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本編
最強の妊婦
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「きーっ!お前もエト人かっ!まとめてやっつけてやる!」
「………でもちょっといい男♡キシュとは大違いだわぁ。」
「こらっ!レベッカ!」
軍人の二人組が何かもめている間も、手下の集団はこちらに向かってくる。
「トラ、やっつける!」
「私がかわいいからって甘く見るんじゃないわよ!」
トラとコトラの拳や蹴りが宙を切り、相手を吹き飛ばす。
「………このっ!!」
ライフルから弾丸が一斉に放たれる。
キンキン!
金属音がして、はじく。残るのは硝煙の煙のみ。
「私がいるからには、攻撃はあたりません。」
「僕だって…!」
カーディナルから矢を放つ。
「はははは、こんな小さな矢…。!?」当たった敵の体がぐらつく。
「獣をしとめる時の麻痺矢だよ…!」探検家のいざという時の必需品。
「ふんふん、みんなやるねぇ。」
「このぉ、クソガキっ!」軍人が剣を振り下ろそうとして。「!!!!?」
手には何も持っていない。
その代わりに、シンの手にその剣がある。
「ごめんね~。手癖が悪くって☆」
「なんだ、あの子たち結構やるな。手を貸さなくてもお節介だったかな。」
金髪の青年は優斗たちを見て、自分が間合いを詰めている二人に視線を移した。
「ふんっ!」
レベッカが拳を胸元でパチンとあわせ、二の腕に青筋を立てて振り下ろす。
キシュが剣を構えて、青年に。
2人で向かっていく。
「動きが荒い。連携甘いね。」
すうっと躱すと、剣の峰で流れる様にさばいていく。
「げほっ。」
「ぐぇええ。」
「守護心マー!ダウンロード!」
青年は、優斗たちの周りの状況を確認すると、守護心を呼び出した。
「愛しのマイマスター、呼び出し待ってたよ!」
軽薄そうな午の守護心が顕現する。
葦毛の髪に、額に白い角。
「移動する!あの子たちも一緒に飛んで!」
「えっ…。」守護心は一瞬嫌そうな顔をして、全員を転移させた。
残ったのは、キシュとレベッカ。ヴィクトールの命を受けていた軍人たちのみ。
「ちっきしょーーーーーー!」
キシュは地団太を踏んだ。
街から遠く離れた荒野の高台に、優斗たちは転移していた。
「あなたも…守護心を。助けていただいて、ありがとうございました。」
優斗は、青年に挨拶と礼をした。
「あたし、コトラ。あなた、エトの剣士よね。守護心も持っているなら話は早いわ。私たちの仲間になって。エト人を開放して自由になるための、旅をしているの。守護心も集めているのよ。」
「マー。お前、無類の女好きじゃん。なんで男、しかもイケメンに従ってるわけ?ちょっとロリっているけど将来に期待、でこのお嬢ちゃんはどうよ。」
「シン。シグマに失礼だ。シグマは女性だぞ。そりゃあ生娘ではないが…、心身美しい人だ。」
午の守護心は眉を寄せた。
「ははは。僕は男みたいだからね、仕方ないよ。よく間違えられるんだ、気にしてないよ。」
「シグマさん、あなたも顔が割れてしまいました。僕たちと一緒の方がもはやいいのではと思いますが…。」
巻き込んでしまって申し訳ない。
「いいんだよ、放っておけなかったからさ。でも、僕。仲間にはなれない。マーも、今は渡せないな。ごめんね。」
「……今は?」
シグマはそっと、胎に手をあてた。
「お腹に、子どもがいるんだ。父親は地球人で…。一緒に住んでたんだけど、子どもが出来たことを告げる前にいなくなってしまって。一緒に生きてはいけないかもしれないけど、子どものこと、どうしても告げたいんだ。あの人を探す旅の途中で、マーの力は必要だから。だからごめんね。」
お腹に子どもが。
それなのに、助けてくれたのか。
驚いだが、エト人はどういうわけか妊娠しても腹が目立たない体質で、丈夫なのだそうだ。
「君たちが行きたい場所のところまで送ってあげるよ。また、どこかで会えたらいいね。」
ガイのいるであろう祠に送ってくれ、去り際の笑顔は確かによく見ると母親の穏やかさと女性らしさが滲んでいる。
胸元の金色のハートのロケットが、揺れて。
僕たちは彼女と彼女の恋人の再会を願った。
キシュとレベッカは城に戻り、ヴィクトールとヨシュアに叱咤を受けていた。
「仮にも軍部のエースなのだから、給料分働いてくれないと困るね。」
「すっ、すみません!!!!」
「…まあ、僕の可愛いミアがその分頑張ってくれるだろうが、あまり役立たずでも困る。研究所にジャンが戻っているから、新しい武器でも作ってもらうといい。」
とぼとぼと研究所に向かい、二人が部屋を開けると、ドレッドヘアで褐色の肌の南米出身の科学者がくしゃみを連発していた。
「くしゅ!くしゅっ!!!」
ヴィクトール様達と同じ、移民船のパイロットに選ばれた技術者。
元々はヴィクトール様の財団の支援で大学まで出た、貧しい天才だった。
時々ふらふらとどこかへ行って、この星の鉱物で新しいものを作る彼は、最近も暫く帰ってこなかった。
だが、帰ってきてからは、今度は腰を落ち着けている。
「大丈夫です?」
「ああ、だいじょうぶ、なんかなぁ、誰か俺の噂をしてるのかな。ところで、こっちに来たってことはヨシュアにまわされたんだろ?いいのがあるよ。」
どこいったかなぁ、と探す彼の白衣の胸元で、金色のロケットが揺れた。
「………でもちょっといい男♡キシュとは大違いだわぁ。」
「こらっ!レベッカ!」
軍人の二人組が何かもめている間も、手下の集団はこちらに向かってくる。
「トラ、やっつける!」
「私がかわいいからって甘く見るんじゃないわよ!」
トラとコトラの拳や蹴りが宙を切り、相手を吹き飛ばす。
「………このっ!!」
ライフルから弾丸が一斉に放たれる。
キンキン!
金属音がして、はじく。残るのは硝煙の煙のみ。
「私がいるからには、攻撃はあたりません。」
「僕だって…!」
カーディナルから矢を放つ。
「はははは、こんな小さな矢…。!?」当たった敵の体がぐらつく。
「獣をしとめる時の麻痺矢だよ…!」探検家のいざという時の必需品。
「ふんふん、みんなやるねぇ。」
「このぉ、クソガキっ!」軍人が剣を振り下ろそうとして。「!!!!?」
手には何も持っていない。
その代わりに、シンの手にその剣がある。
「ごめんね~。手癖が悪くって☆」
「なんだ、あの子たち結構やるな。手を貸さなくてもお節介だったかな。」
金髪の青年は優斗たちを見て、自分が間合いを詰めている二人に視線を移した。
「ふんっ!」
レベッカが拳を胸元でパチンとあわせ、二の腕に青筋を立てて振り下ろす。
キシュが剣を構えて、青年に。
2人で向かっていく。
「動きが荒い。連携甘いね。」
すうっと躱すと、剣の峰で流れる様にさばいていく。
「げほっ。」
「ぐぇええ。」
「守護心マー!ダウンロード!」
青年は、優斗たちの周りの状況を確認すると、守護心を呼び出した。
「愛しのマイマスター、呼び出し待ってたよ!」
軽薄そうな午の守護心が顕現する。
葦毛の髪に、額に白い角。
「移動する!あの子たちも一緒に飛んで!」
「えっ…。」守護心は一瞬嫌そうな顔をして、全員を転移させた。
残ったのは、キシュとレベッカ。ヴィクトールの命を受けていた軍人たちのみ。
「ちっきしょーーーーーー!」
キシュは地団太を踏んだ。
街から遠く離れた荒野の高台に、優斗たちは転移していた。
「あなたも…守護心を。助けていただいて、ありがとうございました。」
優斗は、青年に挨拶と礼をした。
「あたし、コトラ。あなた、エトの剣士よね。守護心も持っているなら話は早いわ。私たちの仲間になって。エト人を開放して自由になるための、旅をしているの。守護心も集めているのよ。」
「マー。お前、無類の女好きじゃん。なんで男、しかもイケメンに従ってるわけ?ちょっとロリっているけど将来に期待、でこのお嬢ちゃんはどうよ。」
「シン。シグマに失礼だ。シグマは女性だぞ。そりゃあ生娘ではないが…、心身美しい人だ。」
午の守護心は眉を寄せた。
「ははは。僕は男みたいだからね、仕方ないよ。よく間違えられるんだ、気にしてないよ。」
「シグマさん、あなたも顔が割れてしまいました。僕たちと一緒の方がもはやいいのではと思いますが…。」
巻き込んでしまって申し訳ない。
「いいんだよ、放っておけなかったからさ。でも、僕。仲間にはなれない。マーも、今は渡せないな。ごめんね。」
「……今は?」
シグマはそっと、胎に手をあてた。
「お腹に、子どもがいるんだ。父親は地球人で…。一緒に住んでたんだけど、子どもが出来たことを告げる前にいなくなってしまって。一緒に生きてはいけないかもしれないけど、子どものこと、どうしても告げたいんだ。あの人を探す旅の途中で、マーの力は必要だから。だからごめんね。」
お腹に子どもが。
それなのに、助けてくれたのか。
驚いだが、エト人はどういうわけか妊娠しても腹が目立たない体質で、丈夫なのだそうだ。
「君たちが行きたい場所のところまで送ってあげるよ。また、どこかで会えたらいいね。」
ガイのいるであろう祠に送ってくれ、去り際の笑顔は確かによく見ると母親の穏やかさと女性らしさが滲んでいる。
胸元の金色のハートのロケットが、揺れて。
僕たちは彼女と彼女の恋人の再会を願った。
キシュとレベッカは城に戻り、ヴィクトールとヨシュアに叱咤を受けていた。
「仮にも軍部のエースなのだから、給料分働いてくれないと困るね。」
「すっ、すみません!!!!」
「…まあ、僕の可愛いミアがその分頑張ってくれるだろうが、あまり役立たずでも困る。研究所にジャンが戻っているから、新しい武器でも作ってもらうといい。」
とぼとぼと研究所に向かい、二人が部屋を開けると、ドレッドヘアで褐色の肌の南米出身の科学者がくしゃみを連発していた。
「くしゅ!くしゅっ!!!」
ヴィクトール様達と同じ、移民船のパイロットに選ばれた技術者。
元々はヴィクトール様の財団の支援で大学まで出た、貧しい天才だった。
時々ふらふらとどこかへ行って、この星の鉱物で新しいものを作る彼は、最近も暫く帰ってこなかった。
だが、帰ってきてからは、今度は腰を落ち着けている。
「大丈夫です?」
「ああ、だいじょうぶ、なんかなぁ、誰か俺の噂をしてるのかな。ところで、こっちに来たってことはヨシュアにまわされたんだろ?いいのがあるよ。」
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