【完結】美貌のオメガは正体を隠す

竜鳴躍

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狂女

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「お父さん、お母さん、氷室さん。今日は何処へ連れて行ってくれるのぉ?」

濁った目で、ニコニコ微笑む花梨。

可愛かった娘の筈なのに恐ろしい………。




拓海君から、一度娘の部屋を見てほしいと言われ、娘が病院に定期健診に行っている間に、技師をしている自分の弟の伝手で鍵を開けて貰って、中に入った。


壁一面に貼られた氷室君と拓海君と拓海君の相手の…………蜂谷君の写真。

蜂谷君の写真はズタズタに切り裂かれていた。


そして、机の上に投げ捨てられた日記帳は恐ろしいものだった。

毒殺。
刺殺。
事故に見せかけて。

妙に具体的な殺人計画が書かれている。

蜂谷君を殺すための………。


日記帳の周囲には、蜂谷君を探る調査書。


調査書を拓海君が目にすることはなかっただろうが、最近の勤め先まで書かれている。


最近は小遣いをあげていないのにどこから…と思ったが、部屋にブランド品が少なくなっているので察しがついた。


和泉大臣のように、子どもを自ら断罪して、犯罪を犯さないようにしっかり見張っておくべきだった。


気が遠くなり、部屋を再び閉じる。


あの頃は可愛かったのに。

そう思い、アルバムを開いて、今だから気づく。

拓海君を見つめる花梨の狂気の視線。


いつでもどこでもどの写真でも、娘は拓海君しか見ていない。


最初からなんだ。
氷室君に捨てられたからじゃない。
拓海君に選ばれなかったからじゃない。

そう言えば娘たちの周りで、昔から女性の不審な事故が多かった。

ゾッと背筋が寒くなり、拓海君は大切な人から花梨を遠ざけるために、被害を受けないように、無意識で花梨に逆らえなかったのだと知る。


氷室君には、結婚しなくていい、花梨を騙す間だけふりをしてくれ、週刊誌はなんとかするからと言い、一刻も早く花梨を病院に閉じ込めることに決めた。


花梨が使った探偵には、もう仕事をしないよう私から金を払った。

花梨が気づく前に、病院に入れる。



私たちは、怯えながら病院に向かっていた。
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