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本編

その頃

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「ヨシュア。ミユキはまだ見つからんのか。」

ヴィクトールは、ため息をつく。

城の中から消えた娘。愛しい妻の忘れ形見。
ヴィクトールという男の行動原理は、全て亡くした妻を起点にしている。



―守護心を全てそろえれば、この惑星の『神』が召喚される。だが、それは禁忌。『神』を得れば、何でも願いはかなうとされている。でも、人間は自分の力で自分の願いを叶えるべきで、『神』をけして起こしてはならない。人の身で傲慢にも『神』に触れようとすれば、その身は怒りに焼かれ、世界は滅びるだろう。―


かつて、この星にいたエトの王に尋ねたことがある。

守護心たちも、それを分かっていて、滅多なことでは精霊界から出ないのだと。




知るか。




私はが欲しいのだ。


愛する妻と娘、三人で暮らしたい。
ただ、それだけが私の望み。


そして、この男も。似たような望みを持っている。




目の前の男は、淡々と応える。


「部下を各地に派遣している。エト人の殲滅をついでにしているようだが、いらん人口が減った方が見つけやすくなるだろう。あの娘は親譲りで賢い。うまく追手を撒いているようだ。まあ、もうすぐ見つけて連れ戻す。」


「お前を信頼しているぞ。」




娘可愛さに甘やかしたかもしれない。

………権力者階級や富豪、私の息のかかった者たちを集めて、夜会でも開くか。
少し早いが、いい婿をあの娘に見繕ってやれば、落ち着くだろう。










「びっくりしたでしょう。」

シスターの格好をした聖女様は、廃れて古びた教会に住んでいた。

あちこち壊れて、補修した形跡がある。


「私はエト人なの。この子は守護心って言って、精霊、もしくはこの星の神様のようなもの。だから危険な存在ではないわ。」


「エト…の人。分かります。だって、あんな素晴らしい力で男の子を助けたんですから。」


その言葉に二人はほほ笑む。


「守護心ミイと申します。」

「白蛇の守護心でね。癒しの力を持つの。ここはね。地球から来た人たちの観光地になっているけれど、貧しい土地よ。でも、そこがいいのかしらね。高台には立派なホテルがあって、豊かな自然と美味しい海の幸を堪能してる。充実してるけど、料金も安いし。もってこいみたい。………貴方はいい子ね。そんな上等な服を着ているのに、汚れることも傷つくことも厭わず、あの子に腕を噛ませたでしょう?」


「……私なんて。何も知らない、世間知らずで何もできない人間です。」

「でも、物事の価値観を言われたままうのみにしないで、自分の目で確かめようとする気持ちがある。知ろうとする気持ちが。それだけでもすごいことよ。」


「そうでしょうか……。でも、どうしてあんなまだ子どもが…?」


「あの子についていた老人、あの子の何だと思う?」


「………祖父、でしょうか?それとも伯父?」


聖女は寂しそうな表情で首を緩やかに振る。



「あの老人はあの子の主で地球人。あの子はエト人の孤児で奴隷なの。」




「そんなっ!?」




「私たちが癒しても、あの子の苦難が続くだけかもしれない。だけどね……。ねえ、あなた。真実を知る勇気はある?」





ミユキは大きく頷く。
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