【完結】美貌のオメガは正体を隠す

竜鳴躍

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番外編など

北村陸

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「よぉ。氷室。昼休み時間、ちょっと中庭まで来いや。」


海はまだ元気が出ないのか学校を休んでいる。

その代わりに現れた北村陸は、朝のHR時間前に氷室の机の前で仁王立ちをして睨んだ。







昼休み。

中等部の校舎と高等部の校舎の間にある中庭は、意外と人が来ない。

銀杏の木の下で、陸は氷室を待った。


「………陸君、どうしたんだい?海くんは元気…?」


「どーしたもこーしたも。海兄さんは可愛そうにまだ落ち込んでるよ!それで、今週の土曜日、帝国ホテルで見合い。じいじたちが、振られたショックは新しい恋が一番とか抜かして、兄さん見合いするんだ。」


ちくり。



「そ…うか。」


「そうか、じゃねえ!」

陸は京の胸倉をつかむ。


「癪だけど、兄さんは今思えば本当にちっさい頃からお前に夢中で。お前のこと好きなんだよ!代わりなんかいないんだ!お前、どうして兄さんをフッた?本当は兄さんのこと好きだろ?様子見てりゃ分かるんだよ!どんな事情があるのか分かんねえけど――――――。」


お前の気持ちはどうなんだよ。



「兄さんが他の誰かのモノになって、お前は耐えられるのか?」

泣きそうに、言葉が詰まる。

俺じゃ兄を慰められない。弟じゃ、ダメなんだよ。


「陸……くん。」

「土曜日の午後3時。帝国ホテルの扇の間。それが見合いの時間と場所だ!」



ちくしょう。

陸は、中庭を走って去った。





土曜日の午後3時。


「3時、か…。」



ハリウッドのオーディションを受けるための、アメリカ行きの飛行機に乗る時間。





愛しい人の弟の背を見ながら。

ぎゅうううっと、心臓が握られるような痛みを、京は感じていた。
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