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番外編など
泣き虫
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「今日はどうしたの?海、元気ないけど…。」
夕ご飯をよそいながら、息子の様子が気になる。
「海兄さん、まさか氷室にいじめられたんじゃないよね!?」
陸がばっと席を立った。
「……ち、ちがうよ!京君はいつも優しいもん…!!!け……けいく…けいくんっ。」
ぽろぽろと大粒の涙がこぼれた。
呼吸が過呼吸のようになっている。
「うわあああああん。」
「海兄さん!くそ、よし!ちょっとアイツぶっ飛ばしてくる!」
木刀片手に飛び出そうとする。
「りくぅうううううううううう!やめてえええええええ!!」
「陸!!!」
「ただいまー。えっ!?なに!?何があったの?」
仕事から帰宅した父親が目を丸くする。
「ちょうどよかった、拓海。夕飯前で悪いけど、海と三人で話をしよう。空、陸のことお願い。先に夕飯食べて風呂入って寝てて。」
「了解。任された。」
夫婦で海の部屋に行く。
海はまだ、ひっくひっくと泣き続けている。
「………海。もしかして、海は氷室京君のことが好きなの?」
こくり。
海は頭を下げた。
「でも…。氷室君に振られちゃったのかな?」
…こくり。
「そっか…。」
蜜瑠は海を抱きしめた。
京の母親とは色々あった。
その血が入っていると思うと、今でも怖いと思うところはある。
でも、親の代の因縁は子の代まで引きずっていいのだろうか。
目の前の我が子はこんなに泣きじゃくって。
京君は、氷室家がしっかり育てて、父親のだらしなさは受け継がず、真面目ないい子に育った。
性格は、母親の父に似ているのかもしれない。
そもそも母親の実家でも異質なのは彼の母親だけで、自分の娘を止めようと力を尽くして凶刃に倒れてしまった彼も、親から継いだ会社を大きく育てた真面目で努力家の優しい男だったらしい。
仕事に夢中になるがあまり、娘の教育を生粋のお嬢様育ちの妻任せにして、躾を怠った結果の事件だったのだが。
「辛かったね。いいんだよ、いっぱい泣きな。」
息子の頭を撫でながら、蜜瑠は拓海と目をあわせて頷いた。
自分たちから見ても相思相愛だった。
いつかは二人で、挨拶に来るんじゃないかと。
京君の母親とは色々あったけれど、それでももしその時が来たら、自分たちは認めてあげよう。
実家の父たちが苦言を言うかもしれないけど、自分たちでなんとかしよう。
そう、言っていたのに。
好きなのに拒絶した。
もしかして、京君は自分の母親のことを知っているのではないだろうか。
若しくは、芸能人として上を目指すために、今は恋をしている場合ではないということか。
本人に問い詰めるのはよくないから、それとなく氷室さんに相談してみよう。
夕ご飯をよそいながら、息子の様子が気になる。
「海兄さん、まさか氷室にいじめられたんじゃないよね!?」
陸がばっと席を立った。
「……ち、ちがうよ!京君はいつも優しいもん…!!!け……けいく…けいくんっ。」
ぽろぽろと大粒の涙がこぼれた。
呼吸が過呼吸のようになっている。
「うわあああああん。」
「海兄さん!くそ、よし!ちょっとアイツぶっ飛ばしてくる!」
木刀片手に飛び出そうとする。
「りくぅうううううううううう!やめてえええええええ!!」
「陸!!!」
「ただいまー。えっ!?なに!?何があったの?」
仕事から帰宅した父親が目を丸くする。
「ちょうどよかった、拓海。夕飯前で悪いけど、海と三人で話をしよう。空、陸のことお願い。先に夕飯食べて風呂入って寝てて。」
「了解。任された。」
夫婦で海の部屋に行く。
海はまだ、ひっくひっくと泣き続けている。
「………海。もしかして、海は氷室京君のことが好きなの?」
こくり。
海は頭を下げた。
「でも…。氷室君に振られちゃったのかな?」
…こくり。
「そっか…。」
蜜瑠は海を抱きしめた。
京の母親とは色々あった。
その血が入っていると思うと、今でも怖いと思うところはある。
でも、親の代の因縁は子の代まで引きずっていいのだろうか。
目の前の我が子はこんなに泣きじゃくって。
京君は、氷室家がしっかり育てて、父親のだらしなさは受け継がず、真面目ないい子に育った。
性格は、母親の父に似ているのかもしれない。
そもそも母親の実家でも異質なのは彼の母親だけで、自分の娘を止めようと力を尽くして凶刃に倒れてしまった彼も、親から継いだ会社を大きく育てた真面目で努力家の優しい男だったらしい。
仕事に夢中になるがあまり、娘の教育を生粋のお嬢様育ちの妻任せにして、躾を怠った結果の事件だったのだが。
「辛かったね。いいんだよ、いっぱい泣きな。」
息子の頭を撫でながら、蜜瑠は拓海と目をあわせて頷いた。
自分たちから見ても相思相愛だった。
いつかは二人で、挨拶に来るんじゃないかと。
京君の母親とは色々あったけれど、それでももしその時が来たら、自分たちは認めてあげよう。
実家の父たちが苦言を言うかもしれないけど、自分たちでなんとかしよう。
そう、言っていたのに。
好きなのに拒絶した。
もしかして、京君は自分の母親のことを知っているのではないだろうか。
若しくは、芸能人として上を目指すために、今は恋をしている場合ではないということか。
本人に問い詰めるのはよくないから、それとなく氷室さんに相談してみよう。
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