてたら子どもは1人しか恵まれなかった。


金髪で青い目の薔薇のように華やかな父親から美貌は受け継がなかったが、マリー似の容姿はけして劣っているわけではなく、十分に麗しい。
そして、幼いころから学術書を読み解く賢さと、両親の思慮深さを受け継いだ彼は、武術の面では評価を聞かれることはなかったものの、将来の王として嘱望されている。


優しく、穏やかで、思いやりがあって、決断力もある、多方面に目を配らせ、総合的に判断できる賢い王太子。


それが、一般国民の王太子の評価。




「今日から学園なのね。」

今日から、王太子は学園へ通う。
学園を卒業したら、いよいよ成人として、王位を継ぐ準備が始まる。
学園へ向かう馬車の前で、母親であるマリー妃が感慨深そうに息子を見つめた。

「人を見る目を養うといい。将来の側近候補は自分で見つけろよ。」
マリー妃の傍にいるのは父親のマクシミリアン王だ。

王と王妃にしてはフランクだよな、と思うが、これが彼らの在り方なのだからいいのだろう。
傍で危険がないか守っている騎士団長の胃はたいへんらしいが。


「それでは行ってまいります。騎士団長、お嬢さんを迎えてから行きますね!」

満面の笑みで、両親の後ろに控えている騎士団長に告げると、騎士団長は「大丈夫です!我が娘はひとりで行ける強い子なので!私に似て剣の達人だし、もう騎士団の若手には負けないくらいには強いし」とかぐちゃぐちゃ言っているが無視する。



僕は、騎士団長の娘が好きだ。

初めに好意を好意として認識したのは、8歳の時。

親戚にあたるのと、親同士の距離が近かったこともあって、僕たちは幼いころから一緒に遊んでいた。
もっと仲良くなりたくて、女の子がやる刺繍やお茶の入れ方を学んだら、うっかり彼女よりうまくなってしまって、ショックを受けた彼女が遊んでくれなくなって。
用事で城に来たのに、僕を避けたことを知って。
そう、あのとき、薄暗い気持ちとともに、気づいてしまった。

僕は彼女が好き。愛してる。誰にも渡したくない。彼女の美しい青い瞳が別の誰かをうつすのも嫌だ。ずっと僕だけを見ていてほしい。なんなら閉じ込めたい。

ーーーでもきっと、乱暴なことをしたら、本当に彼女は去ってしまうから。
彼女の心は永遠に手に入らないだろうから。


彼女が僕に勝てるもの、と見つけた『剣』を僕は習わない。


彼女の剣の腕をほめてほめてほめてほめてほめてほめてほめてほめてほめてほめてほめてほめてほめてほめてほめて

可愛い単純なあの子を少しずつ陥落する。


都合のいいことに、騎士団長は、(僕のことも警戒はしてはいるが)娘を溺愛するあまり、娘を一生そばにおく気のようで、彼女には婚約者もいないし、父親がすべて蹴散らしている。
時間はある。


そして、僕たちは15歳。


学園の中では、あの父親も追ってはこれない。

昔は、学園で臨時講師として出入りもあったようだが、今や王の護衛のトップだし、学園に彼が来れないように、陛下には根回ししてるからね。


「ふふっ、楽しみだなぁ…。」

馬車の中で邪悪な笑みを浮かべていると、護衛兼世話係が引いた表情を浮かべた。




さて、邪悪はしまって、何も知らない姫君をお迎えにあがるとしよう。
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