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本編
その時はきた
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高山優斗は、18歳になったばかりの駆け出しの探検家だった。
15の時から、探検家の父親に連れられて、人類の新天地である、この惑星エトを探検して回った。
1年前、今や人類の王たるべき存在になったヴィクトール様の命で、父は惑星に眠る『神』を探しに行き、そして崩落事故により死んでしまった。
母親はもとより、生まれたときに亡くなって、父一人子一人だったのに。
今では、一人。
いや、優斗には正確には相棒がいた。
このエトの生物らしい、丸っこいフォルムの兎耳のようなものがついたペット。
兎からウーと名前を付け、ともに育った。
今日は、父が成しえなかった命を達成するため、城へ呼ばれていた。
「父さん、母さん。行ってくるね。必ず、俺はやるからね!」
暫く帰れないかもしれない。
冷蔵庫の中身は空にしたし、貴重品は全部銀行の金庫に預けた。
戸締りをして、仕事道具と身の回りの物を入れたリュックサックを背負い、武器にもなるカーディナルを左腕に着け、ゴーグルを頭に嵌めて。
家を片づけて戸締りをして出ると、ウーは俺がついているぞ!と言わんばかりにピョンピョンと飛び跳ねた。
父さんでも失敗した場所だ。
でも、必ずやり遂げて見せる。
空も海も、生態系も。
地球にそっくりの双子星。惑星エト。
ただ一つ違うのは、この星には『神』が確かに存在しているらしいということ。
『神』は干支のように12体。獣を模した姿をしており、ヴィクトール様も以前見たことがあるようだが、逃がしてしまったらしい。
12体、全部揃うと、なにかとてつもないことが起こるのだとか。
探検家冥利に尽きる。
『神』はどんな姿をしているのか。
会ってみたい。
そして、何が起こるのか知りたい。
はやる気持ちを抑えて、城へ向かうと。
どこかしこでも箱舟の元パイロットを称える声が聞こえてくる。
「イワンさまはお優しいのよ! こないだも恵まれない人たちに無料で治療を…。」
受付のお姉さんは船医をしていたイワンさまの大ファンらしい。
城の中を見学する子どもたちは、この星への移民の歴史を学んでいるようだ。
王の間へ通され、謁見する。
ヴィクトール様の傍らには、軍人のヨシュアさまが控えている。
もう40手前だと思うけど、ヨシュアさまは男の僕から見てもものすごくカッコいい。
筋肉質でいてスラリとした長身。
手足が長くて、背筋がピンとしている。
お顔もものすごくハンサムだ。
「お前には期待している。父親が成しえなかった『神』を必ず手に入れるのだ。」
「はい!必ずや!」
僕は、約束をして、現地へ向かった。
城のある中心地から車で5時間。離れた郊外にある大きな山の中。
父さんはこの山で…。
考えても仕方ない。
気を引き締めて、父さんが入った横穴から、奥へ奥へ入っていった。
どのくらい進んだろう。
急に、あたりがパッと拓ける。
そして、その光景をみて、僕は息をのんだ。
なぜ。
この星には先住民族はいなかったのではなかったのか?
そこで、見たのは。
どうみても知的生命体がいたとしか思えない、居住跡と遺跡だった。
震える心、混乱する頭で遺跡を登り、祠を見つけた。
そして、その祠の中に手をやろうとして。
僕は、そこから何も取り出せず、遺跡を下り、入ってきた横穴を出た。
「高山さん。『神』を引き取りに来ました。」
山の中に声が響く。
そこには、中肉中背の髪の毛が一本飛び出している男と、筋肉質の女が立っていた。
2人とも軍服を着ている。
「……すみません、『神』はとれませんでした。」
「……お前も父親と同じか。」
男の声が、冷たい色に変わる。
「えっ!?」
「また、嘘ばかり。気づいてしまったんだろ、真実に。無人の星に俺たちが移住したんじゃない、元々先住民がいる星に俺たちが移住したんだって。だから、『神』をわざと取ってこなかったんだろう!」
「ほんと困るのよね!『神』は悪い子大嫌いだから!私たちでは取れないから任せてるのに!」
「…いや、本当に!」
本当に、祠の中は空っぽだったんだ!
でもなんだ、何を言ってるんだ、この人たちは!
「お前も、父親と同じように始末してやるよ。」
男が剣を抜き、女が拳をバキバキ鳴らした。
ーーーーーーーーお父さんは崩落事故、じゃなかった???
真実を知って消されたのか!?
おれもーーーーーー
殺される!
「ピイイイイイイイイイイ!!!」
その時、俺の側に常にいたウーが、俺の前で跳ねて光った。
『優斗、私を呼んで。【守護心卯、ダウンロード】と。』
頭の中に、穏やかそうな大人の男の人の声が響く。
「なっ、なにこの光!」
「まぶしくて何も見えない!!」
幸い、光で相手は動けない。
「しゅ、守護心卯、ダウンロード!!!!!!」
僕が叫んだ瞬間。
ウーの姿は兎の耳のある、大人の男の人の姿に変わった。
肌の色が黒いが、髪の色は薄桃だ。
そして、目の色は赤い。
「優斗、私が守ります!」
ウーは、僕の前にバリアを展開した。
光が落ち着き、彼らが剣を振り回し、拳で殴り掛かる。
キィン!
しかし、剣は折れ、拳は僕に届かなかった。
「何!?」
「おまえ、既に持っていたのか!!【神】を!」
えっ?
ウーが【神】?
どういうこと………。
「詳しい話はあとで。まずはここを逃げ切りますよ!」
ウーが僕にそう言った瞬間。
別の方向からまた声が聞こえた。
「その通りよ!」
カンフーウェアを身に着けた、虎耳の金髪の青年を後ろに従えた少女。
「あなたラッキーね。私たちが助けてあげる!」
僕より何歳か幼そうな小柄な少女の手にはナックル。
ふわふわしたミニスカートには不釣り合いのそれを鳴らして、少女は軍服の二人の前に立った。
15の時から、探検家の父親に連れられて、人類の新天地である、この惑星エトを探検して回った。
1年前、今や人類の王たるべき存在になったヴィクトール様の命で、父は惑星に眠る『神』を探しに行き、そして崩落事故により死んでしまった。
母親はもとより、生まれたときに亡くなって、父一人子一人だったのに。
今では、一人。
いや、優斗には正確には相棒がいた。
このエトの生物らしい、丸っこいフォルムの兎耳のようなものがついたペット。
兎からウーと名前を付け、ともに育った。
今日は、父が成しえなかった命を達成するため、城へ呼ばれていた。
「父さん、母さん。行ってくるね。必ず、俺はやるからね!」
暫く帰れないかもしれない。
冷蔵庫の中身は空にしたし、貴重品は全部銀行の金庫に預けた。
戸締りをして、仕事道具と身の回りの物を入れたリュックサックを背負い、武器にもなるカーディナルを左腕に着け、ゴーグルを頭に嵌めて。
家を片づけて戸締りをして出ると、ウーは俺がついているぞ!と言わんばかりにピョンピョンと飛び跳ねた。
父さんでも失敗した場所だ。
でも、必ずやり遂げて見せる。
空も海も、生態系も。
地球にそっくりの双子星。惑星エト。
ただ一つ違うのは、この星には『神』が確かに存在しているらしいということ。
『神』は干支のように12体。獣を模した姿をしており、ヴィクトール様も以前見たことがあるようだが、逃がしてしまったらしい。
12体、全部揃うと、なにかとてつもないことが起こるのだとか。
探検家冥利に尽きる。
『神』はどんな姿をしているのか。
会ってみたい。
そして、何が起こるのか知りたい。
はやる気持ちを抑えて、城へ向かうと。
どこかしこでも箱舟の元パイロットを称える声が聞こえてくる。
「イワンさまはお優しいのよ! こないだも恵まれない人たちに無料で治療を…。」
受付のお姉さんは船医をしていたイワンさまの大ファンらしい。
城の中を見学する子どもたちは、この星への移民の歴史を学んでいるようだ。
王の間へ通され、謁見する。
ヴィクトール様の傍らには、軍人のヨシュアさまが控えている。
もう40手前だと思うけど、ヨシュアさまは男の僕から見てもものすごくカッコいい。
筋肉質でいてスラリとした長身。
手足が長くて、背筋がピンとしている。
お顔もものすごくハンサムだ。
「お前には期待している。父親が成しえなかった『神』を必ず手に入れるのだ。」
「はい!必ずや!」
僕は、約束をして、現地へ向かった。
城のある中心地から車で5時間。離れた郊外にある大きな山の中。
父さんはこの山で…。
考えても仕方ない。
気を引き締めて、父さんが入った横穴から、奥へ奥へ入っていった。
どのくらい進んだろう。
急に、あたりがパッと拓ける。
そして、その光景をみて、僕は息をのんだ。
なぜ。
この星には先住民族はいなかったのではなかったのか?
そこで、見たのは。
どうみても知的生命体がいたとしか思えない、居住跡と遺跡だった。
震える心、混乱する頭で遺跡を登り、祠を見つけた。
そして、その祠の中に手をやろうとして。
僕は、そこから何も取り出せず、遺跡を下り、入ってきた横穴を出た。
「高山さん。『神』を引き取りに来ました。」
山の中に声が響く。
そこには、中肉中背の髪の毛が一本飛び出している男と、筋肉質の女が立っていた。
2人とも軍服を着ている。
「……すみません、『神』はとれませんでした。」
「……お前も父親と同じか。」
男の声が、冷たい色に変わる。
「えっ!?」
「また、嘘ばかり。気づいてしまったんだろ、真実に。無人の星に俺たちが移住したんじゃない、元々先住民がいる星に俺たちが移住したんだって。だから、『神』をわざと取ってこなかったんだろう!」
「ほんと困るのよね!『神』は悪い子大嫌いだから!私たちでは取れないから任せてるのに!」
「…いや、本当に!」
本当に、祠の中は空っぽだったんだ!
でもなんだ、何を言ってるんだ、この人たちは!
「お前も、父親と同じように始末してやるよ。」
男が剣を抜き、女が拳をバキバキ鳴らした。
ーーーーーーーーお父さんは崩落事故、じゃなかった???
真実を知って消されたのか!?
おれもーーーーーー
殺される!
「ピイイイイイイイイイイ!!!」
その時、俺の側に常にいたウーが、俺の前で跳ねて光った。
『優斗、私を呼んで。【守護心卯、ダウンロード】と。』
頭の中に、穏やかそうな大人の男の人の声が響く。
「なっ、なにこの光!」
「まぶしくて何も見えない!!」
幸い、光で相手は動けない。
「しゅ、守護心卯、ダウンロード!!!!!!」
僕が叫んだ瞬間。
ウーの姿は兎の耳のある、大人の男の人の姿に変わった。
肌の色が黒いが、髪の色は薄桃だ。
そして、目の色は赤い。
「優斗、私が守ります!」
ウーは、僕の前にバリアを展開した。
光が落ち着き、彼らが剣を振り回し、拳で殴り掛かる。
キィン!
しかし、剣は折れ、拳は僕に届かなかった。
「何!?」
「おまえ、既に持っていたのか!!【神】を!」
えっ?
ウーが【神】?
どういうこと………。
「詳しい話はあとで。まずはここを逃げ切りますよ!」
ウーが僕にそう言った瞬間。
別の方向からまた声が聞こえた。
「その通りよ!」
カンフーウェアを身に着けた、虎耳の金髪の青年を後ろに従えた少女。
「あなたラッキーね。私たちが助けてあげる!」
僕より何歳か幼そうな小柄な少女の手にはナックル。
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