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本編

旅の美形とイノシシとドラゴン

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「さて、と。この近くにガイが………。」


ウーが示す先。

誰かが倒れている。



「たいへん。行き倒れかしら。」

近寄ると、なんか紫色の人が怪我をして倒れている。


紫色の髪。

汚れた旅のマント。


「あなた、しっかり。」


「………う、うう。」


男性だ。

こちらを見た顔は若く、汚れているのがもったいないくらい、きれいな顔をしている。

切れ長な瞳はアメジストで、長いまつ毛が彩り、どことなく華やかで気品がある。


「ありがとうございます。あなた方は、エトの方ですか?」

警戒が走る。

「………警戒しないでください!俺もエトですっ。不思議な姿の方を連れているから、そうかなあと。」


なるほど。
そう言えば、シグマも守護心はどこかへ仕舞っていた。
今後は気をつけよう。


「あなたはどうして荒野で行き倒れていたのですか。」

「本当は、ちゃんと渡るつもりだったのですが、街に軍人が多かったので、自力で渡ろうと。無謀でしたね。」

ハハッと笑う。

そうか、僕たちのせいだ。


じいっと見ていたウーが彼に質問する。

「あなたの名前は?」

「マイです。」

「何で旅を?どこかへ隠れているほうが安全でしょうに。」


「記憶がないんです。だから知り合いを探して、コロニーからコロニーへ旅しています。」

「そうですか。」

ウーは何か考えているようだ。


「そうだ、そしたらあなた、私達の仲間にならない?」

「仲間?」

コトラが勧誘すれば、彼はすんなり仲間に入ってくれた。



マイを加えて、ガイのいる洞穴へ入る。

ズガン、ズガン。


何かが転がる音。



「マッスル、マッスル!! ふん!」

奥にいたのは、鏡の前でポージングをする、ガイだった。

「あの………。」


「ひ!」



「ガイ。迎えに来た。ヴィクトールを討ち、エト人の開放に力を貸してくれ。」

「ウー。トラ。シンも。分かった。じゃあ、俺は誰と契約すれば?」

「コトラと。格闘家なんだ。」

「じゃ、よろしく。」

コトラとガイが右の手のひらを合わせる。

「契約。」ガイが言うと、オレンジ色の光の輪が現れて散った。


「ふうん、契約ってそんな感じなんですね。それであとは?」

「子丑辰巳戌………かな?」

「午は、別の人が今マスターだから。最終的には譲ってくれそうだしね。」

マイの質問に、僕とコトラで応えた。

「ガイの次は誰のところへ行こう。」

「リュウ!辰のリュウのところへ。」
ガイが叫ぶ。
「何回か会いにいくんだが、引き込もっていて……。」


「分かった。場所はガイが分かるんだし、次は辰だ!」
「ガイとリュウは仲良しだしな、二人を会わせてやるか!」





「くしゅん!」
高い標高。

氷山にある氷で作った城の中で、リュウは身震いした。

ああ、やだやだ。
きっとまたガイに違いない。

青いツンツンヘアのリュウは、耳と角、尻尾に、ドラゴンの特徴を残し、可愛らしさもどこか残るが、基本的には端正な顔立ちをしている。

あいつら、何遍否定しても、俺とあいつが仲良しなんて思い込んで。
あいつは俺のストーカーだっつの。

でも大丈夫。
どんなバカ力でも辿り着けない仕掛けを施してある。

大丈夫、きっと大丈夫。

他の守護心と来ない限り、大丈夫さ!






こちらミア。

ヨシュア。

合流したよ。

神は我が手に。





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